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眼瞼下垂はトレーニングで改善できる?トレーニング方法や改善できない場合の対処法・手術に保険適用できるのかも詳しく解説します

 更新日:2023/12/19
両目を指差す女性

眼瞼下垂は様々な要因でまぶたが下がり、見えにくくなってしまう病気です。眼瞼下垂には大きく分けて先天性眼瞼下垂、後天性眼瞼下垂、偽眼瞼下垂の3つがあります。

後天性の場合は加齢による眼の筋力の低下がほとんどですので、トレーニングをすることで改善できると考える方も多いです。トレーニングで改善できるのであれば、治療費もかかりませんし手術を受ける必要もありません。

本記事ではトレーニングが眼瞼下垂にどの程度効くのか、どのようにトレーニングをすればいいのかなど、眼瞼下垂に効果的なトレーニング方法をご紹介しています。

とはいえ、トレーニングが有効な症状もあればあまり効かない症状もありますので、本記事を参考に医師への相談も検討してみてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

眼瞼下垂はトレーニングで改善できる?

疑問を浮かべる女性
眼瞼下垂はまぶたを開く働きをする眼瞼挙筋という筋肉をトレーニングをすることで悪化を防ぐのを期待できます。
重度の眼瞼下垂や生まれつき眼瞼下垂である場合はトレーニングで改善することは非常に難しいです。
しかし、筋肉の衰えはじめや軽度の眼瞼下垂であれば毎日少しでもトレーニングをすることで改善が期待できるでしょう。
ですが、根本的な改善をするには手術をすることが一般的です。
ご自身でトレーニングをして改善しようと努力することも大切ですが、トレーニングを始める前にも医師へ相談しましょう。

「眼瞼下垂」とは?

目尻を持ち上げる女性
眼瞼下垂は眼を開く筋肉や腱膜が弱ることで、まぶたが垂れ下がり見えにくくなってしまう病気です。
見えにくさだけでなく、肩こりや頭痛、疲れなどの症状に発展する場合があります。
眼瞼下垂は大きく先天性眼瞼下垂後天性眼瞼下垂偽眼瞼下垂の3つに分類できます。
先天性眼瞼下垂はその名の通り、生まれつきまぶたが開きにくい状態です。
後天性眼瞼下垂は、これまで開いていたまぶたが徐々に下がってきてしまい、開きにくくなってしまっている状態を指します。
偽眼瞼下垂は本当は眼瞼下垂ではありませんが、様々な原因で眼瞼下垂のようにまぶたが垂れ下がって見えてしまう状態です。
症状によって手術方法やトレーニングの可否が変わるため、まずは医師に相談するようにしましょう。

まぶたが開く仕組み

左目のアップ
まぶたを開くには様々な筋肉が関与しますが、主に上眼瞼挙筋ミュラー筋の2つが収縮することで開きます。
上眼瞼挙筋は動眼神経で支配されており、筋肉部分と薄い腱膜部分に分かれていることが特徴です。
この上眼瞼挙筋が収縮することで上眼瞼挙筋の腱膜部分に力が伝わり、瞼板という板状の組織が腱膜部分に引っ張られて持ち上がり、まぶたが開くという仕組みになっています。
ミュラー筋は瞼板と上眼瞼挙筋の間にある筋肉で、交感神経によって支配されているため、自身の意思ではコントロールができません。
交感神経は興奮状態で緊張するため、日中など起きている時間帯では交感神経が刺激されてミュラー筋が収縮し、まぶたを開くことができます。
食後など、交感神経の緊張が低下するタイミングではミュラー筋が収縮せず、まぶたが下がってきてしまいます。

眼瞼下垂の原因

桜の背景で考える女性
前述した通り、眼瞼下垂は先天性眼瞼下垂、後天性眼瞼下垂、偽眼瞼下垂の3つに分類されます。
先天性眼瞼下垂はまぶたを上げ下げする役割を担う上眼瞼挙筋の発達異常や、上眼瞼挙筋を動かす神経の発達異常が原因と考えられており、手術なく改善することは難しいでしょう。
後天性眼瞼下垂は加齢によるものがほとんどですが、コンタクトレンズやメイクなど、様々な要因で発症しやすいことがわかっています。
偽眼瞼下垂は眉下垂やまぶたの皮のたるみなど、様々な要因で眼瞼下垂のように見えてしまう状態です。
偽眼瞼下垂のように、眼瞼下垂のように見えてそうではない場合もありますので、自身の判断でトレーニングを始めるのではなく、まずは医師の診断を受けるようにしましょう。

