自然に痩せてきても喜べない? 動悸やほてりが伴ったら、バセドウ病を疑うべし!
日常的な体調の変動を「気持ちの問題」だと思い、我慢してしまってはいないだろうか。内分泌・代謝疾患を専門とする小山朝一先生によると、自律神経の失調を起こしてしまう「甲状腺の病気」があるらしい。全身に緊張を強いられたような状態が続く「バセドウ病」。その正体と体の仕組みについて、詳しい話を伺った。
監修医師:
小山 朝一(小山内科 院長)
東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター佐倉病院にて研修を開始、助教・講師などを経た2016年、父から診療所を継ぎ、千葉県千葉市の「小山内科」院長に就任。「内分泌・代謝疾患」を専門としながらも、地域に根ざしたホームドクターとして、総合的な診療に努めている。医学博士。日本糖尿病学会、日本甲状腺学会、日本肥満症治療学会ほか、各学会所属。
常に緊張したような状態が続くのは「バセドウ病」のサイン
編集部
日ごろから「喉の腫れ」や「心臓のドキドキ感」が続いているのですが?
小山先生
くわしく調べてみないとわかりませんが、体重の減少に加えて、眼球がいつもより飛び出しているようなら、「バセドウ病」かもしれません。
編集部
「バセドウ病」とは何ですか?
小山先生
首の部分にある甲状腺から過剰なホルモンが分泌され、体調を崩してしまう病気です。ホルモンは体の新陳代謝を促しますから、「過剰」に分泌されると、激しい運動をした後のように心臓がドキドキします。発症率は数百人に1人程度で、自己免疫異常が原因とされています。
編集部
主な症状にはどのようなものがあるのでしょう?
小山先生
喉にある甲状腺の腫れ、眼球が飛び出してくる、脈拍の上昇が典型的な三症状です。ほか、大きな舞台で緊張したときのような自覚症状を伴います。具体的には、発汗、手の震え、息切れ、うわずった感じ、そして代謝が上がったことによる体重の減少などです。
編集部
眼球が飛び出してくるのはどうしてなんでしょう?
小山先生
ホルモンの影響で「目の後ろにある組織」が肥大し、眼球を押し出してくるからです。目が飛び出してくる症状は、バセドウ病のほかの症状と独立しているようです。全く起こらなかったり、ホルモンの状態が落ち着いても症状として残ったりします。
編集部
ひとつの症状に特化していないのでしょうか?
小山先生
人によってさまざまです。ただし、日によって違うということはありません。固定した症状が繰り返されます。
生活のしにくさを感じたら、「病気かも」と疑ってみる
編集部
初期症状について、年代や性別による傾向はありますか?
小山先生
男女による症状の差はあまりありません。発症率でいえば、女性のほうが顕著です。男性1人に対して女性4人といったところでしょうか。年代でいうと、20代や30代といった若い方に多い病気です。
編集部
どのような人がなりやすいのでしょうか?
小山先生
約15%の患者さんは、ご家族にも発症歴があるとされています。自己判断のヒントにしてみてはいかがでしょうか。
編集部
そのまま放置しているとどうなりますか?
小山先生
バセドウ病が進行し、「甲状腺クリーゼ」という病気に至ると、生死を分けかねません。また、1分間の脈拍数が100を越すこともあるわけですから、心臓へかなりの負担をかけます。こうなると、心不全が心配ですよね。加えて、症状によるストレスが胃炎や不眠など二次的な病気を発症させることもあります。
編集部
受診の目安は?
小山先生
「休んでいても心臓がドキドキする」「緊張していないのに手が震える」など、普段とは逆のことが起きたら受診しましょう。良くあるのは、「気持ちの問題」だと勘違いして、我慢してしまうケースです。ぜひ、「甲状腺の異常による病気かもしれない」という視点を持ってみてください。
編集部
受診するとしたら何科でしょう?
小山先生
「内分泌内科」が好ましいものの、標ぼうしている医院はそんなに多くありません。ですから、最寄りの内科を受診して、「甲状腺を調べてほしい」と頼んでみましょう。バセドウ病の発症率は低いため、患者さんから言わないと見逃され、循環器系の医院などへ回されてしまうかもしれません。
投薬による治療が基本だが、手術を用いるケースも
編集部
バセドウ病は治せるのですか?
小山先生
内服薬による治療は、一時的に落ち着いたとしても、再発する可能性があります。内服が終了したとしても、1年に1回程度の検診を続けてください。他方、甲状腺の放射線治療や手術による治療があります。それぞれ一長一短があるので、担当医まで相談しましょう。当院でも患者さんの考えや各治療方法のリスク、すぐに治したいかどうかなどによって治療を決めています。
編集部
診断時には、どのような検査をするのでしょう?
小山先生
血液検査と甲状腺の超音波検査が基本です。動悸(どうき)の度合いによっては、心電図や胸部X線検査もおこないます。感染症や心不全を合併したりした場合は、入院も考えられるでしょう。
編集部
生活するうえでの注意や制限はありますか?
小山先生
治療中は、特にホルモンの状態が安定しない間は、激しい運動を控えましょう。落ち着いた後なら、定期的な通院を除けば、制限などはありません。妊娠中や授乳中の場合は、必ず医師に報告しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
小山先生
繰り返しになりますが、家族に発症歴のある方がいらっしゃり、自覚症状を感じたら、早めに受診しましょう。また、出産など、「体に大きな変化が起きた後」の発症も散見されています。
編集部まとめ
ホルモンが甲状腺から“過剰”に分泌されると、心臓をはじめとした体の各器官も“過剰”に動きかねません。ぜひ、この仕組みを知っておきましょう。甲状腺の異常疾患は、精密検査をすれば、明らかになります。もちろん治療も可能です。我慢する必要は全くありません。
医院情報
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アクセス | JR総武本線・千葉都市モノレール「都賀駅」から徒歩5分 駐車場12台完備 |
診療科目 | 内科、糖尿病、内分泌内科 |