【医師に聞く】ゲップが多い・止まらないのは病気の前兆? または初期症状?
「げっぷ」とはそもそも何なのか、原因は何か、対処法はあるのか? 「げっぷ」について知っているようで知らないことも多いのではないかと思います。そこでげっぷのメカニズムや対処法、げっぷを症状に伴う病気などについて、消化器内科医の尾辻先生(おつじ内科クリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
尾辻 健太郎(おつじ内科クリニック)
目次 -INDEX-
そもそもげっぷはなぜ出る? おならとの違いやげっぷが出るメカニズムを医師が解説
編集部
そもそも「げっぷ」とは何ですか?
尾辻先生
げっぷとは、一言でいえば「胃からの空気の逆流」です。空気が胃の中に溜まり、それが逆流して口から放出されています。溜まりすぎると胃の中の圧力が高くなりすぎるため、それを一定以下に保つための体の機能とも考えられますね。
編集部
同じガスでも、おならとは違うのですか?
尾辻先生
簡単にいえば、飲み込んでしまった空気が逆流して口から放出されると「げっぷ」、胃からそのまま小腸を通って大腸まで運ばれておしりから出ると「おなら」になります。
編集部
どうして空気が逆流するのですか?
尾辻先生
胃の入り口には「下部食道括約筋」があり、普段はこれが収縮することで、食道から胃に空気が流れ込みすぎないようにしたり、飲み込んだものが逆流したりしないようにしています。胃に空気が溜まると、この下部食道括約筋が広がってしまい、胃の中の空気が食道側に放出されるのです。
編集部
げっぷが出るのは普通の生理現象だと捉えて良いのでしょうか?
尾辻先生
そうですね。げっぷそのものは基本的に、「しゃっくり」などと同じで誰にでも起こりうる生理現象と捉えていただいて構いません。人によって「げっぷがたくさん出る人」や「あまり出ない人」がいますが、これは個人差ですので基本的には過度に心配することはありません。
げっぷが多い・止まらない原因は何? 回数を減らすことはできる? 吞気症とは?
編集部
げっぷがよく出る人とそうでない人では何が違うのですか?
尾辻先生
げっぷがよく出る原因はいくつかありますが、加齢や生活習慣によって出やすくなります。「下部食道括約筋」の機能が低下し、いわゆる「蓋が開きやすい」状態になった結果、頻繁にげっぷが出てしまうのですが、高齢者は、若い方よりも下部食道括約筋の機能が低下していることが多いのです。また「食道裂孔ヘルニア」といって、食道と胃の境界が本来の位置からずれている場合にもげっぷが出やすくなる可能性があります。また、アルコールや喫煙が、食道括約筋や食道の運動機能を低下させることが知られており、若い方でも過剰な飲酒や喫煙によりげっぷが出やすくなる可能性があります。
編集部
げっぷの原因もさまざまなのですね。
尾辻先生
更に、最近若い方からのご相談で多いのが、ストレスや緊張により、無意識のうちに空気を飲み込んでしまっている「吞気症(空気嚥下症)」というケースです。授業中や試験中、塾の自習室などの「人がいるのに静かな場所」でげっぷを我慢した結果、さらに空気が溜まって苦しくなり、トイレに行ってげっぷをしているといった話を聞くこともあります。多くの場合、「休日で家にいるときは気にならなかった」「受験が終わったら楽になった」などとおっしゃられます。
編集部
ほかにはどんな原因がありますか?
尾辻先生
食事の仕方に要因がある場合もあります。会話をしながらの食事摂取やかき込むような早食いなどは空気をたくさん飲み込んでしまうことが多くなりがちで、げっぷが出やすくなります。炭酸飲料なども空気を飲み込んでいますので、げっぷは出やすくなります。また、肥満や猫背なども腹圧が上がることにより胃が周囲から圧迫されやすくなるので、胃の中に空気を溜めておけず、げっぷとなって出てしまう頻度が増える可能性があります。
編集部
げっぷは1日に何回くらい出るのが平均的なのですか?
