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更年期障害の治療方法は?受診する科や治療にかかる費用・副作用・いつまで続けるのかも解説

 公開日:2024/04/12
更年期障害 治療

加齢とともに女性であれば誰もが経験する更年期、そのなかで日常生活に支障が出る程の症状を更年期障害といいます。

更年期障害は治療によって解決が可能です。そこで本記事では、更年期障害に悩む方に向けて以下の5つを解説します。

  • 更年期障害の治療方法
  • 受診する科
  • 治療にかかる費用
  • 治療の際の副作用
  • いつまで治療を続けるか

更年期障害を治したい方はぜひ参考にしていただき、適切な治療を受けるようにしましょう。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

プロフィールをもっと見る
筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

更年期障害の治療方法

カウンセリング
更年期障害の治療方法には以下の4つが挙げられます。

治療の主な目的は、女性ホルモン(エストロゲン)の低下を抑制して身体への悪影響を防ぐことです。
ホルモン補充療法HRT)によるエストロゲンの補充を中心に、症状に合わせてプラセンタ注射漢方療法・抗うつ剤などの治療法を行うとよいでしょう。

ホルモン補充療法

ホルモン補充療法HRT)とは、減少したエストロゲンを補充する治療法です。更年期障害の症状の中でも、のぼせや発汗などに対して効果が期待できます。
投与には次の3種類があります。

  • 経口薬
  • 貼付薬
  • 塗布薬

経口薬は飲み薬を服用しますが、胃腸から吸収され肝臓を経由して血液中に入るため、胃腸や肝臓に負担がかかる場合があります。
貼付薬・塗布薬は、皮膚から直接吸収され血液中に入るため、経口薬より胃腸や肝臓にかかる負担は少ないでしょう。
しかし、皮膚の状態によってはかゆみ・かぶれなどの症状が表れる場合があるため注意が必要です。
またエストロゲンだけでは子宮内膜増殖症のリスクが高まるため、子宮を摘出した方には黄体ホルモンが併用されます。それぞれ投与法は以下のように異なります。

  • 子宮のある方:エストロゲン・黄体ホルモン併用療法
  • 子宮を摘出した方には:エストロゲン単独療法

ホルモン補充療法には多くの投与法があるため、事前に医師と相談し、ご自身の身体に合った投与法を行ってもらいましょう。

プラセンタ注射

注射器と薬
プラセンタ注射とは、胎盤から栄養素や成長因子を抽出して体内に注入する治療方法です。
プラセンタ注射にはさまざまな有効成分が含まれているため、更年期障害の症状の改善・疲労回復・美肌効果といった効果が期待できます。
胎盤から抽出された成分は自然由来の原料のため副作用がほとんどなく、内服薬より即効性が高いのが特徴です。
しかし、生体由来のため感染症の可能性があることから、特定生物由来製薬に指定されています。
したがって、プラセンタ注射の経験がある方は、献血が行えない、臓器提供の制限を受けるため注意しましょう。

漢方療法

漢方療法は、ホルモン補充療法HRT)が受けられない方や身体ともに不調を感じる方に適した治療法です。
漢方療法には、以下の婦人科三大処方とよばれる漢方薬を中心にさまざまな処方があります。

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
  • 加味逍遥散(かみしょうやくさん)
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがさん)

「当帰芍薬散」は、体力が低下して、冷え症・むくみ・腸が弱いといった貧血傾向がある方に適した漢方薬です。ホルモンバランスを整えて、全身を温めてくれる効果が期待できます。
「加味逍遥散」は、体力が中程度以下で疲れやすく、イライラ・不安感・不眠など精神的に不安定な方に適した漢方薬です。気の巡りを改善し、不安定な精神を正常に戻す作用が期待できるでしょう。
「桂枝茯苓丸」は、体力があり血色もよいが、肩こり・頭痛・めまいや特に下腹部に痛みや便秘などの症状がある方に適した漢方薬です。
3つの漢方薬でもっとも血液の巡りを良くする効果が高く、体内の水分調整を改善したい場合に適した処方といえるでしょう。

抗うつ剤などによる治療

意欲の低下や不眠といった精神不安定の症状が強い方は、抗うつ剤などの治療を検討しましょう。
抗うつ剤には、脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の減少を改善する効果があります。
抗うつ剤治療には以下のような阻害薬が用いられます。

