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「白内障手術」の多焦点眼内レンズを入れるデメリットをご存じですか? メリットだけで選ばない!【医師解説】

 公開日:2025/05/24

多焦点眼内レンズは、白内障手術の際に挿入されるレンズの一種で、遠近両方の視力を補正することが可能です。単焦点眼内レンズと比べるとどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。そこで、白内障手術のレンズ選びについて、医師の中原将光先生(中原眼科)に話を聞きました。

中原 将光

監修医師
中原 将光(中原眼科)

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浜松医科大学を卒業後、東京医科歯科大学病院(現・東京科学大学病院)眼科、横浜市立大学附属市民総合医療センターなどで研鑽を積む。その後、国際親善総合病院眼科、神奈川県立足柄上病院にて部長を歴任。フリーランスの眼科手術専門医として多数の手術経験を重ねる。現在は中原眼科院長。日本眼科学会認定眼科専門医、ICL(有水晶体後房型レンズ)認定医。

多焦点眼内レンズって? 医師が解説

多焦点眼内レンズって? 医師が解説

編集部編集部

多焦点眼内レンズとは何ですか?

中原 将光先生中原先生

多焦点眼内レンズは、白内障手術で水晶体を取り除いた後に挿入される人工レンズのひとつです。眼内レンズは大きく分けて単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズがありますが、ピントの合うところが1箇所のものが単焦点眼内レンズ、遠くや近くなど、複数の箇所にピントを合わせることができるものが多焦点眼内レンズです。これにより、眼鏡なしでも日常生活を送ることが可能になる場合があります。

編集部編集部

どのような人が多焦点眼内レンズの適応となりますか?

中原 将光先生中原先生

白内障を患っており、手術後に眼鏡をかけないで遠くから近くまでなるべく広い範囲が見たいと希望する人が主な適応です。ただし、目の健康状態や生活スタイルによって適応が異なるため、専門医の診察が必要です。

編集部編集部

多焦点眼内レンズにも種類があるのですか?

中原 将光先生中原先生

そうですね。一口に多焦点眼内レンズと言っても、二焦点レンズや三焦点レンズ、五焦点レンズ、焦点深度拡張型など、さまざまな種類があります。世界の様々なメーカーがさまざまな種類を開発しており、それぞれのレンズは、焦点の数や設計が異なり、見え方や適応が全く違います。

編集部編集部

どのようにして選んだらよいのでしょうか?

中原 将光先生中原先生

それぞれの生活スタイルや職業、趣味、目の状態などを考慮して、最適なレンズを選択します。また、やや専門的な話になりますが、選ぶレンズによって、健康保険の「選定療養」という制度が利用できる場合とできない場合がありますので、専門医と十分に相談して、自分に合ったレンズを選ぶことが重要になります。また、クリニックや医師の経験によって扱えるレンズの種類の数に違いがありますので、より多くの選択肢から選べることも最適なレンズを見つけるためには重要です。

多焦点眼内レンズのメリット、デメリットって?

多焦点眼内レンズのメリット、デメリットって?

編集部編集部

多焦点眼内レンズのメリットは何ですか?

中原 将光先生中原先生

最大のメリットは、遠近両方の視力を補正できて、眼鏡への依存を減らせることです。これにより、日常生活の質の大幅な改善が期待できます。このことを叶えるためには通常の白内障手術に比べて、医師の技量がより必要になりますが、上手におこわれた手術であれば基本的に一生ものになりますのでメリットは大きいといえます。

編集部編集部

では、デメリットや注意点はありますか?

中原 将光先生中原先生

デメリットとして、「ハロー・グレア」という光のにじみを感じることがあります。これは単焦点眼内レンズでも発生しますが、多焦点眼内レンズでは症状が強く出るものもあります。また、前述のとおり保険適用が限定的であり、費用が単焦点眼内レンズに比べて高額となる場合がほとんどです。最近ではハロー・グレアがほとんど出ないものも開発されていますが、やはり高額です。そうなると最終的なデメリットは費用ということになると思います。また高性能なレンズは扱っている眼科施設が限られていることと、手術技術が高くなければレンズの機能が発揮されないので、病院をしっかり選ばなければいけないということも逆にデメリットになります。

編集部編集部

手術に伴うリスクはありますか?

中原 将光先生中原先生

前提として、すべての手術にはリスクが伴います。白内障手術においても、単焦点眼内レンズ・多焦点眼内レンズにかかわらず、感染症や炎症、視力の低下などのリスクがありますが、これらは非常に稀と報告されています。ただし、こういったリスクは医師の技量と手術機器の性能で最小限にすることができます。

編集部編集部

手術の内容について教えてください。

中原 将光先生中原先生

手術は通常、局所麻酔下でおこないます。水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入します。手術時間は多くの場合、約15分で、日帰りでおこなわれています。これらの流れは、どのレンズであっても大きな変わりはありませんが、医院によってはフェムトセカンドレーザーを使用したレーザー白内障手術をおこなえる施設があり、こういった医院ではそちらを選択したほうが安全性と正確性が上がることもわかっています。

多焦点眼内レンズで術後の生活はどうなるか?

多焦点眼内レンズで術後の生活はどうなるか?

編集部編集部

術後についても教えてください。

中原 将光先生中原先生

個人差がありますが、多くの人は手術翌日から日常生活に戻ることができます。ただし、完全な視力の安定には数週間かかることがあります。

編集部編集部

手術後、眼鏡は全く不要になりますか?

中原 将光先生中原先生

単焦点眼内レンズと比べると、眼鏡への依存は大幅に減らすことができますが、細かい文字を読む際など、特定の状況では眼鏡が必要になる場合もあります。選ばれるレンズの性能にも大きな差がありますので、広い選択肢から選ぶことが重要です。

編集部編集部

手術を検討する際、どのような点に注意すべきですか?

中原 将光先生中原先生

手術、そしてそれぞれの眼内レンズのメリットとデメリットを十分に理解し、自分の生活スタイルやニーズに合っているかを考慮することが重要です。専門医としっかり相談し、納得した上で決断してください。

編集部編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。

中原 将光先生中原先生

多焦点眼内レンズは単焦点眼内レンズに比べ、より精度の高い手術が必要とされます。そのため、医師の経験数と技術力、医療設備の差が顕著に出る手術になりますので、病院選びがとても重要になってきます。また単焦点眼内レンズでも多焦点眼内レンズでも、入れてみて自分に合っていない場合が稀にあります。そういった時に入れて終わりではなく、入れ替えなどの対応ができる技術があるかどうかを確認してからクリニックを選びましょう。また、これらの手術はあくまで白内障治療が目的であり、レンズの選択はその一環であることを踏まえた上で、より自分に合ったレンズを選びましょう。

編集部まとめ

多焦点眼内レンズは、白内障手術後の視力回復において有効な選択肢の一つです。しかし、メリットだけでなくデメリットもあるため、手術を検討する際は、医師と十分に相談し、自分に最適な治療法を選択することが重要です。

医院情報

中原眼科

中原眼科
所在地 〒194-0013 東京都町田市原町田6丁目19−14
アクセス 小田急線「町田」駅 東口改札より徒歩2分
JR「町田」駅 中央改札北口より徒歩2分
診療科目 眼科

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