【漫画付き】血便や便秘が続くのは大腸がんのサインってホント?
監修医師:
寒河江 三太郎(厚木胃腸科医院 院長)
北里大学医学部卒業後、国際親善総合病院での研修を経て慶應義塾大学一般・消化器外科教室に入室。その後、稲城市立病院、平塚市民病院、慶應義塾大学病院で消化器疾患を中心に幅広くキャリアを積み、2015年に父が院長を務める「厚木胃腸科医院」を継承。地域のかかりつけとして一般外来をおこないながら、「厚木から胃や腸のがん患者をゼロにしたい」という思いのもと、専門分野である内視鏡による胃がんや大腸がんの早期発見・早期治療に尽力している。日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本禁煙学会認定指導医。
進行大腸がんの症状として便に影響が出ることも
先生それらの症状がみられたからといって、ただちに「大腸がんである」とは言い切れません。ただし、大腸がんの症状として出ることはあります。進行度でいうとステージⅡ以上の状態にあたりますので、同じ症状がずっと続いているのであれば、早急に大腸内視鏡検査を受けることが望ましいでしょう。
先生まず、大腸癌研究会がまとめた「大腸がんのステージ分類」という資料がありますので、参考にしてみてください。
進行度 | 転移 | がんの状態 |
---|---|---|
ステージ0 | なし | 大腸の粘膜の中にとどまる |
ステージⅠ | なし | 大腸壁の筋肉の中にとどまる |
ステージⅡ | なし | 大腸壁の外まで進む |
ステージⅢ | あり | リンパ節に転移が認められる |
ステージⅣ | あり | 他の臓器にも転移が認められる |
※大腸がんのステージ分類(出展・大腸癌研究会)
このうち、「ステージ0」や「ステージⅠ」といった初期の段階では、ほとんど症状が見られません。大腸がんが進行していくに従って、徐々に血の混ざった便や血そのものの排せつ、便秘や下痢、おなかの痛み、細い便などの変化が生じます。
先生繰り返しになりますが、初期の大腸がんは症状が出にくいので、その進行に気付きにくいことです。「血便」「便秘」「下痢」のようなサインが見られたら、すでに初期の段階を通り越しているかもしれません。早めに専門医院で検査を受けてほしいですね。
先生大腸がんは、早期に発見ができれば完治を期待できる病気です。転移の起きていない「ステージⅡ」までなら、手術による完治が望めます。むしろ、この段階までに治療を受けることが大切です。ですから、便の変化には気をつけてください。
先生国立がん研究センターでは、がん治療を受けた患者さんの追跡調査を行っています。それによると、「ステージ0」「ステージⅠ」の患者さんなら99%以上、「ステージⅡ」でも95%以上の患者さんが、治療を受けて5年以上生存しています。このことから、がんの発見が必ずしも「怖いこと」とは言えなくなってきていると思います。早期発見を心がけ、「ステージⅡ」のうちに完治を目指しましょう。
毎日のお通じから、自分の体調を知る
寒河江
先生その通りです。大腸に何らかの疾患が出た場合、便の細さ、便の色、下痢、便秘といった変化が現れます。便の細さは大腸の収縮など、便の色は出血、下痢や便秘はストレスをはじめとしたさまざまな原因によって生じるのです。
寒河江
先生消化器官の壁に腫瘍ができると、便とこすれて出血することがあります。その場合の便の色は、見た目にも鮮やかな赤い色をしていたり、時間がたって黒ずんでいたりします。また、見た目ではいつもどおりでも、検査をして血便だとわかることがあります。
ただし、血便は痔と間違えられることがあるので、注意してください。また、大腸がんや腫瘍の場合、便の排出が終わった後、時間をずらして単独で肛門から血が出ることもあります。いずれにしても、便の色が変化したり下血を伴ったりしたら、医師の診察を受けてみることが大切です。
先生便秘そのものには、明確な定義がありません。ただし我々医師は、ご本人が便の不調などで不快に思われることを「便秘症」と呼んでいます。例え3日間便が出なくても、ご本人が平気なら「便秘症」とはいえないわけです。
先生結論から申しますと、明確な因果関係は示されていません。ただし、安心は禁物です。大腸がんによって便秘が生じているケースは、実際に見受けられます。便秘に限らず、今までと違った便が出始めたら要注意です。
市販薬に頼りすぎるとかえって危険
先生実は、そこが盲点なのです。例えば肛門から血が出たとしましょう。このとき、大腸がんかもしれないのに痔と勘違いして市販薬に頼ると、がんの進行を許してしまうことになります。また、お薬に含まれるステロイドが、かえって腸内の炎症を引き起こすこともあるのです。
先生考えられるのは、下剤がないと便を出せなくなることです。お薬への頼りすぎが、腸の働きをかえって弱めてしまうんですね。その結果、大腸メラノーシスという別の病気を引き起こすこともあります。
先生大腸の精密検査、とくに大腸の内視鏡検査を受けたほうがいいと思います。初期の大腸がんなら完治が期待できますし、仮にがんではなかったとしても、そのこと自体が安心材料になるでしょう。どちらの結果だったにせよ、検査がムダになることはないと思います。
早期発見の鍵は、大腸内視鏡検査
先生最大の特徴は、早期発見、早期治療開始によって平素の状態へ戻れることです。大腸内視鏡検査は熟練した医師が行えば、決して苦しい検査ではありません。カメラを通して大腸の中を直接見るので、バリウムなどの“影を見る”検査よりも確実です。
先生まずは費用から。医院によっても異なると思いますが、検査だけなら、健康保険の3割負担を前提に1万円前後といったところでしょうか。大腸がんの原因となるポリープの摘出を伴ったとしても2万円から3万円前後です。時間に関しては日帰りが可能で、検査は20分程度で終了します。
寒河江
先生便秘症で悩んでいる方に対しては、1日1回ラジオ体操をする程度の運動、水分をしっかり取ること、トイレに座る習慣づけなどのアドバイスをしています。食事に関しては、やはりバランスが大切です。便秘に良いとされる食物繊維であっても、取りすぎると、便のボリュームが大きくなってしまいます。おなかが苦しくなったり、肛門から出にくくなったりするかもしれません。
先生もちろんあります。定期的な検査を受けることで、大腸ポリープや進行性のがんの発見が早期にできるからです。大腸がんは症状が出にくいので、可能であれば症状が出る前に、定期的な検査をお勧めします。
編集部まとめ
便の調子が良くない、ゆるい・硬い、便秘気味。こうした症状の変化は誰にでも起こり得ることでしょう。それだけに、慣れてしまったり市販薬に頼ったりしてしまいます。しかし、それでは何の解決にもなりません。もしかしたら、命に関わる疾患を抱え続けているのかもしれないのです。
便の様子がいつもと違い、その状態が続くようなら、早急に精密検査を受けてみましょう。内視鏡検査は、いずれの結果が出ても空振りに終わらず、メリットを享受できます。万が一の場合でも完治を目指せますし、他方、健康であることのお墨付きがあれば安心して生活できるのではないでしょうか。
医院情報
厚木胃腸科医院
電話番号 046-223-1155
住所 神奈川県厚木市妻田南1-16-36
アクセス 本厚木駅北口1番乗り場から約7分「木売場(きうりば)」下車すぐ
診療時間
【月・水】9:00~12:00 15:00~19:00
【木~土】9:00~12:00 15:00~17:00
休診日 火曜・日曜・祝日
診療内容
内科・消化器科・内視鏡検査