基礎体温と普通の体温って何が違うの?
「基礎体温」という言葉は、女性であれば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 基礎体温は普通の体温とは違い、継続的に測定、記録することでさまざまな情報を得ることができます。しかし、測定するのは普通の体温計でもいいという話も聞きます。そこで今回は、基礎体温と普通の体温の違いや、記録する目的について、元看護師で、現在は医療系ライターとして活躍されている長田さんに解説していただきました。
監修者:
長田 さやか(看護師・医療ライター)
看護専門学校卒業後、整形外科や精神科病棟、訪問看護を経て、独立。現在は、フリーランスとして「根拠を踏まえた、わかりやすい文章」をモットーに医療系Webライターとして活動中。
基礎体温とは安静状態で測定した体温のこと
編集部
そもそも基礎体温とは何ですか?
長田さん
基礎体温とは、一定時間以上の睡眠をとったあと、起床してすぐに測定した体温のことです。起床時、体を動かさずに横になったままの状態で測定することにより、体温変動が最小限に抑えられ、基礎代謝のみが反映されます。また、女性は月経周期のホルモンによって体温が変動するため、この特性を利用し、毎日基礎体温を測定することでホルモンの分泌時期を知ることができるのです。
編集部
基礎体温と普通の体温にはなぜ差があるのでしょうか?
長田さん
食事や運動、ちょっとした日常動作でも人間の体は代謝していて、体温を上げる要因になります。さらに、体温は常に変動しており、1日中一定というわけではありません。朝から少しずつ上がり、夜になって下がり始め、その変動幅は1℃ほどあります。しかし基礎体温は、起床後すぐという「決まった時間」に「動かず」測定することで、普通の体温より影響因子が少ない体温を測定できるのです。
編集部
普通の体温計で基礎体温を測定することはできますか?
長田さん
普通の体温計での測定は、おすすめできません。基礎体温の1周期あたりの温度差は、平均して0.3~0.6℃で、とても細かい変動のため、普通の体温計では正確に測定することができません。他方、基礎体温計(婦人科体温計)は小数点第2位まで測ることができるので、正しい数値を測定することができます。また、基礎体温は原則舌下で測定しますが、普通の体温計は腋窩(脇のした)用が主流になっています。測定部位でも温度に差は生じるため、正確性は損なわれてしまいます。基礎体温を測定するときは、正しい部位で、細かな変動も把握できる基礎体温計の使用をおすすめします。
基礎体温には女性ホルモンが深く関わっている
編集部
基礎体温を継続して測定、記録することで何がわかるのでしょうか?
長田さん
月経周期や排卵の有無、女性ホルモンの分泌状態がわかります。生理日から排卵前までは低温期で、排卵後から体温が上がりはじめ、次回の生理までは高温期になります。そして、生理がくると再び低温期へという流れを繰り返し、基礎体温グラフは高・低の二相性を描きます。このグラフのリズムよって、生理や排卵、PMS(月経前症候群)がいつ頃くるのかを予測することができるのです。低温期から高温期へ移行する数日間が排卵日前後と予測され、妊娠しやすい時期の目安にもなります。一般的に、基礎体温グラフは排卵があれば二相性となり、逆に二相性になっていない場合はホルモン分泌異常の可能性も考えられます。また、体温が下がらず、高温期が17日以上継続している場合は妊娠の可能性があります。
編集部
グラフの二相性について詳しく聞かせてください。
長田さん
基礎体温グラフは、月経周期内の女性ホルモンの分泌、そのホルモンの影響による体温変動をあらわしています。排卵後に分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)は、体温を上げる働きがあります。そのため、排卵後は高温期に入ります。そのあと生理が始まると、卵胞ホルモン(エストロゲン)が優位に分泌されるため、体温を上げる黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響を受けなくなります。すると、体温が下がり始めて低温期へ突入していくのです。このように、女性はホルモンの影響により生理周期の中で体温に変化が生じます。そのため、これらのホルモンが正常に分泌されていれば基礎体温グラフは二相性になるという仕組みになります。
編集部
グラフが二相性になっていない場合、どういった原因が考えられますか?
長田さん
体温が上がらずグラフが横ばいの場合、「無排卵」が考えられます。排卵が起こっていない場合は黄体ホルモンの分泌が増加しないため、体温が上がらずグラフが一相性になります。そのほか、高温期が短かったり、高温期の中で体温の陥落があったりと、きれいな二相性になっていない場合は「黄体機能不全」が考えられます。しかし、教科書のようなきれいな二相性になっていなくても、医師が見れば二相性になっていることも多くあります。また、グラフから「排卵している」と予測することはできても、基礎体温のみで「排卵日を特定」することは困難です。グラフは目安と捉え、気になることがあれば医師に相談、または血液検査をうけると確実です。
基礎体温は継続して記録していくことが大切
編集部
どれくらい継続して基礎体温を測定する必要がありますか?
長田さん
数週間~1か月程度では自分の周期パターンを完全に把握することはできません。1周期目は何らかの影響で二相性になっていない場合もあるため、まずは2〜3周期は継続して測定し、自分の平均的な周期パターンを観察してみましょう。
編集部
測定し忘れてしまった日があった場合はどうすればいいのでしょうか?
長田さん
次の日から再スタートすれば特に問題ありません。気にし過ぎは逆にストレスになり、気負いすぎると継続自体が苦痛になってしまうこともあります。基礎体温の記録は「継続すること」が大切ですので、細かいことは気にしないようにしましょう。
編集部
基礎体温を測定するときの注意点はありますか?
長田さん
起床時、起き上がる前に測ることが基本になります。そのためにも、基礎体温計は枕元に置いておくといいでしょう。体勢は横になったまま、口を閉じた状態で「舌下」で測ります。基礎体温における影響因子としては、「寝不足」があげられるため、最低でも4~5時間以上の睡眠をとる必要があります。また、できるだけ同じ時刻に測定することで、より正確性が高まります。
編集部
最後に読者へのメッセージがあれば。
長田さん
基礎体温を測る一番のメリットは、自分の体を知ることができるという点です。あらかじめ生理やPMSの時期を予測することで、早めのケアも可能になります。基礎体温表を記録し続けると「二相性になっていないかも」「変なグラフなんじゃないか」と、気になることも出てくるかと思います。その際は、一人で不安を抱え込まず、医師に相談してみましょう。
編集部まとめ
基礎体温とは「普通の体温」と違い、女性ホルモンの状態を知るために測定する体温ということが分かりました。継続して記録することで自分の体のリズムを把握し、より自分の体を理解することができます。グラフが二相性にならないなどの気になることがある場合は、まずは医師に相談することをおすすめします。