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「メッケル憩室がん」を疑う症状・生存率はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/06/20
「メッケル憩室がん」を疑う症状・生存率はご存知ですか?医師が監修!

シンガーソングライターのKANさんが患った病気として有名になったメッケル憩室がんは、小腸にまれにできるメッケル憩室と呼ばれる突出部にできたがんのことです。

メッケル憩室自体が珍しく、通常は生まれつきのものです。さらに小腸がんも胃がんほど多くの症例があるわけではありません。そのためメッケル憩室がんは症例が少なく特にまれながんと認識されています。

メッケル憩室がんとはどういった症状が出るのでしょうか。ここでは、メッケル憩室がんの症状・原因・治療について詳しく解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

メッケル憩室がんの症状や発生頻度

腹部を触る女性

メッケル憩室とはどのようなものですか?

メッケル憩室は、小腸の中間部分にできる袋状の突起物のことをいいます。メッケル憩室は後天性のものではなく、生まれつき体内に持っているものです。初期の胎児にある卵黄管というへその緒と小腸の間にある管が消えずに残りメッケル憩室になります。
なお、憩室とは、管状・袋状の臓器の壁面に少し飛び出した小さな突起物を指します。または袋状の臓器の壁の一部が、焼もちが膨れるように外へとび出た袋状の突起物のことです。メッケルは、19世紀のドイツの解剖学者で、メッケル憩室の発見者です。

メッケル憩室がんとは?

メッケル憩室がんは、メッケル憩室である袋状の突出部に発生するがんです。メッケル憩室が生まれつきのものですが、それほど多くの人が持っているわけではありませんし、気づかずに過ごしている人もいます。その部位にがんが発生したものがメッケル憩室がんですので、まれな病態といえます。
メッケル憩室がんは、発見が比較的難しい小腸がんのひとつとして、診断が難しい病気です。メッケル憩室がんの症状は通常無症状で、症状が進むと腹痛・腸閉塞・吐血などが現れることもあります。診断は、内視鏡検査や画像検査を使って、メッケル憩室内の腫瘍を確認します。

メッケル憩室がんの発生頻度はどのくらいですか?

メッケル憩室がんは一般的に非常にまれながんで、他の内臓系のがんと比較してもほとんど数値が出ない程度の発生頻度です。これは、メッケル憩室自体がまれな存在であることも大きいといえます。そのため、文献やデータによる統計での正確な数値がありません。
いくつかの症例レポートの中で、メッケル憩室自体は、0.6%から2.3%の発生率という報告がされています。そして、その中でメッケル憩室内にがんが発生する頻度は0.6%から1.2%という報告です。

どのような症状がありますか?

メッケル憩室がんの症状は、一般的には無症状がほとんどです。しかし、まれに腹痛などの症状が現れることがあります。腹痛の場合は軽い痛みから重いものまで個人差があります。その中でも代表的なものは、腸閉塞です。メッケル憩室がんが腸の通り道を阻害することで、腸閉塞が引き起こされ、激しい腹痛・膨満感・吐気・嘔吐などの腸閉塞からくる症状が現れることがあります。
また、メッケル憩室がんが潰瘍や損傷を引き起こし、それが原因で腸から出血する可能性があります。この場合に起こるのは、血便や吐血などです。

メッケル憩室がんの原因とは?

メッケル憩室がんの原因は、症例が少ないこともありはっきりしたことはわかっていません。しかし、がんの患部の状況やがん本来の性格からいくつかの可能性が挙げられます。ひとつめは先天的な要因です。メッケル憩室自体が、胎児の発育過程で形成されるものですので、メッケル憩室がんに関しても遺伝的な変異や胎児の発育異常が原因である可能性は極めて高いと言えるでしょう。
また、がんであることから遺伝的要因も考えられます。家族歴にがんのある人は、メッケル憩室がんの発生リスクが高まる可能性があります。

メッケル憩室がんの生存率を教えて下さい。

メッケル憩室がんの生存率は、他のがんと同様に、がんのステージや治療における経過によって大きく異なってきます。一般的には、早期発見されたがんの場合は生存率が高く、進行がんや転移がある場合は低くなります。
メッケル憩室がんは、無症状であることが多いため発見が遅れやすく、進行がんになることが多いため、生存率が高いとは推測しづらいでしょう。メッケル憩室がんのまれさから正確な統計情報はありませんが、一般的に早期に発見された場合の5年生存率は、70%となっています。

メッケル憩室がんの検査や治療方法

病院で相談する女性

どのような検査が行われますか?

