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子どもの「食物アレルギー」が親の“育児ストレス”増加の要因に!? 日本全国での大規模調査結果

 更新日:2024/04/08

国立成育医療研究センターの研究グループは、「子どもの食物アレルギーと親の育児ストレスの関連性について研究した結果、食物アレルギーの子どもを持つ親は、育児ストレスのスコアが有意に高くなった」と発表しました。この内容について山田医師に伺いました。


山田 克彦

監修医師
山田 克彦(佐世保中央病院)

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大分医科大学(現・大分大学)医学部卒業。現在は「佐世保中央病院」勤務。専門は小児科一般、小児循環器、小児肥満、小児内分泌、動機づけ面接。日本小児科学会専門医・指導医、日本循環器学会専門医。

研究グループが発表した内容とは?

今回、国立成育医療研究センターの研究グループが発表した内容について教えてください。

山田 克彦医師山田先生

今回紹介する研究は、国立成育医療研究センターの研究グループによるものです。研究成果は学術誌「Allergy」に掲載されています。

研究グループは、日本の大規模調査であるエコチル調査で、子どもの食物アレルギーと親の育児ストレスの関連について検討しました。対象となったのは、2011年1月~2014年3月までにエコチル調査に登録した、北海道から沖縄まで日本全国15の地域の親子で、子どもの数は6万5805人でした。対象となった子どもの7.2%が、2歳時点で食物アレルギーの診断を受けていました。

研究グループが分析した結果、子どもに食物アレルギーの診断があると、親の育児ストレススコアが有意に高くなることが明らかになりました。

食物アレルギーの種類別に分析してみると、鶏卵アレルギーの親の育児ストレススコアが有意に高くなっていました。その一方、牛乳や小麦、ナッツアレルギーでは明確な関係性は認められませんでした。研究グループは、「鶏卵アレルギーが日本で最も一般的な食物アレルギーであり、日本では多くの加工食品や菓子類に鶏卵が含まれているため、親は常に意識する必要があることから、ほかの食品よりもストレスにつながる可能性がある」と指摘しています。

今回の結果について研究グループは、「今回の研究は重症度を考慮した結果ではないので、重症度を考慮したさらなる調査も必要だ。医療提供者は食物アレルギーを持つ子どもの親のストレスに注意を払いながら、日常の診療をおこなう必要がある」と述べています。

食物アレルギーの治療法とは?

食物アレルギーの治療法を教えてください。

山田 克彦医師山田先生

食物アレルギーの治療には、原因となる食物を医療機関で血液検査や食物経口負荷試験によって特定し、それを一切食べてはいけないのか、1回摂取量の上限を決めて食べることができるのかを確定しなければなりません。症状が出ない程度の量であれば、摂取した方が治療につながることが知られています。ただし、慎重にやらないと「アナフィラキシー」と呼ばれる重篤な状態を引き起こすことがあります。

最近では、「経口免疫療法」という計画的に摂取量を増やしていく治療法も知られるようになりましたが、元々は症状を誘発させながらでも摂取量を増やしていく、専門の病院でないと危なくてできないような方法です。通院でおこなう場合は、これと同じことをやるわけではなく、経口負荷試験を繰り返しながら安全に食べられる量を増やしていきます。アナフィラキシーのリスクのある子どもの場合には、あらかじめアドレナリン自己注射薬を持ち、万が一の場合に備える必要があります。この注射薬も処方や指導できる医師は限られています。まずは、信頼できる小児科医に相談することから始めてください。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

今回、国立成育医療研究センターの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

山田 克彦医師山田先生

食物アレルギーの症状は重症度の幅が広く、初めて食べたときに口の周りに小さなプツプツが出ただけでも、次に食べたときにはアナフィラキシーということもあり得るため、保護者が心配するのは当然でしょう。また、特に鶏卵という食物は成長期の子どもにとって優秀な栄養素を含み、多くの食品に含まれているので、鶏卵の除去を念頭に入れた食事の準備は大変なのだと思います。さらに、集団保育や学校給食など目の届かない場所での事故も起こり得るため、保育園や幼稚園、学校との交渉も必要になってきます。「医療提供者は、親のストレスにも十分配慮するべきだ」という示唆に富む研究であると考えます。

まとめ

国立成育医療研究センターの研究グループは、「子どもの食物アレルギーと親の育児ストレスの関連性について研究した結果、食物アレルギーの子どもを持つ親は、育児ストレススコアが有意に高くなった」と発表しました。子どものアレルギーに注意を払う親は少なくないので、こうした研究は注目を集めそうです。

この記事の監修医師