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

脳内の神経伝達を改善し、意欲の向上や精神的不安を和らげる効果が期待できるでしょう。
抗うつ剤だけでは症状が安定しない場合、抗不安薬や睡眠薬も併用する場合があります。
また抗うつ剤は治療を受けてから効果が現れるまで2週間程かかるため、即効性はありません。そのため、効果が出ないからといって服用は中止しないようにしましょう。
抗うつ剤には、吐き気・嘔吐・頭痛・イライラといった副作用が生じるケースがあります。もし副作用が現れた場合には、担当医に相談し適切な処置を行ってもらいましょう。

更年期障害の原因

医師
更年期障害の主な原因は、閉経により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に低下することが挙げられます。
閉経とは、月経が来ない状態が12ヵ月以上続く状態です。日本人の平均閉経年齢は約50歳で、閉経前と閉経後を合わせた約10年間が更年期です。
更年期の中で、日常生活に支障が出る程の重い症状が表れる状態を更年期障害といいます。
更年期によってエストロゲンの分泌量が低下すると、脳から卵巣へエストロゲンを分泌するよう指令が送られます。
しかし、指令によって周囲の脳に不要な興奮作用を与えてしまい、自律神経が乱れることで心身ともに不調をきたしてしまうのです。

更年期障害の症状

悩む女性
更年期障害の症状としては主に以下のような症状が表れます。

  • ホットフラッシュ
  • 肩こり
  • 頭痛
  • めまい
  • 動機・息切れ
  • 疲れやすい
  • 眠れない

更年期障害には上記以外にもさまざま症状があり、なかには重い病気に発展するものもあるため注意が必要です。自己で判断せずに、病院で適切な診断を受けるようにしましょう。

ホットフラッシュ

のぼせ・ほてり・発汗などの症状をまとめてホットフラッシュといい、更年期障害の代表的な症状の一つです。
ホットフラッシュは、エストロゲンの減少により血管の収縮・拡張をコントロールしている自律神経が乱れることで発症します。
発症した際には、刺激物を避け、涼しい部屋で休むようにしましょう。

肩こり

肩こりの女性
更年期に肩こりがひどくなる方も多いようです。肩こりは、肩甲骨から首の筋肉が緊張し、疲労物質が溜まるのが原因で生じます。
更年期に肩こりがひどくなる方は、自律神経の乱れによる血流の悪化が考えられるでしょう。血流の悪化には、ストレッチ・適度な運動・入浴などが効果的です。

頭痛

頭痛は女性に特に多くみられる症状ですが、更年期を境にさらに悪化する場合があります。
更年期にみられる頭痛は、エストロゲンの減少によって脳血管が痙攣・縮小し、頭だけでなく、うなじや肩こりなどの症状も引き起こすとされています。
複数の症状が重なり、日常生活に支障をきたすようであれば、医師に相談し適切な処方を行ってもらいましょう。

めまい

めまいは、低血圧や貧血の方にみられる症状ですが、特に更年期の女性に多くみられるでしょう。
エストロゲンの分泌が急激に減少して自律神経が乱れることで、めまいのほかに耳鳴りなどの症状も表れます。
さらに、めまいの症状の裏に高血圧や突発性難聴などの重い病気が隠れているケースがあるので、長期に渡って症状が続く場合は病院で検査を受けましょう。

動悸・息切れ

激しい運動をしたわけでもないのに、突然動悸や息切れを起こす場合があります。これは更年期を境にエストロゲンが減少することによる、自律神経の乱れが原因です。
急に動悸や息切れを感じたときには、まずは深呼吸をして呼吸を整えましょう。自律神経のバランスが良くなり、気持ちが落ち着きます。
また、ラベンダーの香りには気持ちを和らげるリラックス効果があるとされているため、室内にラベンダーの香りを取り入れてみるのもよいでしょう。

疲れやすい

意欲が湧かない・疲れやすいといった精神的症状もエストロゲンの減少からくる自律神経の乱れが原因です。
更年期の方は心理的に不安定で生涯の中で最もストレスを受けやすい時期といわれています。そのため、心身の疲労から疲れや意欲の低下が起こりやすいでしょう。
疲れやすさを感じたら、ウォーキングやヨガといった有酸素運動が効果的です。また、女性ホルモンの減少をサプリメントや健康食品で補うのもよいでしょう。