上眼瞼挙筋を鍛えると効果的

眼瞼下垂はまぶたを開く際に最も大きく貢献する上眼瞼挙筋を鍛えることが効果的です。
先天性眼瞼下垂のように、生まれつき上眼瞼挙筋が発達していない場合は改善することは難しいです。
しかし、加齢などによる後天的眼瞼下垂の場合はトレーニングなどをして悪化させないようなケアをすることが大切になります。
しかし、トレーニングで眼瞼下垂の改善が見られなくても、筋力の有無で施術内容が変わる場合もあります。
上眼瞼挙筋の筋力アップをすることで得られるメリットもありますので、医師と相談をしたうえでチャレンジしてみるもの良いでしょう。
なお、ミュラー筋は交感神経によって支配されているため、意図的にコントロールすることができません。
ミュラー筋を鍛えることは難しいため、眼瞼下垂の改善には上眼瞼挙筋をトレーニングすることが一般的です。
また、眼瞼下垂を改善する方法としてまぶたのマッサージをすることも挙げられますが、まぶたを強くこすることは逆に眼瞼下垂を悪化させてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
トレーニングを始める前にも、医師と相談してご自身の目の健康状態や症状を考慮してトレーニングする必要があります。

上眼瞼挙筋が衰える理由

考える緑の服の女性
上眼瞼挙筋が衰える理由には様々ありますが、主な理由は加齢です。
加齢とともに上眼瞼挙筋が衰えることが一般的で、ハードコンタクトレンズの使用やメイク、神経障害や眼疾患などの一部の疾患でも上眼瞼挙筋を損傷してしまう可能性があります。
ここでは、上眼瞼挙筋が衰える2つの主な理由について紹介していきますので、対策できるところはしっかりと対策をして筋肉の衰えを少しでも抑える工夫をしましょう。

加齢

上眼瞼挙筋が衰える一番の理由は加齢です。
上眼瞼挙筋に限らず、ほとんどの筋肉に当てはまりますが、筋肉は年齢を重ねるごとに衰えていきます。
加齢によって上眼瞼挙筋が衰え、まぶたを開く力が弱まっていくことで眼瞼下垂になりやすくなってしまうため、日頃からケアをすることが大切です。
同時に、皮膚も弛緩して脂肪が増加によって、まぶたが重くなり、上眼瞼挙筋の働きを妨げる可能性もあります。

スマホやパソコンの影響

スマートフォンやパソコンの画面を長時間見ることで、目の周辺やまぶたの筋肉に悪影響を及ぼします。
目を酷使し、緊張や疲労などの影響を受けると上眼瞼挙筋が衰え、まぶたが垂れ下がってくる可能性が高まってしまうでしょう。
デスクワークの際も適度に休憩を取ったり、スマホの長時間使用を避けるなどして、できる限り目を休ませてあげることで眼瞼下垂の予防に繋がる可能性があります。

眼瞼下垂のトレーニング方法

こちらを見てパソコンを触る医者
ここからは上眼瞼挙筋を鍛えるトレーニング方法についてご紹介していきます。
以下の方法で毎日少しでもトレーニングによって上眼瞼挙筋の筋力アップが期待できますので、ぜひ今日から実践してみてください。

  • 目を閉じた状態からまぶたを上に持ち上げる運動(10秒×5回)
  • 目を開けた状態で、さらに眼を大きく開く運動(10秒×5回)
  • 目を閉じて、目を左右に動かす運動(10秒×5回)
  • 目を開けた状態で、目を上下に動かす運動(10秒×5回)

上記の運動を毎日繰り返し行うことで、上眼瞼挙筋の筋力アップが期待できるでしょう。
ただし、眼瞼下垂の症状の重さによっては上眼瞼挙筋のトレーニングを行っても効果がない場合があります。
眼瞼下垂は本来であれば手術をして改善するものですので、トレーニングを始める前にも必ず眼科医に相談し、健康上の問題がないことを確認してからトレーニングを始めるようにしましょう。

トレーニングの効果が感じられないときは

絶望する男性
眼瞼下垂は、軽度のものであればトレーニングでの改善が期待できることもありますが、先天性の眼瞼下垂や眼瞼下垂になってしまった原因によってはトレーニングで改善できないことがほとんどです。
実際に、多くの眼瞼下垂は手術をして治療をします。
もし、トレーニングをしてみて効果がないと感じたときは、すぐに医師に相談しましょう。
眼瞼下垂は種類や症状の重さによって施術が大きく変わってくるため、ここからは眼瞼下垂を改善する手術の方法についてご紹介していきます。

皮膚の切除

皮膚の切除は目のすぐ上の重瞼部と眉毛下の2つの部位の切除をする方法があります。
重瞼部の切除は挙筋前転法という手術と同時に施術できることや傷が目立たないことがメリットとして挙げられます。しかし、見た目の変化が大きく、皮膚が厚い方には不向きなのがデメリットです。
眉毛下の切除は皮膚が厚くても切除ができることや、施術前と目元の変化が少ないことがメリットです。しかし、重瞼部の切除と比べると傷跡が目立ちやすいため、見た目を気にする方であれば注意が必要です。

