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近視や乱視、老眼の治療ができる眼内コンタクトレンズ「ICL」「IPCL」とは何か

 更新日:2023/06/28
近視や乱視、老眼の治療ができる眼内コンタクトレンズ「ICL」「IPCL」とは何か

近視や乱視、老眼の治療に適応となる「ICL」「IPCL」。眼内に入れるコンタクトレンズで、レーシック治療と異なり角膜を削らずに行われる新しい治療法の一つです。画期的な治療法であるものの、安全性やメリット・デメリットについても気になるところです。そこで今回はICLとIPCLについて、新見眼科の大槻光伸先生に話を聞きました。

大槻光伸医師

監修医師
大槻 光伸(新見眼科主任執刀医)

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奈良県立医科大学卒業、奈良県立医科大学眼科学教室に入局。奈良県西和医療センター、済生会中和病院科長、昴会アイセンターなどでの勤務を経て令和3年より現職。日本眼科学会認定眼科専門医。日本眼科手術学会などに所属。視覚障害者用補装具適合判定医。屈折矯正手術、オルソケラトロジー、白内障・眼内レンズ手術などが専門分野。

ICLとIPCLとは?

ICLとIPCLとは?

編集部編集部

はじめに、「ICL」と「IPCL」について教えてください。

大槻光伸医師大槻先生

「ICL」と「IPCL」はどちらも眼内コンタクトレンズのことです。それぞれ目の中にレンズを挿入して行う、屈折矯正治療に使用されます。それぞれ素材は異なりますが、術式などは同じです。

編集部編集部

どのような場合に適応になるのですか?

大槻光伸医師大槻先生

主に近視や遠視、乱視の屈折矯正治療です。近視や遠視、乱視で裸眼では見えにくく、不便さを感じる場合、また、眼鏡やコンタクトレンズの着脱や衛生管理などの煩わしさから解放されたいという場合にICLやIPCLのような眼内レンズを挿入するという選択肢があるのです。屈折矯正手術では近年、レーシック治療が普及していますが、IPCLには老眼に対応できる「多焦点」タイプのものがあるため、レーシックの治療後に老眼を改善する目的でIPCLを挿入することなども可能です。

編集部編集部

ICLやIPCLを使用した治療は、レーシック治療と比較してどのような相違点があるのでしょうか?

大槻光伸医師大槻先生

レーシック治療との大きな違いは、「元の状態に戻せる」という点でしょう。レーシック治療では角膜を削るため、元の状態に戻すことはできません。また、レーシック治療は近視や遠視、乱視の矯正をすることはできますが、老眼を改善することはできないのです。IPCLは老眼にも対応でき、ICLとともに角膜を削らず眼内に挿入するだけで矯正できるため、画期的な治療法といえるでしょう。

ICLとIPCLの違いとは

ICLとIPCLの違いとは

編集部編集部

それぞれの違いについて聞かせてもらいます。まずはICLについて、教えてください。

大槻光伸医師大槻先生

ICLは黒目(虹彩/こうさい)と水晶体の間の「後房」(こうぼう)という場所に挿入するタイプの眼内レンズで、水晶体を残したまま眼球内にレンズを挿入する屈折矯正治療に使用されます。「コラマー」というコラーゲンとHEMA(水酸化エチルメタクリレート)を含む特殊な素材でできており、たんぱく質などの汚れが付きにくく、長期間に渡って目の中で安定する素材とされています。また、一度眼内に挿入したレンズはメンテナンスが不要で、長期間視力が安定することも特徴の一つです。

編集部編集部

IPCLについても教えてください。

大槻光伸医師大槻先生

IPCLは、2015年から国内で使用されている新しいタイプの眼内レンズです。「ハイブリッド親水アクリル」という素材でできており、ICLよりも見え方の質が高いとされています。IPCLは眼内でレンズを固定するための特殊な構造になっており、老眼に対応できる多焦点タイプのものもあります。生活様式に合わせ、効き目を裸眼もしくは単焦点タイプのレンズを挿入し、反対の目のみに多焦点タイプのレンズを入れるなどの選択も可能です。

編集部編集部

ICLとIPCLのメリットは何でしょうか?

