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女性のホルモンバランスが乱れると起きることを解説|ホルモンバランスを整える方法やホルモン補充療法の効果・副作用も説明します

 公開日:2024/05/15
女性 ホルモンバランス

女性は小児期〜老年期に渡るライフステージに併せて身体にさまざまな変化が現れます。そのときどきの変化には、ホルモンバランスが関係しているといっても過言ではありません。

本記事ではホルモンバランスが乱れると起きることや、ホルモンバランスを整える方法やホルモン補充療法の効果・副作用について詳しくご紹介します。

今起こっている身体や心の不調は、決して気のせいではありません。何か悩んでいる症状がある方は、女性のホルモンバランスについて注目してみてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

女性のホルモンバランスが乱れるとどうなる?

?マークと女医
女性のホルモンバランスが乱れるときにみられる症状について4つみていきましょう。
女性のホルモンバランスは常に一定ではなく、年齢や月経周期に合わせて変化します。
ホルモンバランスが乱れると身体や精神状態に何らかの症状が現れ、症状が重くなると日常生活に悪影響を及ぼす可能性もあります。

月経不順になる

生理(イメージ)
無理なダイエット・ストレス・更年期前など、ホルモンバランスが乱れる影響を受けると月経不順になる可能性があります。
月経周期に個人差はありますが正常な周期は25〜38日と定義され、周期変動は6日以内、月経持続日数は3〜7日の状態です。この周期の目安に当てはまらない場合、月経不順が考えられます。
月経は女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)によってコントロールされ、2つのホルモンの分泌は視床下部・脳下垂体・卵巣・子宮が連携して行い、正常に機能しているときに月経が開始されます。
しかし、どれか1つの器官が異常を起こし機能していないとホルモンが分泌されず、月経不順が起こる要因になるのです。
月経不順にはいくつかの種類があります。

  • 原発無月経:18歳すぎても一度も月経のない状態
  • 続発性無月経:前回の月経から3ヵ月以上経っても月経が来ない状態
  • 頻発月経:月経周期が24日以内の状態
  • 稀発月経:月経周期が39日以上、3ヵ月以内の状態
  • 過長月経:月経期間が8日以上続く状態
  • 過下月経:月経期間が2日以内に終わる状態

この内とくにホルモンバランスの乱れが関係しているものは、頻発月経稀発月経です。稀発月経と同じように周期が39日以上でも、規則正しい場合は問題視しないこともあります。
ただし、稀に無排卵状態になっている場合もあるため、気になる方・妊娠・出産を考えている方は婦人科へ相談しましょう。周期が安定しているからといってホルモンバランスが乱れていないとはいい切れません。

気分が落ち込みやすくなる

排卵後から月経前にかけて気分が落ち込みやすくなるなど、心の状態が不安定になる経験をしたことがある方も少なくないでしょう。
この不安定な状態を月経前症候群PMS)と呼びます。PMSの中でも気分の落ち込みがひどくうつ状態に近いなど、精神状態が主体な状態を月経前不快気分障害(PMDD)に当てはまります。
明確な原因は判明していません。ただ排卵後から月経前にかけてエストロゲンとプロゲステロンが同時に分泌されることが要因となり、気分が落ち込みやすくなる状態やうつ状態に近い症状がみられます。
わずかでもホルモンバランスが乱れると、日常生活に支障をきたす恐れも考えられるでしょう。

食欲不振になる

食欲不振は消化器系の病気や心の問題が要因となる場合もあれば、女性ホルモンバランスの乱れが関係していることもあります。
エストロゲンとプロゲステロンは、40代半ばから50代半ばにかけて急激に分泌量が低下します。
女性ホルモンの中でもエストロゲンは、女性らしい体つき・骨・皮膚をつくったり、脳・中枢神経・循環器などさまざまな器官に働きかけたりする大切なホルモンです。
エストロゲンの分泌が減少すると、食欲不振をはじめ動機・めまい・情緒不安定などの症状がみられます。
低栄養状態は身体のみならず心にも悪影響を及ぼし、より状態を悪化させてしまうことにもつながります。

肌荒れが起こる

肌トラブルに悩む女性
肌荒れが起こる状態にはさまざまな背景がありますが、月経前にかけてニキビができるなどの肌荒れを経験したことがある方もいるでしょう。
ニキビができるなどの肌荒れの原因の1つとして、プロゲステロンが関係しています。月経前から増加しエストロゲンよりもプロゲステロンが増加すると、肌の生まれ変わりであるターンオーバーが乱れ、皮脂の分泌量が増えニキビが発生する原因となります。
エストロゲンは肌のハリやツヤなどの肌状態を保つためにも欠かせません。
肌状態を保つためには「エストロゲンが多い方はよいのでは」と考えがちですが、2つの女性ホルモンのバランスが正常であることが大切です。

