「梅毒」はコンドームをつけてもうつるって本当? 医師が治療法や感染・放置するリスクも解説
ここ10年ほど、「梅毒」の感染者が増加しているそうです。「梅毒」とはどんな病気で、感染するとどんな症状が出るのでしょうか。本記事では「梅毒」について、産婦人科医の前出 喜信先生(シュシュレディースクリニック 戸田公園 院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
前出 喜信(シュシュレディースクリニック 戸田公園)
目次 -INDEX-
梅毒を医師が説明 どんな病気? 放置しておくとどうなるの?
編集部
「梅毒」とはどんな病気ですか?
前出先生
性交渉で感染する「性感染症」の一つです。梅毒トレポネーマという菌が、粘膜同士の接触により感染します。感染から発症までは潜伏期間があり、感染から3週間ほど経ってから症状が出現します。
編集部
映像作品の影響もあり、「昔の病気」というイメージがあります。
前出先生
※参照:厚生労働省「性感染症 梅毒」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/syphilis.html
編集部
梅毒に感染すると、どんな症状が出るのですか?
前出先生
梅毒の症状は、いくつかの病期に分類されます。初期の症状は性器、肛門や口腔内などの感染部位に、痛みのない硬いしこり(初期硬結)やただれ(潰瘍)ができ、その周辺のリンパ節が腫れます(第1期)。その後3ヶ月くらい経過すると、全身の皮膚や粘膜に発疹が出てくるようになります(第2期)。
編集部
そのまま進行するとどうなるのですか?
前出先生
さらに3年以上経過すると、臓器の機能障害が進行し(第3期)、感染後10年以上経つと心臓や血管、脳に影響が表れ、痙攣や意識障害をきたし、死に至る可能性もあると言われています(第4期)。
梅毒の診断、治療について医師が解説
編集部
それは怖いですね。
前出先生
そうですね。特に、妊娠中の梅毒感染は非常に危険です。妊婦さんが梅毒に感染すると胎盤を通って胎児にも感染し、死産や早産になったり、「先天梅毒」といって生まれた赤ちゃんの骨や神経、臓器などに異常をきたしたりすることがあります。
編集部
若くても注意が必要なのですね。
前出先生
むしろ若い方にこそ、この病気を知っていただき、十分に注意していただきたいと思います。特に女性は、20代の感染者が突出して多いのです。男性は20〜50代の感染者が多く、決して「若いから大丈夫」ということはありません。
編集部
梅毒の検査は、どのように行われるのですか?
前出先生
医療機関で、専門医による診察と血液検査を行います。血液検査で、梅毒の抗体が確認されれば、梅毒と診断されます。一部の保健所でも、検査してくれるところがあるようです。
編集部
検査について、注意点などありますか?
前出先生
血液検査の結果から感染の有無を正確に判断できるよう、感染したかもしれない時期や、感染対策の有無(コンドームの使用有無など)について、説明できるように準備しておくと良いでしょう。また、パートナーにも感染の可能性がありますので、検査、そして必要に応じて治療を受けてもらうことが重要です。特定のパートナーがいる方は、当院のように、ご自身とパートナーの同時治療が可能な医療機関で相談するのをお勧めします。
実際の治療法を医師が解説 「梅毒」と診断されたらどうする? 入院の必要は?
編集部
実際に「梅毒」と診断されたら、どんな治療をするのですか?
前出先生
薬物治療を行います。病期にもよりますが、ペニシリン系などの抗菌薬が有効で、内服治療が一般的に行われていますので、初期であれば入院の必要はありません。また近年、梅毒に対する抗菌薬の筋肉注射による治療が行われるようになりました。注射による治療のメリットは、内服のように毎日継続するのではなく、1回の注射による治療になるため、飲み忘れによる治療の中断がないことです。内服の治療にするか、注射の治療にするかは受診された医療機関で相談の上決定することになります。梅毒トレポネーマが中枢神経系に浸潤した「神経梅毒」が起こっている場合は、入院して抗菌薬の点滴治療が行われます。
編集部
梅毒の治療について、注意点などはありますか?
前出先生
薬の内服期間は病期などを考慮して医師が判断しますが、大事な点は、症状が良くなっても自己判断で治療を中断しないようにすることです。症状が良くなったからといって、菌が完全にいなくなったわけではありません。医師から完治の診断が出るまでは、性交渉をはじめ感染拡大につながる行為は控えましょう。
編集部
症状がなくなっても、安心してはいけないのですね。
前出先生
そうですね。さらに、医師から「完治」と言われて治療や通院が終了しても、今後の新たな感染を予防できるわけではありません。梅毒は「一度かかったら、もうかからない」というタイプの感染症ではないからです。このため性交渉の際の感染対策や、パートナーの治療などを疎かにしていると、再び梅毒にかかる可能性があります。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
前出先生
コロナ禍のステイホームで、性感染症も減るのではないかと期待されましたが、実際は減りませんでした。特に「梅毒」は、感染力が強く、コンドームをしていたからといって100%予防することはできない病気です。きちんと診断・治療がされていないと、さらに感染を広めてしまう可能性が非常に高くなります。性感染症の場合は、早期受診と早期の治療、およびパートナーとの同時治療を強くお勧めします。
編集部まとめ
ここ10年ほど、ほかの性感染症の感染者数は横ばいであるにもかかわらず、「梅毒」の感染者数は大幅に増えているそうです。症状が出るまでに3週間の潜伏期間もあるため、その期間に更なる感染拡大を招いていることも考えられます。早期受診と早期の治療、そしてパートナーとの同時治療がとても大切とのことでした。
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