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「梅毒」はコンドームをつけてもうつるって本当? 医師が治療法や感染・放置するリスクも解説

 公開日:2023/06/30
「梅毒」はコンドームをつけてもうつるって本当? 放置で「死に至ることも」(医師)

ここ10年ほど、「梅毒」の感染者が増加しているそうです。「梅毒」とはどんな病気で、感染するとどんな症状が出るのでしょうか。本記事では「梅毒」について、産婦人科医の前出 喜信先生(シュシュレディースクリニック 戸田公園 院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。

前出 喜信

監修医師
前出 喜信(シュシュレディースクリニック 戸田公園)

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日本産科婦人科学会認定専門医、日本性感染症学会認定医、日本周産期・新生児医学会周産期専門医。1997年、島根医科大学医学部(現・島根大学医学部)卒業後、島根大学医学部附属病院 産科婦人科 助教や鹿児島市立病院 総合周産期母子医療センター科長、熊本福田病院地域周産期医療センター 新生児科部長などを経て現職(シュシュレディースクリニック 戸田公園 院長)。「怖くない、痛くない、面倒くさくない」をモットーに、相談して良かったと安心していただけるような診療を日々心がけている。

梅毒を医師が説明 どんな病気? 放置しておくとどうなるの?

梅毒を医師が説明 どんな病気? 放置しておくとどうなるの?

編集部編集部

「梅毒」とはどんな病気ですか?

前出 喜信先生前出先生

性交渉で感染する「性感染症」の一つです。梅毒トレポネーマという菌が、粘膜同士の接触により感染します。感染から発症までは潜伏期間があり、感染から3週間ほど経ってから症状が出現します。

編集部編集部

映像作品の影響もあり、「昔の病気」というイメージがあります。

前出 喜信先生前出先生

そういったイメージをお持ちの方も多いと思いますが、決してそうではありません。厚生労働省の報告によると、梅毒の感染者は1967年以降減少していたのですが、2011年頃から再び増加傾向となっています。感染者は現在も増加を続けており、2019年から2020年に一旦減少しましたが、2021年以降再び大きく増加しています。2022年には1万例を超える報告があり、なお注意が必要です。

※参照:厚生労働省「性感染症 梅毒」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/syphilis.html

編集部編集部

梅毒に感染すると、どんな症状が出るのですか?

前出 喜信先生前出先生

梅毒の症状は、いくつかの病期に分類されます。初期の症状は性器、肛門や口腔内などの感染部位に、痛みのない硬いしこり(初期硬結)やただれ(潰瘍)ができ、その周辺のリンパ節が腫れます(第1期)。その後3ヶ月くらい経過すると、全身の皮膚や粘膜に発疹が出てくるようになります(第2期)

編集部編集部

そのまま進行するとどうなるのですか?

前出 喜信先生前出先生

さらに3年以上経過すると、臓器の機能障害が進行し(第3期)、感染後10年以上経つと心臓や血管、脳に影響が表れ、痙攣や意識障害をきたし、死に至る可能性もあると言われています(第4期)。

梅毒の診断、治療について医師が解説

梅毒の診断、治療について医師が解説

編集部編集部

それは怖いですね。

前出 喜信先生前出先生

そうですね。特に、妊娠中の梅毒感染は非常に危険です。妊婦さんが梅毒に感染すると胎盤を通って胎児にも感染し、死産や早産になったり、「先天梅毒」といって生まれた赤ちゃんの骨や神経、臓器などに異常をきたしたりすることがあります。

編集部編集部

若くても注意が必要なのですね。

前出 喜信先生前出先生

むしろ若い方にこそ、この病気を知っていただき、十分に注意していただきたいと思います。特に女性は、20代の感染者が突出して多いのです。男性は20〜50代の感染者が多く、決して「若いから大丈夫」ということはありません。

編集部編集部

梅毒の検査は、どのように行われるのですか?

前出 喜信先生前出先生

医療機関で、専門医による診察と血液検査を行います。血液検査で、梅毒の抗体が確認されれば、梅毒と診断されます。一部の保健所でも、検査してくれるところがあるようです。

編集部編集部

検査について、注意点などありますか?

前出 喜信先生前出先生

血液検査の結果から感染の有無を正確に判断できるよう、感染したかもしれない時期や、感染対策の有無(コンドームの使用有無など)について、説明できるように準備しておくと良いでしょう。また、パートナーにも感染の可能性がありますので、検査、そして必要に応じて治療を受けてもらうことが重要です。特定のパートナーがいる方は、当院のように、ご自身とパートナーの同時治療が可能な医療機関で相談するのをお勧めします。

実際の治療法を医師が解説 「梅毒」と診断されたらどうする? 入院の必要は?

実際の治療法を医師が解説 「梅毒」と診断されたらどうする? 入院の必要は?

編集部編集部

実際に「梅毒」と診断されたら、どんな治療をするのですか?

前出 喜信先生前出先生

薬物治療を行います。病期にもよりますが、ペニシリン系などの抗菌薬が有効で、内服治療が一般的に行われていますので、初期であれば入院の必要はありません。また近年、梅毒に対する抗菌薬の筋肉注射による治療が行われるようになりました。注射による治療のメリットは、内服のように毎日継続するのではなく、1回の注射による治療になるため、飲み忘れによる治療の中断がないことです。内服の治療にするか、注射の治療にするかは受診された医療機関で相談の上決定することになります。梅毒トレポネーマが中枢神経系に浸潤した「神経梅毒」が起こっている場合は、入院して抗菌薬の点滴治療が行われます。

編集部編集部

梅毒の治療について、注意点などはありますか?

前出 喜信先生前出先生

薬の内服期間は病期などを考慮して医師が判断しますが、大事な点は、症状が良くなっても自己判断で治療を中断しないようにすることです。症状が良くなったからといって、菌が完全にいなくなったわけではありません。医師から完治の診断が出るまでは、性交渉をはじめ感染拡大につながる行為は控えましょう。

編集部編集部

症状がなくなっても、安心してはいけないのですね。

前出 喜信先生前出先生

そうですね。さらに、医師から「完治」と言われて治療や通院が終了しても、今後の新たな感染を予防できるわけではありません。梅毒は「一度かかったら、もうかからない」というタイプの感染症ではないからです。このため性交渉の際の感染対策や、パートナーの治療などを疎かにしていると、再び梅毒にかかる可能性があります。

編集部編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。

前出 喜信先生前出先生

コロナ禍のステイホームで、性感染症も減るのではないかと期待されましたが、実際は減りませんでした。特に「梅毒」は、感染力が強く、コンドームをしていたからといって100%予防することはできない病気です。きちんと診断・治療がされていないと、さらに感染を広めてしまう可能性が非常に高くなります。性感染症の場合は、早期受診と早期の治療、およびパートナーとの同時治療を強くお勧めします。

編集部まとめ

ここ10年ほど、ほかの性感染症の感染者数は横ばいであるにもかかわらず、「梅毒」の感染者数は大幅に増えているそうです。症状が出るまでに3週間の潜伏期間もあるため、その期間に更なる感染拡大を招いていることも考えられます。早期受診と早期の治療、そしてパートナーとの同時治療がとても大切とのことでした。

医院情報

シュシュレディースクリニック 戸田公園

シュシュレディースクリニック 戸田公園
所在地 〒335-0022 埼玉県戸田市上戸田2-7-9
アクセス JR埼京線「戸田公園駅」東口より徒歩8分
国際興業バス(西川61)(西川62)(西川63)「上戸田地域交流センター」バス停より徒歩1分
診療科目 婦人科・美容皮膚科・産婦人科・漢方内科

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