女性のホルモンバランスを整える方法

人差し指を立てる白衣の女性
女性のホルモンバランスを整える方法について4つの治療方法からみていきましょう。
月経や心理的変化など、そのときどきの状態により女性ホルモンの分泌が大きく変化すると交感神経と副交感神経を保っている自律神経が乱れ、内臓機能・免疫系・心の問題などさまざまなトラブルを引き起こします。
女性ホルモンバランスの乱れからくる症状は、人によってさまざまなためご自身に合った治療方法を医師と相談しながら見極めることが大切になります。

漢方治療

漢方薬
女性ホルモンバランスの乱れは1つの要因で起こるわけではないため、身体全体を整える漢方治療が取り入れやすいです。
漢方は種類が豊富にありますが、主にホルモンバランスの乱れには以下の漢方を用います。

  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

これらは婦人科三大処方とも呼ばれ、ホルモンバランスの乱れからくる女性特有の症状の改善に向いています。
桂枝茯苓丸は頭痛・めまい・のぼせに、加味逍遙散はイライラ・不安・疲れやすい方に向き、さらに当帰芍薬散は冷え性や貧血の方に向いています。
同じ症状であっても人により処方される漢方は変わるため、症状を自己判断せずに医師と相談しご自身に合った漢方を服用しましょう。

点滴治療

次世代のエイジングケア療法として知られている中に、NMN点滴治療があります。NMNとはビタミンに似た物質で、身体のなかで自然につくられますが年齢とともに減少します。
NMN点滴治療を行いサーチュイン(長寿)遺伝子を活性化することで年齢と共に減少するエストロゲンを上昇させ、女性ホルモンバランスを整える方法として有効です。
NMN点滴治療はエストロゲンの上昇のほか、肌細胞・体力・代謝などが改善する効果も期待できるでしょう。
ただしNMN点滴治療は日本国内において未承認医薬品です。重大な副作用の報告はなく、臨床試験の結果、ヒトに安全に投与可能であることが証明されています。

プラセンタ

プラセンタとは胎盤のことを指し、人の身体に欠かせないアミノ酸・ミネラル・ビタミンなどが豊富に含まれている物質です。
プラセンタにはホルモンバランスを整える作用があり、ホルモンバランスの乱れから起こる女性特有の症状の改善や皮膚の新陳代謝を活発にすることで美肌効果も期待できます。
プラセンタ投与にはいくつかの注意事項があるため覚えておきましょう。まずプラセンタは静脈投与が禁止されているため、点滴ではなく注射による投与を行うので一時的に痛みや腫れが生じることもあります。
副作用が少ない製剤ですが、人によっては過敏症・発熱・発疹などがみられ、安全性は高いとされていますがなかにはアレルギーを起こす方もいます。
またプラセンタはヒト由来の製剤であるため、プラセンタ投与を行うと献血ができません。
女性のホルモンバランスを整える効果をはじめ、さまざまな症状の改善が期待できますが、プラセンタ投与を行う際はよく理解したうえで治療に臨みましょう。

ホルモン補充療法

薬を飲む女性
ホルモン補充療法は、エストロゲンが急激に減少することで引き起こされる更年期障害の治療の中心として行われ、HRTとも呼ばれています。
薬によって少量のホルモンを補うことで、減少を緩やかにし症状を抑えていく方法です。
手術などで子宮を摘出している方はエストロゲン単独投与を行いますが、子宮がある方の場合、エストロゲン単独投与だと子宮内膜を増殖させるリスクが高まるため同時にプロゲステロンも投与します。
ホルモン剤の種類は飲み薬・貼り薬・塗り薬など、さまざまな種類があり、投与方法は人により異なります。
医師とよく相談をし、症状に合ったタイプを選択しましょう。正しい投与方法でないと症状の改善が見込めません。
また、場合によって漢方や抗うつ薬などを併用することもあります。ご自身に合ったホルモン補充療法を行い、ホルモンバランスを整えていくことがよいでしょう。

ホルモン補充療法の効果

ハートを持つ女性医師
ここからは女性のホルモンバランスを整える方法のなかでも、ホルモン補充療法について詳しくみていきます。
ホルモン補充療法はホルモンバランスを整えるほか、それに伴い更年期の症状が改善したり心臓疾患系の疾患を予防できたりする効果も期待できます。
ホルモン補充療法は、快適な生活を過ごすうえで選択の1つとして捉えてもよいでしょう。

