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従来より安全な「鶏卵・牛乳アレルギーの経口免疫療法」を発見 国立成育医療研究センターが報告

 公開日:2023/12/18
従来の方法よりも安全な「鶏卵・牛乳アレルギーの経口免疫療法」を発見 国立成育医療研究センターが報告

国立成育医療研究センターの研究グループは、鶏卵および牛乳アレルギーがある子どもに対する「経口免疫療法」について、安全で有効な具体的方法を発見したことを発表しました。このニュースについて甲斐沼医師に伺いました。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

研究グループが明らかにした内容とは?

国立成育医療研究センターの研究グループが今回明らかにした内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

国立成育医療研究センターは、鶏卵および牛乳アレルギーがある子どもへの経口免疫療法をより安全かつ有効に行う方法について調査しました。この研究成果は学術誌のClinical and Experimental Allergyに掲載されています。鶏卵もしくは牛乳の食物アレルギーがある子ども(4~18歳)217人に対し、食物経口負荷試験の閾値をもとに5つの群に分けて(A~E群)経口免疫療法を行いました。その研究の結果、閾値の1/100量から開始して1/10量で維持した群(B群)は従来法よりも2回目の食物経口負荷試験の閾値上昇人数の割合が高く、食物特異的IgE値が上昇した人数の割合においても、閾値の1/100量から開始した群のほうが完全除去した群より多い結果となりました。これらの結果から、閾値の1/100量から開始、1/10量で維持する方法が従来よりも安全で効果があることがわかりました。

経口免疫療法とは?

国立成育医療研究センターの研究グループが、今回、従来よりも安全・有効な経口免疫療法を明らかにしましたが、この経口免疫療法について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

経口免疫療法」とは、抗原となる食べ物を少量から摂取していき、体がその抗原食物に慣れたら徐々に摂取量を増やすことで症状が出ないようにする治療法のことです。しかしながら、現状ではまだ方法や安全性が確立されておらず、今回研究を発表した国立成育医療研究センターでも、治療法を希望する患者に限定して研究レベルでの治療を行っています。そのため、経口免疫療法を実施する場合はアレルギーの食品の種類や重症度、生活スタイルなど患者個人の特性を判断しながら、主治医とよく相談して実施することが重要になります。

発表内容への受け止めは?

国立成育医療研究センターの研究グループによる発表内容への受け止めを教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

経口免疫療法は、完全に除去するしかなかった重症アレルギーを持つ子どもにとっては有用な治療法と考えられていましたが、最適な方法や安全性が確立しておらず問題視されていました。また、子どものさまざまな状況(体調不良や摂取後の運動など)が影響して、実施期間中にアナフィラキシーなどの重篤症状が誘発されることも大きな課題でした。今回の研究では、アレルゲンとなる物質の摂取を閾値の1/100量から開始し、1/10量で維持する方法ではアナフィラキシー症状が出現しない、出現しても軽微なものに限られたということがわかりました。本研究を通じて、より具体的な量が目安として示されたことは、大きな進歩であると考えられます。ただし、食物アレルギーはアトピー性皮膚炎や喘息などそのほかのアレルギー疾患との関連性が高く、実臨床で行う場合には個々人の体質や生活環境などに十分配慮して実施される必要があります。

まとめ

国立成育医療研究センターの研究グループは、鶏卵または牛乳アレルギーがある子どもに対する経口免疫療法として、食物経口負荷試験の閾値の1/100量から開始し、1/10量で維持する方法が従来よりも安全かつ有効な方法であるということを明らかにしました。食物アレルギーに悩む人にとっては大きな注目を集める研究になりそうです。

この記事の監修医師