健康寿命を効率的に延ばすために必要な「かかりつけ医の見つけ方」とは? 医師が解説!
超高齢化社会をむかえた現代では、健康寿命が大切であることは知られています。しかしなぜ大切なのか、具体的にどうしたら延びるのかはご存じでしょうか? 何となく「血圧は低い方がいい」「運動をした方がいい」とは知っていても、しっかりとした目的意識がなく、漠然と数値を追いかけているだけでは健康寿命を効率的に延ばすことはできないでしょう。今回は具体的な健康寿命の延ばし方について、篠﨑内科クリニック院長の篠﨑先生に解説していただきました。
監修医師:
篠﨑 慶介(篠﨑内科クリニック)
健康寿命の個人、および社会にとっての意義とは
編集部
悪い生活習慣を自らの意志で選択し「短命に終わっても良い」と考えている人も、健康寿命を延ばす努力をすべきなのでしょうか?
篠﨑先生
たしかに「タバコが吸えないなら死んだ方がマシだ」とおっしゃる方がいらっしゃいます。しかしタバコを吸い続けてポックリ逝ける人はどれほどいるのでしょうか。救急車が無い時代であればそうであったかもしれませんが、現代は大病を患っても命は助かる確率が高いのです。さらに、命が助かっても何かしらの支障を抱えながら生活するという場合があります。寿命と健康寿命の間には男性で約9年、女性で約12年の要介護状態が存在し、そうならないためには極力健康寿命と寿命を一致させる必要があるのです。
編集部
健康寿命が延びるとどのような良いことがありますか?
篠﨑先生
厚生労働省のホームページでは、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されています。そのような状況で若くして要介護状態となっては、それからの人生が厳しいものになることは容易に想像できます。逆に健康であれば年齢を重ねてからも人生を謳歌することが可能ですし、医療費が少なく済めば老後資金問題の解決にもつながります。
編集部
個人の健康がどうして社会的意義を持つのですか?
篠﨑先生
2021年の国の支出のうち医療費を含む社会保障費はその他と比較して圧倒的に多い33.4%を占めています。65~89歳までにかかる医療費はひとり平均2,000万円(自己負担:282.5万円※70歳から2割、75歳から1割で計算)、夫婦であれば4,000万円(自己負担:565万円)です。健康であればこれらが不要になるばかりか、労働を継続すれば更なるプラスを生むことも可能です。したがって、「個人の健康は社会の財産」であると言えます。
健康寿命の具体的な延ばし方
編集部
何に気を付ければ健康寿命が延びますか?
篠﨑先生
「介護の必要な状態」を「健康でない状態」と定義した場合、介護の原因となる疾患を中心に予防することが健康寿命を延ばすことに繋がります。具体的に2019年は①認知症(18%)②脳卒中(16%)③高齢による衰弱(13%)④転倒・骨折(13%)がトップ4で、いずれも予防可能な疾患です。この4つの対策に加え、寿命を直接阻害するがんの予防・早期発見を行うことで健康寿命を延ばすことは可能です。
編集部
実際にどのようにしたらいいのでしょうか?
篠﨑先生
「かかりつけ医」によって総合的に管理してもらう必要があります。「かかりつけ医」とは患者さんの一番身近にいて、その人の健康管理を担う役割の医師です。基本的には総合診療医であらゆる健康問題に対応し、必要があれば専門医につなぐ総合案内役になります。「かかりつけ医」は病気の治療はもちろん、その人の生活、性格、社会的・遺伝的背景等をしっかり把握して病気の予防も行います。
編集部
総合病院(大病院)に定期通院していれば安心ですよね?
篠﨑先生
総合病院はあくまで専門医の集団です。縦割り関係がハッキリしているため専門外の事は「○○科を受診して下さい」とたらい回しになる可能性もあります。もし上記①~④をそれぞれの専門医に診てもらおうと思えば精神科・神経内科・内科・整形外科の4つを受診する必要があり、かつそれらを横断的につなぐ医師も基本的にはいないため現実的ではありません。また、総合病院は「病気を治療するために行く場所」であり、病気を予防してくれる医療機関ではありません。そのため、効率的に健康寿命を延ばそうと思えば「かかりつけ医」でなければ機能的に難しいと考えます。
健康寿命を延ばす「かかりつけ医」の探し方
編集部
「かかりつけ医」に求められる条件は何ですか?
篠﨑先生
患者さんが相談した健康問題に対し真摯に向き合う姿勢があるか、患者さんの背景を含めしっかりと受け止めてくれる医師かどうかという点が重要です。相性の問題もあるため直接医師の診察を受けてみなければ分かりませんが、たとえば腰痛や皮膚疾患など内科以外の質問をしても邪険に扱われない、相談しやすい医師であれば信頼関係を築きやすいかもしれません。
編集部
健康寿命を延ばせる「かかりつけ医」を探すにはどうしたらいいですか?
篠﨑先生
目の前の症状だけでなく、長期的な視点で体の状態を診る医師であるかを判断する必要があります。たとえば「骨粗しょう症」は整形外科医で診療するイメージが強いですが、要介護となる原因の第4位であり、健康寿命を延ばすには無視できない重要な疾患です。ですので、骨密度を測定する機器が置いてある、または整形外科と密に連携をしている医療機関であるかといった点は参考になるかもしれません。
編集部まとめ
「健康」は個人の利益だけでなく、高齢化社会や経済的不況で財政がひっ迫した現代日本にとっては社会的財産でもあると先生は仰います。健康寿命を延ばすには①認知症②脳卒中③加齢による衰弱④骨粗しょう症⑤がんの早期発見・予防に努める必要があり、これらを統合して診てくれる信頼できる「かかりつけ医」を探す必要があるとのことです。ぜひ信頼できるドクターに巡り合えるように、情報を集めて医師とコミュニケーションをとっていきたいと思いました。