尾辻先生
大人の平均的なげっぷの回数が1日13~15回ほどですので、それ以上だと「げっぷが多い」と言えなくもないですが、個人差があり回数だけで判断するのは難しいと思います。これより少ない回数のげっぷでも苦痛に感じている方もいれば、かなり回数が多くても困っていないという方もいます。
編集部
げっぷを減らしたい場合、対処法はありますか?
尾辻先生
先述の生活習慣に当てはまるものがある方は、ぜひそこから改善してみてください。喫煙、飲酒習慣がある方は、まず禁煙や飲酒量を減らすことから始めると良いでしょう。また、食事中の会話を控える、ゆっくり食べる、炭酸飲料などを控える、そして日頃から良い姿勢を心がけ、適切な運動を行ったり、食事量をコントロールしたりしてお腹周りの脂肪を減らすなど、胃の圧迫を解消すると効果的です。
「げっぷが多い」のは病気ではないの? 逆流性食道炎・胃がんなどの可能性は? 放置できるケースや病院受診の目安を教えて
編集部
げっぷが多くても、病院にいく必要はないですか?
尾辻先生
げっぷが多いことで病院へ受診する必要があるかどうかの判断は、難しいところです。一概に何回以上は病気のリスクが高いなどのデータがあるわけではありません。病院への受診をお勧めする場合は、大きく分けて2つ考えられるかと思います。まず1つ目は、げっぷの回数が多いことで日常生活が妨げられていたり、困っていたりする場合です。例えば、会話中や食事中にげっぷが出てしまうなど、仕事や学業に支障が出ているのであれば、一度病院を受診して、原因や生活習慣の問題点がないかを相談されると良いと思います。もう1つは、もともとげっぷが出ることがあまりなかったにも関わらず、急にげっぷが増えてきた場合やみぞおち・お腹の不快感、食欲の低下を伴うときです。この場合は何らかの病気によって、げっぷが出ている可能性もあり、病院を受診することをお勧めします。
編集部
病気が隠れているケースもあるのですか?
尾辻先生
問題のない場合がほとんどですが、いくつかの病気の「症状」として現れていることがあり、注意も必要です。げっぷが出る病気で最も頻度が多いものとしては、胃酸が食道へ逆流してしまう「逆流性食道炎」があります。みぞおちの痛み・胸やけなどとともに、げっぷの症状が現れている場合、逆流性食道炎が疑われます。この場合、制酸剤などを適切に用いることで、症状の改善が得られることが多いですね。また、胃酸が過剰に出てしまい胃壁が傷ついてしまう「胃潰瘍」や「胃がん」の場合、胃から腸へ食べ物が通っていく経路が狭くなってしまい、流れが悪くなります。それによって胃の中に空気が溜まりやすくなり、げっぷが出やすくなります。これらの病気の場合、適切な治療を行わないとげっぷが改善しないばかりか、知らない間に病気が進行してしまうおそれもあります。やはり、先程のような「もともとはげっぷがあまり出なかったのに最近回数が増えてきた」「みぞおちやお腹の不快感もあり食べられる量が減ってきた」といった症状を伴いますので、このような場合は一度内視鏡検査を受けられることをお勧めします。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
尾辻先生
げっぷは人間の生理的な現象で、必ずしも病気と直結しているわけではありませんので、過剰に心配する必要はないと思います。しかし、病気の症状としてげっぷが出ている場合もありますので、日常生活で困っている場合や、急にげっぷの回数が増えてきた場合など、何かいつもと違うと感じる場合には、病院で相談してほしいですね。また、すべての病気に言えることですが、ストレスを減らし、規則正しい生活リズム、バランスのよい食生活を送ること、そして定期的な健康診断の受診も重要だと思います。
編集部まとめ
げっぷの原因や対処法などについて、お話を伺いました。げっぷそのものは生理的な現象で、過度な心配は必要ないのですね。しかし、まれに病気が隠れていることもあるので、ほかの症状も気になる方や、最近いきなり回数が増えてきた方などは、早めに受診しましょう。
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