ホルモンバランスを整える

先述したように、更年期障害など女性に現れる症状の原因はエストロゲンの急激な減少が関係しています。
急激に不足したエストロゲンを少量ずつ投与して補い、減少を緩やかにしてホルモンバランスを整えます。
ホルモンバランスを整えることは、身体や心の不調に悩まず快適な日常生活を過ごすうえで欠かせない方法といえるでしょう。

更年期の症状を改善する

疲弊した女性
閉経前後の5年間を更年期と呼び、この期間に生じる症状のなかでほかの病気を伴わないものを更年期症状、日常生活に支障をきたすほどの症状を更年期障害といいます。
ホルモン補充療法は、更年期障害の中でも顔ののぼせやほてり(ホットフラッシュ)や発汗の症状にとても効果的といわれています。そのほかイライラ・不安・記憶力の低下など、さまざまな症状の緩和が期待できるでしょう。
更年期の症状が緩和することで以前のように活力が湧き、自分を取り戻し前向きになれる方も大勢います。
更年期の症状を年齢だから仕方ないと諦めてそのまま過ごすよりも、我慢せず医師に相談しホルモン補充療法など適切な治療方法を取り入れて改善に導くことが大切です。

心臓疾患系の疾患を予防できる

エストロゲンには動脈硬化を防ぐ働きもあります。全身へ栄養や酸素を送る動脈には、心臓の収縮による圧力を抑える動脈壁が存在します。
この動脈壁が変性したりコレステロールなどが蓄積したりする状態が動脈硬化です。
動脈硬化が起こると血管が麻痺を起こし一時的に心筋の酸素不足になる狭心症や、心筋が壊死する心筋梗塞などの心臓系疾患が起こる可能性があります。
エストロゲンは血管の内側にある内皮細胞に対して直接作用し、血管拡張物質の産生を促すことで動脈を拡張させ、結果心臓疾患系の疾患の予防に効果的と考えられるでしょう。
ホルモン補充療法は、ホルモンの減少によって引き起こされる病気の予防に努める効果が期待できます。

ホルモン補充療法の副作用

胸に手を当てた女性
ホルモン補充療法はさまざまな効果が期待できますが、少なからず以下のような副作用が生じる可能性があります。

  • 不正性器出血
  • 乳房の張りや痛み
  • おりものの増加

大半は2〜3ヵ月程でおさまり、ホルモンによる症状のため心配はないでしょう。なかなか症状がおさまらない場合は、医師に相談しホルモン剤の量を調節してください。
また、まれに血栓症(血管の中に血液の固まりが生じ詰まる状態)を引き起こす場合があります。ふくらはぎの腫れやむくみ、頭痛などがあった場合、投与を中止し医師に相談してください。
とくにホルモン剤を投与し始めは、わずかな変化も見逃さずに慎重に様子をみてください。

ホルモン補充療法の費用

計算機を使う手元
ホルモン補充療法は、医師が「更年期の症状がある」と診断した場合のみ保険適用になります。
ホルモン補充療法を受ける際、以下の検査を行い投与を継続中は定期的にチェックし管理します。

  • 血液検査
  • 子宮がん検診
  • 超音波検査
  • 乳がん検査
  • 骨密度測定

費用は以上の検査代・診察代・ホルモン薬代などを合わせ年間約20万円前後の場合が多いでしょう。
ただし、人によってホルモン剤の種類が違ったり医院によっても価格設定が違ったりします。
ホルモン補充療法は継続していないと、徐々に症状が元に戻ってしまうため、ご自身が継続できるかどうかも視野に入れ治療を行いましょう。

編集部まとめ

ハートのリボン
女性ホルモンの分泌は年齢とともに減少し、ホルモンバランスが乱れるとさまざまな症状を引き起こします。

身体と心に何らかの症状が現れ、年齢を重ねるにつれ更年期の症状が出る場合も少なからずあるでしょう。

女性ホルモンのバランスを整える方法はいくつかありますが、ホルモン補充療法に注目してみてはいかがですか。

女性にとって欠かせないエストロゲンを増やすことで、ホルモンバランスが整い身体や心の健康にもよい方向へと導くでしょう。

また、早くから治療を開始することでホルモンバランスを整えるほか、ほかの病気の予防にもつながります。ご自身にとって適切な選択を行い、快適な生活を過ごしましょう。

この記事の監修医師