眠れない

更年期のエストロゲンの減少により、夜間にほてりや発汗といった神経系の異常が起こることで睡眠が妨げられます。
周囲の環境やストレスから、うつや不安感といった精神的症状によって不眠が生じる場合もあります。
眠れないことによって睡眠時間が短くなり、生活リズムが乱れやすくなるため、規則正しい生活の維持が大切です。
夜中に目が覚めてしまう方は、就寝時間を遅らせて、朝一定の時間に起きるようにしましょう。朝陽を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠の質が向上します。
また、就寝前はアルコールやカフェインなどの摂取を控え、リラックスした状態を心がけましょう。

更年期障害の治療は何科を受診する?

カウンセリング
更年期障害の治療には、一般的に婦人科を受診するとよいでしょう。
更年期以降には骨粗しょう症・排尿障害・脂性異常症といった生活習慣病に悩まされる方も少なくありません。
心配な方は、骨密度・コレステロール値・乳がん・子宮がんなどの検査を定期的に受けておくとよいでしょう。
また、更年期障害の重い症状に悩む方には、更年期に理解の深い「更年期外来」や女性の身体に精通した「女性外来」への受診もおすすめです。
更年期障害の症状と確信していたら、実はほかの病気だったというケースも考えられるため、できるだけ幅広い症状に対応した科を受診しましょう。
ご自身の症状や相談に親身になって考えてくれる医師をみつけることが、治療の近道になります。

更年期障害の治療にかかる費用

病院の医療費
更年期障害の治療として45歳~59歳の女性の方は、保険が適応されるため、検査費用は3,500円~5,000円程度が多いようです。
詳細な治療費に関しては受ける治療方法や医療機関によって料金が異なります。受診する各医院で事前に確認しましょう。
診察や検査内容によっては別途費用がかかります。1月〜12月までの医療費が10万円を超えた場合には、医療費控除の対象になるため覚えておきましょう。

更年期障害の治療に副作用はある?

考える女性
更年期障害の治療を受けるにあたり、副作用があるのか気になるところです。
更年期障害の治療法の一つであるホルモン補充療法を受ける際に、注意しておきたい副作用として以下の2つがあります。

  • 血栓症のリスクがある
  • 乳がんの発症率が上がる

治療を受ける前にそれぞれの症状と注意点を確認しておきましょう。

血栓症のリスクがある

血栓症は、血管内に血の塊ができてしまい、血流が止まってしまう病気です。エストロゲンには血をかたまりやすくする作用があるため、血栓症のリスクが高まります。
また、固まった血栓が血流にのって肺血栓塞栓症を引き起こす可能性もあります。治療を始めてから1年以内が最も起こりやすいです。
ふくらはぎの痛み・熱感・発赤などの症状が出た場合には、すぐにかかりつけの医師に診断してもらいましょう。

乳がんの発症率が上がる

5年以上にわたり、更年期障害の治療の1つであるホルモン補充療法HRT)を継続すると、乳がんの発症率が上がるとされています。
ですが、定期的に乳がんの検査を受診することで、5年以上治療を継続することも可能です。血縁者に乳がんの発症経験者がいる場合、遺伝で乳がんになるケースもあります。
乳がんは女性が最も罹りやすい癌です。そのため、定期的に乳がんの検査を受診するようにしましょう。

更年期障害の治療はいつまで続ける?

点滴
更年期障害の治療期間に関しては、ホルモン補充療法HRT)の投与継続を制限する一律の年齢や期間はないとされています。
治療を受ける当人がリスクについても理解したうえで、治療を継続するようであれば、継続可能です。
一方で、「身体に合わない」「効果が感じられない」といった場合には途中で止めることもできるので、担当の医師と相談して治療期間を決めましょう。

編集部まとめ

笑顔の女医
更年期障害の治療方法・受診する科・治療費・治療の副作用・治療期間について解説しました。

更年期障害は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に低下することで発症します。

治療方法は以下の4つです。

ホルモン補充療法HRT)をメインに症状によってほかの3つの治療法を変えるのがよいでしょう。

更年期は年を重ねれば、誰もが経験する周期です。つらい症状が続く場合は、我慢せずに婦人科での検診をおすすめします。

本記事が更年期障害に悩む方の参考になれば幸いです。

この記事の監修医師