~実録・闘病体験記~ 祖母も叔母も患ったバセドウ病に「私もなってしまった…」
「遺伝する病気」とは別に「病気になりやすい体質が遺伝する」ということがあるのだそうです。話を聞いたのは、「バセドウ病」を発症した坂本さん(仮称)。自身も医療系の専門学校を卒業していて、病気の知識もあり、親戚にも同病の方がいたため、病気については落ち着いて受け止められたそうですが、そんな彼女でもキツかったこととは? 詳しく教えてもらいました。
体験者プロフィール:
坂本さん(仮称)
1992年生まれ、愛知県在住。2014年にバセドウ病と診断される。医師と相談し、手術を選択。2015年に甲状腺を摘出する手術を受けた。現在は甲状腺機能低下症の薬を飲み続けており、甲状腺機能のコントロールは何年も良好な状態が続いている。
記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
眠っていても動悸で目が覚めてしまう
編集部
バセドウ病が判明した経緯について教えてください。
坂本さん
仕事中、話しているときや階段の昇り降りなどで動悸、息切れがするようになったのが、違和感のはじまりでした。「体力落ちたなぁ」くらいに思っていましたが、そのうちに眠っていても動悸で目覚めることが出てきました。祖母と叔母が同じ病気だったこともあり、症状として喉が腫れることも知っていたので鏡で確認したら、同じように喉が腫れていました。医療機関勤務だったので、職場で採血してもらい大きな病院へ紹介状を書いてもらいました。診療情報管理士の専門学校を出ていたので、ある程度の病気に対する知識もありました。
編集部
バセドウ病とは、どんな病気なのですか?
坂本さん
自己免疫疾患のひとつで、甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気です。動悸や息切れのほか、疲れやすくなったり喉が異常に乾いたり、外見的には甲状腺が腫れるほか、汗をかきやすかったり、眼球が突出してくるなどの症状があります。
編集部
どのような治療法があるのですか?
坂本さん
血中の甲状腺ホルモンなどの数値が高すぎたので、まずは薬で正常値まで落ち着かせますと言われました。その後、そのまま薬物療法を継続するか、「ヨウ素131」という放射性物質を飲んで甲状腺の細胞を壊す「放射性ヨウ素内用療法」か、手術で甲状腺を切除する「手術療法」かが選べるという感じでした。
編集部
坂本さんはどういう選択をしたのですか?
坂本さん
診断されたのが23歳で、将来的に妊娠を希望していたので手術療法を選択しました。妊娠中の人や、妊娠を希望している人には手術療法が最も推奨されるとのことだったからです。手術で甲状腺を全部摘出してしまうので、その後は甲状腺ホルモンを一生飲み続けなければなりませんが、これは妊娠しても服用可能です。
編集部
手術は大変でしたか?
坂本さん
手術前にまず、甲状腺ホルモン値を下げるお薬を服用したのですが、こっちの方が大変でした。副作用がものすごく出てしまって……。薬疹と痒みがひどく、肝機能の数値も上がってしまってこのお薬は続けられなくなりました。あれはもう経験したくないですね。別のお薬に変えてもらってからは、薬疹も落ち着き、無事手術ができました。
病気になったのが自分で良かった
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
坂本さん
祖母と叔母がバセドウ病だったこともあり、あまり驚きはしませんでした。「私もか。まあ治療薬もある病気だし、不幸中の幸いかな」くらいに思っていました。バセドウ病になりやすい体質というのは遺伝するみたいです。
編集部
なりやすい体質が遺伝するんですね。
坂本さん
はい。わたしは家系的に分かっていたので、診断がついたときも落ち着いて受け止められたと思います。家族も最初から病気についての知識があるので、たとえば私の機嫌が悪いのは、「病気や薬のせいだ」とそっとしてくれていたみたいです。あとは、病気になったのが母や姉・妹じゃなくて自分で良かった、と思いました。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
坂本さん
甲状腺ホルモン値が落ち着くまでは週に一回通院しなければならなかったのですが、そのペースで職場のお休みをいただくのが大変でした。医療機関で働いていたのに、通院のためのお休みがあまり理解されていない印象でした。
病気よりもキツかったこと
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
坂本さん
採血の数値が落ち着いたところですぐに手術をして、甲状腺を摘出しました。その後も薬でコントロールできていて良好です。2〜3か月に1回の通院でお薬を処方してもらうのと、診察の2回に1回くらいのペースで血液検査をして甲状腺ホルモンの値などを確認してもらっています。手術直後は首を横切るように手術の傷が付いていたので、シールで隠していましたが、現在は目立たなくなりました。
編集部
闘病生活を振り返って何か思うところはありますか?
坂本さん
この病気は、見た目ではあまりわかりにくいのですが、身体はとっても疲れます。特に手術前は、常に運動しているような感じで、座って仕事をしていても、横になっていても心臓がバクバクしていました。ごく一部の方ですが、怠けとか仮病みたいに捉えられて悔しい思いをしたことがありました。病気以上に辛かったかもしれません。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
坂本さん
私には病気の知識や家族に病歴があったのに、バセドウ病に気づけませんでした。今振り返ってみると、何もしていないのに心臓がバクバクしていて明らかにおかしかったので、もう少し早く病院に行けば良かったと思います。でもバセドウ病にかかったことによって、それからはなにか体の変化に気づいたらすぐに病院を受診するようになりました。身体がなにかサインを出していたら、スルーせず、きちんと検査してもらってください。
編集部まとめ
ご家族に同じ病気の方がいたこともあり、病気になったことについては落ち着いて受け止められたという坂本さん。病気そのものよりも、症状が理解されずに「怠けている」と思われてしまったことや、通院のためのお休みが取りにくかったことなどがキツかったと言います。もうひとつ、症状が出てから実際に受診するまでに期間が空いてしまったことで、甲状腺ホルモンの数値がかなり上がってしまい、その薬の副作用に苦しんだ経験から、「もう少し早く病院に行けば良かった」とおっしゃっていました。周りに不調を訴える人がいたら、見た目が元気そうでもきちんと配慮すること、また自分自身も、体調不良を感じたら無理せず受診することを心がけたいと思います。坂本さん、ありがとうございました。