「夜だけ頻尿で目が覚める…」医師が夜間頻尿の原因や治し方・セルフケア方法を解説
夜中に何度もトイレで目が覚める「夜間頻尿」。それが毎晩続くと睡眠の質も下がりますし、日常生活にも支障が出てくるかもしれません。一体、夜間頻尿はどのように対処したらいいのでしょうか。今回は、「港南台かわかみ泌尿器科クリニック」の川上先生を取材しました。
監修医師:
川上 稔史(港南台かわかみ泌尿器科クリニック)
夜だけ頻尿で何回も起きてしまう「夜間頻尿」の原因は?
編集部
寝ているとき、トイレが近くて目が覚めてしまいます。これはなぜでしょうか?
川上先生
※日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会「夜間頻尿 診療ガイドライン」
http://japanese-continence-society.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20200527162817-C7663AC8D3BD1607BA2885D44531DBB7EA5250FAB0C5105F9E54CE0B1BC9BB49.pdf
編集部
夜間頻尿になると、どういった影響が出るのですか?
川上先生
例えば、睡眠不足になることが多く、日中の活動性が低下してしまいます。また、高齢者の場合は、夜中にトイレに起きることで転倒や骨折の危険もあります。
編集部
なぜ、夜間頻尿になるのですか?
川上先生
いくつかの原因がありますが、まずは尿量が多い、夜間にたくさんの尿が産生される多尿のために夜間頻尿になることです。これは水分の過剰摂取、加齢、心不全や高血圧、糖尿病、腎機能障害、薬の副作用など原因は様々です。
編集部
ほかにも夜間頻尿の原因はあるのでしょうか?
川上先生
泌尿器疾患を原因とした膀胱に貯められないといったケース、睡眠障害によるケースも考えられます。先ほどの夜間多尿を含めて、複数の要因が複合的に絡んでいることが多いですね。とくに、加齢や生活習慣病を構成する因子との関連が深いことが明らかになっています。
編集部
加齢と夜間頻尿には、どのような関連があるのですか?
川上先生
そもそも、人間には「抗利尿ホルモン」という利尿を妨げる働きを持つホルモンがあるのですが、加齢とともに夜間の抗利尿ホルモンの分泌低下や腎臓での反応性が低下します。そのため、尿量が増えてしまうのです。
夜だけ頻尿・夜間頻尿の治療法を医師が解説
編集部
実際、夜間頻尿で悩んでいる人は多いのでしょうか?
川上先生
そうですね。現在、日本で夜間頻尿の症状に悩まされている人は、「50歳以上で2人に1人」と言われています。つまり、それだけ珍しくない病気なのです。何も治療をせず、放置している人も多いと思いますが、日常生活に支障を起こさないためにも、適切な治療をする必要があります。症状が気になる場合は、早めに泌尿器科を受診してください。
編集部
夜間頻尿の治療の流れを教えてください。
川上先生
まずは詳細な問診や尿検査、超音波検査などをおこない、夜間頻尿の原因を調べていきます。ここで泌尿器の疾患がないかを確認して、もし疾患が見つかればその治療を優先します。そして、その次に「排尿日誌」をつけていただきます。排尿日誌は、日中および夜間の1日を通して排尿の回数・時間・量、その日に摂取した水分量、起床時間、就寝時間などを患者さんに記録していただくものです。
編集部
患者さん自身が記録する必要があるのですね。
川上先生
はい。患者さんの協力が必要で、排尿日誌の作成には相当な労力を要します。しかし、排尿日誌は夜間頻尿の原因を調べる唯一にして、もっとも大事な診断ツールだと言えます。作成することで患者さんが自分の状態を客観的に把握できるというメリットもあり、生活習慣を振り返るきっかけにもなります。
編集部
その後、どのような治療がおこなわれるのですか?
川上先生
原因によって対処が異なりますが、夜間の多尿が原因である場合は水分制限(飲水指導)をします。「水分を摂りすぎない」「カフェインやアルコールを控える」など、生活指導をおこないます。それと並行して、塩分制限や運動療法もおこないます。さらに、昼間に寝ている時間が多ければ夜に眠れなくなって結果として頻尿になることも多いので、睡眠時間の調整も促します。
編集部
薬による治療もあるのでしょうか?
川上先生
泌尿器疾患が原因の場合は、薬物療法が主体となります。また、夜間多尿が原因の場合は生活指導をした上で改善がみられなければ抗利尿ホルモン剤を投与することもあります。睡眠障害が原因であれば、睡眠導入剤を投与することもあります。
夜間頻尿の改善・予防 日常生活でできるセルフケア
編集部
夜間頻尿対策のセルフケアを教えてください。
川上先生
すぐに実践できることとしては、たくさん尿が出ている人は「寝る前に水分やアルコールを控えること」「夕方以降はカフェインの摂取を控えること」などでしょうか。それから、運動不足やストレスも夜間頻尿の原因になりますので、気をつけるようにしましょう。
編集部
運動不足も夜間頻尿と関係あるのでしょうか?
川上先生
はい。運動不足になると下肢の血流が悪くなり、むくみが生じます。つまり、足に水分がたまっているという状態で、この余分な水分はやがて尿になり、夜間頻尿の原因になるのです。解決策として、ウォーキングやふくらはぎを使う運動など、下半身に刺激を与える運動を習慣化するといいでしょう。そして、可能であれば夕方以降に運動することがおすすめです。あるいは、昼間のうちに足を上げておくなど、夕方以降に足がむくまないような工夫も効果的です。
編集部
食事面で気をつけることはありますか?
川上先生
「塩分の摂り過ぎ」には要注意です。塩分をたくさん摂ると体外へ排出しようと尿量が増えてしまいます。とくに高血圧の治療されている人は、厳格な制限が必要です。また、就寝の2時間くらい前からできる限り水分摂取を控えるのも夜間頻尿対策になります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
川上先生
夜間頻尿はQOLを低下させる困窮度の高い症状です。もし、日常生活に支障が出ているのであれば、ぜひ泌尿器科を受診してください。もしかしたら、夜間頻尿の背後は、心不全、糖尿病、高血圧などの生活習慣病が隠れているかもしれません。そうした疾患を見つけたり、生活習慣を見直したりするキッカケになります。規則正しい生活へ改善する一助にもなるでしょうから、もし生活に支障があれば一度受診していただきたいと思います。
編集部まとめ
夜間頻尿を「歳のせい」と諦めてしまっている人も多いのではないでしょうか。しかし、夜間頻尿を放置すると昼間の活動量が低下するだけでなく、転倒などのリスクにもなり得ます。夜間頻尿を放置することはQOLを低下させると捉えていただき、そうした問題に悩んでいる場合は、ぜひ泌尿器科を受診するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒234-0054 神奈川県横浜市港南区港南台3-16-27-101 |
アクセス | JR根岸線「港南台駅」 徒歩3分 |
診療科目 | 泌尿器科 |