大槻光伸医師大槻先生

ICLとIPCLのメリットは、角膜を削らずに矯正治療が可能であるため、レーシック治療では対応できない強度の近視、角膜が薄い場合、円錐角膜などの場合にも施術が可能な点でしょう。また、レーシック治療では角膜の中央を削るため、視界に細かい歪みなどを生じさせることもありますが、ICLやIPCLではそのような歪みが生じることもなく、よりクリアで良好なコントラスト感度を保つことができます。さらに、ドライアイも生じにくいといわれています。

編集部編集部

では、ICLとIPCLの違いは何でしょうか?

大槻光伸医師大槻先生

ICLとIPCLの大きな違いは、その素材です。ICLのコラマーはHEMAとコラーゲンでできており、眼内に挿入した際にも不適合を起こすことが少ない優れた素材です。一方、IPCLのハイブリッド親水性アクリルは加工がしやすく、細かな工作が可能でICLよりさらに見え方の質が高いとされています。また、ICLは4つのサイズしかないのに対し、IPCLでは多焦点タイプのレンズも選べるほか、ICLよりサイズの選択肢が多数あります。

ICLやIPCLの副作用や合併症

ICLやIPCLの副作用や合併症

編集部編集部

ICLとIPCLのデメリットはありますか?

大槻光伸医師大槻先生

自費診療であるため、保険診療に比べ金額が高額になります。また、すべての人が施術を受けられるわけではなく、レンズが入る隙間が狭い方(角膜内面から水晶体前面までの距離が2.8mm未満の方)、角膜内皮細胞の少ない方、網膜や視神経に異常のある方などは受けられません。ごくまれに挿入したレンズの度数やサイズが合わず、レンズの入れ替えが必要になる場合があるほか、乱視用レンズを挿入した場合には術後にレンズが回転して位置修正の追加手術が必要になるケースなどが報告されています。

編集部編集部

手術時や術後の注意点はありますか?

大槻光伸医師大槻先生

手術では一時的に目に炎症が生じるため、術後、ぼやけて見えたりかすみや眩しさ、異物感、充血などを生じたりすることがあります。また、傷口や白目に出血することもありますが、このような炎症や出血は1〜2週間でなくなります。ほかにも、手術当日は散瞳薬を使用するため、車やバイクの運転などを控えていただく必要があります。

編集部編集部

手術で合併症を起こすことなどはあるのでしょうか?

大槻光伸医師大槻先生

ごくまれに生じうることとしては、眼圧上昇や眼内炎、白内障、挿入したレンズの位置ずれや度数ずれなどが挙げられます。その場合、治療が必要なケースもあります。しかしこうした合併症などが生じる可能性はかなり低く、万が一生じた場合にも適切な治療を行えば重症化することは少ないでしょう。

編集部編集部

ありがとうございました。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

大槻光伸医師大槻先生

ICLやIPCLによる治療は、これまで眼鏡やコンタクトレンズの装着に煩わしさを感じていた方にとって、非常に画期的な治療法です。また、ご自身では見え方に不便はないと感じていた場合でも、ICLやIPCLを挿入すると見える世界が変わったと感じることもあることでしょう。最近では著名人でICL、IPCL手術を受ける方も多く普及してきましたが、利便性の高さやメリットから今後もさらに普及していくことが見込まれます。中には近視や乱視、老眼でも、眼鏡やコンタクトレンズで事が足りるとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、万が一の災害時などには眼鏡やコンタクトレンズを探したり装着したりする手間が原因で、逃げ遅れなどの一大事につながる恐れもあるのです。見え方の質を高めたり老眼を改善したりするだけでなく、災害時への備えとしてICLやIPCLなどの眼内レンズの挿入を検討してみても良いかもしれません。

編集部まとめ

ICLやIPCLは角膜を削らずに治療でき、万が一合わなかった場合でも元の状態に戻すことができます。見え方や近視、老眼の改善だけでなく、眼鏡やコンタクトレンズ使用の煩わしさを無くしたいという場合にも有益な治療法といえるでしょう。ICLやIPCLは自費診療による治療ですが、費用はクリニックごとに異なるため、治療を受けるクリニックに確認してみましょう。

医院情報

新見眼科

新見眼科
所在地 〒674-0092 兵庫県明石市二見町東二見901-1
アクセス 山陽電鉄「東二見駅」南出口 西側すぐ
診療科目 眼科

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