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バセドウ病の検査は何するの? 早期発見が重要なワケを医師が解説

 更新日:2023/03/27
バセドウ病の検査は何するの? 早期発見が重要なワケを医師が解説

体重が減少するほか、目の痛みや精神症状など、さまざまな症状が出現する「バセドウ病」。確実な予防法がないため、早期発見・早期治療につなげ、重症化を予防することが重要です。そこで今回は、バセドウ病の症状や検査項目、治療法、日常生活での注意点について「とき内科クリニック座間駅前」の土岐卓也先生に、話を聞きました。

土岐 卓也

監修医師
土岐 卓也(とき内科クリニック座間駅前)

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2008年3月北里大学医学部卒業。北里大学内分泌代謝内科、平塚共済病院内科、横浜労災病院内分泌・糖尿病センターなどに勤務。2019年3月北里大学大学院にて医学博士号を取得。2022年5月「とき内科クリニック座間駅前」開院。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本内分泌学会、日本甲状腺学会、日本高血圧学会、日本抗加齢医学会、日本糖尿病協会に所属。日本内科学会認定医、日本糖尿病学会認定専門医・指導医、日本内分泌学会認定専門医・指導医、日本糖尿病協会認定療養指導医、日本医師会認定産業医、難病指定医。

バセドウ病とはどんな初発症状・特徴のある病気ですか?

バセドウ病とはどんな初発症状・特徴のある病気ですか?

編集部編集部

バセドウ病とはどんな病気ですか?

土岐 卓也先生土岐先生

バセドウ病は、代謝などを司り全身の臓器に作用する「甲状腺ホルモン」が過剰に産生される病気で、「甲状腺機能亢(こう)進症」に分類されます。男女比は1:3~5くらいで女性に多く、なかでも20~30代の若い世代によくみられます。

編集部編集部

どんな症状がみられるのでしょうか?

土岐 卓也先生土岐先生

典型的な症状として、体重減少や動悸、指の震え、眼痛、暑がり、発汗などがみられます。疲れやすさや下痢、筋力の低下、精神的なイライラや落ち着きのなさ、不眠などを生じることもあるほか、女性では生理が止まってしまうこともあります。喉仏のすぐ下あたりにある甲状腺は大きく腫れ、目が飛び出たり、完全に閉じなかったりする形態的な症状がみられることもあります。このほか、特に男性では糖質の多い食事をした後や運動後などに、手足が突然動かなくなる発作(周期性四肢麻痺)を生じることもあります。

編集部編集部

バセドウ病の原因は何ですか?

土岐 卓也先生土岐先生

バセドウ病は「自己免疫疾患」のひとつで、本来ウイルスなどの外敵から体を守るための「免疫」が、自分の臓器(甲状腺)を攻撃してしまうことで発症します。具体的なメカニズムは未だはっきり分かっていないこともありますが、バセドウ病になりやすい体質の人がウイルス感染や強いストレス、妊娠・出産などの変化をきっかけに発症するのではないかといわれています。

編集部編集部

確実な予防法はないのでしょうか?

土岐 卓也先生土岐先生

残念ながら確実な予防法はありません。しかし、早期発見・早期治療によって過剰に分泌される甲状腺ホルモンを、正常な量に戻していくことは可能です。

バセドウ病の検査方法や項目を教えてください

バセドウ病の検査方法や項目を教えてください

編集部編集部

バセドウ病の検査方法について教えてください。

土岐 卓也先生土岐先生

バセドウ病の診断では、症状の確認や血液検査、超音波(エコー)検査を行います。また、場合によって「アイソトープ検査」を行うこともあります。

編集部編集部

血液検査ではどんな項目について調べるのですか?

土岐 卓也先生土岐先生

多くの項目について調べますが、一般的な項目のほか、甲状腺機能検査(FT3、FT4、TSH)や甲状腺抗体検査(TRAb、TSAb、TgAb、TPOAb)などを行います。

編集部編集部

超音波検査ではどんなことを調べるのでしょうか?

土岐 卓也先生土岐先生

超音波検査では、甲状腺の大きさや甲状腺機能性結節(プランマー病)などの腫瘍の有無、血流の亢進の有無、周辺のリンパ節が腫れていないかなどを調べます。最近では、超音波検査によって触診では見つけられない程度の大きさの腫瘍まで発見できるようになり、バセドウ病を診断する上で重要な検査といえます。

編集部編集部

アイソトープ検査はどんな検査ですか?

土岐 卓也先生土岐先生

微量の放射性同位元素(ラジオアイソトープ:RI)を含む薬を注射やカプセルの服用によって投与することで、その薬が甲状腺に集まり、薬から放出される放射線を専用の装置で検出し、甲状腺の大きさや機能、形態などを調べる検査です。この検査は一般のクリニックなどでは行うことができず、大学病院など大きな病院で受けることができます。

編集部編集部

このようなバセドウ病の検査は何科で受けることができますか?