メッケル憩室がんの診断では、いくつかの検査が行われます。
内視鏡検査では、 上部消化管内視鏡や大腸内視鏡を使用することが多いです。これによって患部であるメッケル憩室を直接見ます。内視鏡検査で、カメラを備えた細い管を体の中に挿入して組織や腫瘤を確認します。メッケル憩室内の腫瘍や異常な組織を採取して、病理検査に出すことも有効です。
CTスキャンやMRIなどの画像検査では、メッケル憩室の形態・腫瘍の位置・周囲の組織の様子などを確認できます。バリウムを飲んで小腸を見る小腸造影検査では、X線撮影をすることで、小腸内の状態を観察します。

治療方法を教えてください。

メッケル憩室がんの治療方法は、がんのステージ・患者の健康状態などを加味して決定されます。
メッケル憩室がんの主な治療方法は外科手術です。手術でメッケル憩室内の腫瘍や組織を摘出します。摘出手術後は、化学療法でがんの再発を防ぐ方法がとられます。化学療法では抗がん剤を使用して、がん細胞を攻撃しますが、メッケル憩室がんに対しては、症例が少ないことから特定の標準的な化学療法プロトコルは確立されていない可能性は大きいです。
手術後の予防的な処理として放射線療法も候補に入れられます。X線などの高エネルギーの放射線を患部にあてて行われるのは、がん細胞を破壊するためです。メッケル憩室がんでは、合併症の対処のために対症療法も行われることがあります。

どのような手術が行われますか?

メッケル憩室がんの手術は、進行度によって複数の方法がとられます。最も考えられるのがメッケル憩室内の腫瘍や異常な組織を摘出する切除術です。症状の進行度合いに応じて、メッケル憩室の一部または全体を摘出します。手術の方法としては、開腹手術と腹腔鏡手術があります。
メッケル憩室がんの転移がリンパ節に広がっている場合に選ばれるのがリンパ節郭清術です。これは、がんの患部だけでなく、リンパ節まで摘出します。もしメッケル憩室がんが、さらに広い範囲の組織に浸潤している場合には、それに応じて周りの腸管や臓器の一部を切除する可能性もあります。

メッケル憩室がんの予後と注意点

点滴

メッケル憩室がんの予後について教えてください。

メッケル憩室がんの予後は、他のがんと同様にさまざまな状況や条件によって変わってきます。しかし、一般的には他の消化器のがんに比べ良好であると言われています。
ステージに関しては、早期に発見された場合は、腫瘍も小さいこともあり、予後は良好です。しかし、ステージが進行している場合は、治療や予後に影響を及ぼす可能性があります。
転移に関しては、他の臓器やリンパ節に転移している場合は予後は悪くなります。特にリンパ節に関しては注意が必要です。転移がない場合は良好です。患者のプロフィールも予後に影響を与えます。年齢や基礎体力の状態は、予後に影響を与える要素となります。

早期発見のための注意点はありますか?

メッケル憩室がんの早期発見のためには、常日頃から体調に変化がないかを気にしておくことが大切です。
メッケル憩室がんは初期段階では症状が現れにくいため、ちょっとした体調変化を見落とすと進行を許してしまいます。腹部の痛み・胃腸の不快感・血便や黒色便など・触った時のしこりなど腹部に関する症状もそうですが、貧血の症状でも早期発見に至る場合があります。定期的な健康診断や健康チェックを受けることは、早期発見に貢献しますので必ず受けるように心がけましょう。
また、メッケル憩室がんは、50歳以上の方やメッケル憩室の先天的な異常を持っている人にはリスクが高くなる可能性があります。そういった方は特に頻繁に検査を受けることをおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

メッケル憩室がんは、まれながんであるため、診断が遅れてしまうことが多いがんです。また、進行がんとなることが多いことも特徴です。そのため、早期の発見と治療が重要となります。
適切な治療計画を立てるためには、医師との相談が不可欠です。ちょっとしたことでも気になる場合にはかかりつけ医に相談しましょう。

編集部まとめ

医師の説明を受ける患者
今回取り上げたメッケル憩室がんは、まれな部位にまれに発症するがんであることから初期の発見がしにくい状況にあります。そのため定期的で適切な検査が必要です。一般的でない分、個別の症例に関しては、かかりつけ医と相談して総合的な判断を受けることが大切です。

この記事の監修医師