挙筋前転法

挙筋前転法はまぶたを切開し、離れてしまっている瞼板と上眼瞼挙筋の腱膜部分を縫合する治療方法です。
上眼瞼挙筋の腱膜部分が瞼板から外れている場合、筋肉の機能が発揮できなくなってしまいます。
挙筋前転法を行うことで、上眼瞼挙筋の働きがよくなってが開きやすくなるでしょう。
皮膚を切る必要があるため、重瞼部の皮膚の切除手術と組み合わせて行われることがあります。

筋膜による吊り上げ

筋膜による吊り上げは前頭筋吊り上げ術と言われ、重度の眼瞼下垂に対して行う手術になります。
おでこの筋肉とまぶたの瞼板を、特定の介在物によって連結させる治療法で、眼瞼挙筋の筋力が大幅に低下している重度の眼瞼下垂の方に施される治療法です。
介在物はゴアテックス(人工の糸)や太ももの筋膜などを移植して介在物として利用します。
ゴアテックスの本数や筋膜の移植に関しては症例によって異なります。
また、術後は少なからず眼を閉じることが困難になりますので、医師と相談をしてリスクとメリットを理解した上で検討するようにしましょう。

眼瞼下垂の手術は保険適用できる?

保険証
眼瞼下垂と診断された場合は保険適用が可能です。
ただし、非常に軽度と診断されたり、美容目的と診断されたりした場合は自費診療となることもあります。
保険適用になるかどうかの判断基準は以下のようなものがあります。

  • 日常生活に支障をきたすか
  • 眼瞼下垂特有の症状があるか

上記に当てはまる場合はほとんどが保険適用となります。
しかし、まぶたの形や幅を自分の好きなように形成するなどのオプションをつけると自費診療になる場合がありますので、医師としっかり相談しましょう。

眼瞼下垂を予防する方法

患者に説明する眼鏡の医師
眼瞼下垂が発症してしまう原因は主に加齢による皮膚の弛緩やまぶたの筋肉の力が低下してしまうことですが、それ以外にも発症してしまう原因はあります。
まぶたに慢性的な刺激を与え続けたり、腱が損傷したりしてしまうことが発症の原因になりますが、それは日常生活をしていく中で意識をすればある程度予防ができるものです。
ここからは加齢の他にも眼瞼下垂が発症してしまう原因とその予防方法について解説していきます。
眼瞼下垂を発症させないためにも、日常生活の中で意識していきましょう。

まぶたをこすらない

瞼をこする女性
眼瞼下垂を発症する原因は主に加齢によるまぶたの筋力の低下ですが、慢性的な刺激による腱の損傷も原因として挙げられます。
まぶたをこすってしまうことは慢性刺激のひとつとなり、こすり続けると腱が損傷してしまいます。
特に花粉症の方などはかゆみからまぶたをこすってしまうことが多いため、目薬などを使用してまぶたをこすらないようにする工夫が必要です。

アイメイクをしすぎない

アイメイクをした両目
眼瞼下垂を予防するためには過度なアイメイクをしすぎないことも大切です。
アイメイクを落とすためにクレンジングで目を強くこすったりすることが刺激となり、腱が損傷する原因となってしまいます。
比較的落ちやすいメイク道具に変えたり、メイクそのものを変えてみたりするなどして、まぶたに負担がかからないようにする工夫が必要です。

ハードコンタクトを使用しすぎない

コンタクトケース
眼瞼下垂を予防するためには、コンタクトレンズを使用しすぎないようにすることも大切です。
コンタクトレンズも慢性刺激のひとつとなり、まぶたを上げる筋肉の力は正常であることが多いですが、腱膜の部分が弱くなってしまったり、剥がれたりしてしまうことが原因と考えられています。
特にハードコンタクトレンズを長期的に使用している方は眼瞼下垂になりやすいため、メガネとコンタクトレンズを使い分けたりする工夫をしていきましょう。

編集部まとめ

振り返る看護師
本記事では眼瞼下垂の概要からトレーニング方法、眼瞼下垂を予防するための方法について解説しました。

すでに重度の眼瞼下垂になってしまっている場合は手術で改善をすることがほとんどですが、軽度の眼瞼下垂であれば自身で目の筋肉のトレーニングをすることで悪化を防ぐことができる可能性は高まります。

しかし、症状によってはトレーニングの効果が現れないこともありますので、トレーニングをする前に医師にしっかりと相談しましょう。

目の健康状態や症状をしっかりと把握したうえでトレーニングに励みましょう。

この記事の監修医師