土岐 卓也先生土岐先生

一般的には「内分泌科」や「甲状腺外科」、「耳鼻咽喉科」などで対応しています。

バセドウ病の治療方法や治療薬・治療期間について

バセドウ病の治療方法や治療薬・治療期間について

編集部編集部

バセドウ病の治療方法にはどんなものがありますか?

土岐 卓也先生土岐先生

大きく分けて、「薬物療法」「放射線治療」「外科的治療」の3つの治療法があります。

編集部編集部

薬物療法について教えてください。

土岐 卓也先生土岐先生

初期治療では、甲状腺ホルモンの合成や分泌を抑制する「抗甲状腺薬」(メルカゾール、チウラジールなど)と「ヨウ化カリウム」を併用することが多いです。抗甲状腺薬は、投与量が多いと副作用が懸念される側面があります。また、ヨウ化カリウムは即効性があるものの、数週間で効果が減弱する傾向にあります。そのため、発症初期は抗甲状腺薬を必要以上には投与せず、ヨウ化カリウムと併用して開始し、亢進している甲状腺機能を抑えることを目的に治療を行います。

編集部編集部

薬物療法では、どのくらいで症状が改善するのでしょうか?

土岐 卓也先生土岐先生

服用を開始してから1〜3ヶ月後には甲状腺ホルモン濃度は正常範囲まで低下し、症状も改善します。その後は少しずつ服用する量を減らしていき、最終的には1日1〜2錠の抗甲状腺剤を維持して服用し、TRAbが陰性になることなど、状況を鑑みて服用を中止します。治療は年単位の服用が必要になりますが、2年以上の服用が必要な場合には、放射線治療などほかの治療法を選択します。

編集部編集部

薬物療法の副作用はありますか?

土岐 卓也先生土岐先生

副作用として皮疹(ひしん)や肝機能障害、重篤なものとして無顆粒球症などのリスクがあるものがあるほか、チウラジールを長期内服する場合には、「ANCA関連血管炎」という腎炎のリスクがあります。薬物療法では、このような副作用の出現に注意しながら、治療を進めていきます。

編集部編集部

放射線治療についても教えてください。

土岐 卓也先生土岐先生

放射線を出す「ヨード」を服用する方法です。ヨードは甲状腺に取り込まれ、その放射線によって甲状腺組織を破壊して、甲状腺ホルモンの分泌量を減らすことができます。

編集部編集部

放射線療法のデメリットはありますか?

土岐 卓也先生土岐先生

デメリットとして、甲状腺の機能が安定するまでに半年程度の期間を要すること、服用後に甲状腺機能が低下してしまうことがあるほか、副作用として目の症状が出現することが挙げられます。また、妊娠中の方はこの薬を内服することができません。

編集部編集部

外科的治療についても教えてください。

土岐 卓也先生土岐先生

甲状腺を摘出する外科的治療になります。通常、1週間程度の入院が必要です。手術は、最も早く確実に治療効果が得られます。

編集部編集部

外科的治療のデメリットは何でしょうか?

土岐 卓也先生土岐先生

デメリットとして、外科的治療の痕が残ってしまうことや、合併症(出血、反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症など)が生じるリスクが挙げられます。また、再発がないように全摘除術を行うと、甲状腺ホルモン薬の服用が必要になることも、そう言えるかもしれません。

編集部編集部

治療のほかに、日常生活での注意点などがあれば教えてください。

土岐 卓也先生土岐先生

バセドウ病は、ストレスによって症状が悪化することがあるので、極力ストレスを避け、規則正しい生活を送ることを心がけましょう。また、甲状腺ホルモンの数値が高い時期に激しい運動をしたり重い荷物を持ったりすることで、症状が悪化する恐れがあります。仕事や運動の再開時期に関しては、主治医と相談の上検討してください。また、喫煙している場合には薬の効きが悪くなったり、眼の症状が悪化したりしやすいので、禁煙を心がけましょう。このほか、ヨードを摂り過ぎてしまうと甲状腺機能の不安定化に繋がります。ヨードは一部のうがい薬などに含まれますので、うがい薬を使用する際は使用可能な薬か主治医に確認をして下さい。

編集部編集部

ありがとうございました。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

土岐 卓也先生土岐先生

多くの患者さんを診察するなか、甲状腺の病気はまだまだ認知度が低いような印象を受けます。しかし、甲状腺の病気は放置することで重症化するリスクもあるため、早期発見が大変重要です。体重がどんどん減ってしまったり動悸がしたりするなど、気がかりな症状がある場合には、早めに医療機関で検査を受けましょう。

編集部まとめ

バセドウ病の診断のためには、症状の確認や血液検査、超音波検査などが行われます。バセドウ病は確実な予防法がない一方、早期に発見できれば症状の悪化を予防することができます。気になる症状がある場合には、早めに内分泌科などの医療機関に相談しましょう。

医院情報

とき内科クリニック座間駅前

とき内科クリニック座間駅前
所在地 〒252-0028 神奈川県座間市入谷東4-54-31 ホワイトパレットビル3階-A
アクセス 小田急電鉄小田原線「座間駅」徒歩1分
診療科目 内科、内分泌内科

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