生理中のセックスはキケン! 妊娠や性感染症のリスクを産婦人科医が解説
「月経中の性行為は妊娠しないから大丈夫」。そう考えている人は、多いのではないでしょうか? 実は月経中の性行為にはさまざまなリスクがあり、一般的には勧められていません。一体、どのようなリスクがあるのか、ショコラウィメンズクリニックの木崎先生に教えてもらいました。
監修医師:
木崎 尚子(ショコラウィメンズクリニック 院長)
東京女子医科大学卒業。川崎市立井田病院・川崎病院で初期研修。東京女子医科大病院産婦人科、国際親善総合病院産婦人科、湘南藤沢徳洲会病院産婦人科、茅ヶ崎徳洲会病院産婦人科などを経て、2021年10月にショコラウィメンズクリニックを開院。古くから薬能があるとされ、また、人を癒やしたりリラックスしたりする効果があるとされるチョコレートのように、ほっとできる空間を提供したいとの思いから、「ショコラウィメンズクリニック」と命名。
月経中の性行為でも妊娠の可能性はある?
編集部
月経中に性行為することは、問題ないのでしょうか?
木崎先生
医学的な観点からすれば、月経中に性行為をすることは絶対にNGというわけではありません。しかし、リスクがあるのは確かです。そのため一般的には、「月経中の性行為は避けたほうが良い」と言われています。
編集部
ある意味では「月経中は妊娠することがないので、安全」という考え方もありますよね。
木崎先生
確かに、月経中は妊娠をする確率が極めて低いとされています。なぜなら、通常の周期であれば、排卵は月経の約2週間前に起こるからです。排卵してから、卵子は12〜24時間しか生きることができないので、基本的に月経中の性行為は妊娠する確率が極めて低いと考えられています。ただし、妊娠する可能性がゼロではないことは覚えておいてほしいと思います。
編集部
月経中の性行為で、妊娠することもあるのですか?
木崎先生
あります。たとえば、月経中の性行為は妊娠の可能性が低いといっても、10代や20代前半の若い人たちは、月経の周期が安定しないため、排卵のタイミングがずれることもあります。そのため、月経中でも妊娠する可能性はゼロではないのです。
編集部
なるほど、月経周期に理由があるのですね。
木崎先生
それから、月経だと思っても実は不正出血だったということもあります。ある程度の出血があると月経と勘違いしがちですが、もしかしたらそれは不正出血かもしれません。出血か不正出血か、自分で見分けるのが難しいこともありますから、安易に「月経中だから安心」と判断しない方が賢明です。
性感染症のリスクもある
編集部
ほかに、月経中の性行為にはどのようなリスクがあるのですか?
木崎先生
性感染症のリスクも大きいですね。性感染症とは、性行為によって感染する病気のこと。月経中に性行為をすると、性感染症にかかるリスクが高くなるのです。
編集部
なぜ、性感染症を発症するリスクが高まるのですか?
木崎先生
月経中の腟内は、その他の時期に比べてとてもデリケートになっていて、少々の刺激でも傷ができやすいからです。通常、腟内には強力な免疫機能があり、ウイルスや雑菌が内部に侵入するのを防いでいます。しかし月経中は少しの刺激でも傷ができやすく、また、女性ホルモンの関係で免疫機能が低下しているため、ウイルスや雑菌が傷口から侵入しやすくなっているのです。
編集部
具体的には、どのような病気を発症するリスクがあるのですか?
木崎先生
たとえば、クラミジア、ヒトパピローマウイルス、淋菌などに感染するリスクが上昇します。さらにこれらのウイルスや菌が原因となって、HIVに感染するリスクもあります。
編集部
感染症になると、パートナーにもうつる可能性がありますね。
木崎先生
もちろん、感染症のリスクがあるのは月経中だけではありません。特に最近では梅毒やヒトパピローマウイルスに感染する人が増えています。自分が感染していることに気づかず、性行為をすることで、パートナーにもうつしてしまうリスクがありますから、月経中はもちろん、普段から感染症対策をしっかりすることが大切です。
編集部
避妊具を使えば感染するリスクはなくなるのでしょうか?
木崎先生
確かに避妊具を使えば、使わないよりも感染のリスクは下がるかもしれません。しかし正直なところ、「避妊具を使った方が、まだ良い」という程度です。避妊具を使っても、ウイルスや菌の感染を防げるのは局所に過ぎず、外陰部などにウイルスや菌が触れれば感染のリスクは高まります。感染症を予防するためには、正しい知識を持つこと、それから、不安があったら感染を拡大しないためにも、できるだけ早く医療機関で診察を受けることが大切です。
婦人科系疾患のリスクもある
編集部
そのほか、月経中の性行為にはどんなリスクはありますか?
木崎先生
性感染症だけでなく、婦人科系の疾患を発症することがあります。月経中に性行為をすることで、子宮内膜症のリスクが上がるとされています。
編集部
子宮内膜症とはどんな病気ですか?
木崎先生
子宮内膜症とは、子宮内膜の組織や、子宮内膜に似た組織が子宮の内側以外の場所で育ってしまう病気のことです。月経痛がひどくなったり、不妊の原因になったりします。
編集部
なぜ、月経中の性行為で子宮内膜症になるのですか?
木崎先生
本来、排出されるはずの血液が押し戻され、お腹のなかに逆流してしまうからです。逆流するとき、ウイルスや雑菌を子宮の内部へ招き入れてしまい、子宮内膜症を発症する原因になってしまうのです。さらに、子宮内膜がお腹のなかに入り込んでしまうことによって、子宮内膜症になることもあります。
編集部
そうしたリスクを考えると、月経中の性行為は避けた方が良いのですね。
木崎先生
医学的にはNGではないとされていますが、身体のことを考えれば避けた方が良いのは明らかです。。「月経中は妊娠しないから大丈夫」というようなデマに惑わされることなく、ぜひ正しい知識を持って、行動してほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
木崎先生
月経中はホルモンバランスの変化により、性欲が高まりやすい時期。しかし、このように月経中の性行為はさまざまなリスクを伴うので、月経中は性行為以外のスキンシップを大切にすると良いのではないでしょうか。また、ヨガやストレッチなどでリフレッシュしたり、チョコレートなどリラックス効果のある食べ物やアロマ、温かい飲み物などで心を落ち着かせたりするとよいでしょう。
編集部まとめ
月経中の性行為は妊娠しないから大丈夫と思っていると、大きなリスクになることもあります。もちろん、性感染症は月経中だけでなく、普段からでも気をつけたいもの。月経中に限らず、普段から性行為は一定のリスクを伴うということを意識し、正しく安全に行いたいものですね。
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