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カルシウム不足の症状とCa欠乏対策を管理栄養士が解説 効率よく摂取できる食事や注意点とは

 更新日:2023/03/20
カルシウム不足の症状とCa欠乏対策を管理栄養士が解説 効率よく摂取できる食事や注意点とは

カルシウムは年齢に関係なく体にとって大切なミネラルで、女性はもちろんのこと、子どもや男性でも欠乏すると様々な健康障害を起こしてしまいます。そこで、今回は管理栄養士の山口さんに、どのようにしてカルシウム不足の予防・解消をすればいいのか解説をしていただきました。

山口 史恵

監修管理栄養士
山口 史恵(管理栄養士)

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大妻女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業。大学卒業後、都内の病院に数年務めた後、カナダへ語学留学。その後、カナダでホリスティックニュートリショニストとしてヘルスフードストアやウエルネスセンターにて、一般に栄養指導をしながらクリニックにて個別指導にも従事。体重別、身長別といった大きいカテゴリーではなく、一人ひとりのバックグラウンド、生活環境や代謝などを考慮した栄養指導がモットー。

体にカルシウムが不足するとどんな症状が起こるのか気をつけたいカルシウム欠乏度チェック

体にカルシウムが不足するとどんな症状が起こるのか気をつけたいカルシウム欠乏度チェック

編集部編集部

体内でのカルシウムの役割を教えてください。

山口 史恵さん山口さん

カルシウムは体内に最も多く存在するミネラルです。99%は骨や歯に備蓄され、残りの1%は血液や筋肉、神経などに存在しています。カルシウムは体内では生産されないため、食事やサプリメントからの摂取が必要となります。カルシウムは、骨や歯を強くする働きをするほか、傷口の血液凝固作用、ホルモン分泌、細胞の分裂、筋肉の収縮、血圧管理、神経興奮の抑制、脳からのメッセージの伝達など体内で重要な役割を持っています。

編集部編集部

カルシウム不足によって起こる体の症状や病気は何ですか?

山口 史恵さん山口さん

カルシウム欠乏が深刻化すると、骨密度の上昇が妨げられることにより、骨が弱くなったり、閉経後の女性は特に骨粗鬆症が起こりやすくなったり、歯も弱くなるためむし歯になりやすくなったりします。その他、手足の痺れ、筋肉の痙攣、爪が割れやすくなる、便秘になりやすい、鬱、イライラしやすい、記憶力の低下などがあります。また、子どもの場合は骨の発育障害により、成長に悪影響をもたらします。

編集部編集部

カルシウム不足のセルフチェックはできますか?

山口 史恵さん山口さん

カルシウム不足のサインとしては、疲れやすい、まぶたがピクピクする、足がよくつる、血圧が高いなどがあります。また、「カルシウム不足 セルフチェック」と検索いただくと、様々なサイトがチェックリストを出しています。少しでも気になることがある方は、セルフチェックをおこなってみてください。

カルシウム不足にならないためにはどうすればいい?カルシウムを効率よく摂取する食事方法・対策とは?

カルシウム不足にならないためにはどうすればいい?カルシウムを効率よく摂取する食事方法・対策とは?

編集部編集部

カルシウムを多く含む食材にはどのようなものがありますか?

山口 史恵さん山口さん

イワシ、あじ、ししゃも、小エビなどの魚類、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、ごま、アーモンドなどの種実類、小松菜、モロヘイヤ、パセリなどの緑黄色野菜などに多く含まれています。以下の表は、農林水産省が出しているカルシウムを多く含んでいる食品になります。成人1人当たりが一日にとるカルシウムの目標量は600〜800mg、成長期の子どもは700~1000mgです。

食品群 食品名 摂取量 カルシウム含有量
乳製品 牛乳 コップ1杯(200g) 220mg
ヨーグルト 1パック(100g) 120mg
プロセスチーズ 1切れ(20g) 126mg
野菜類 小松菜 1/4束(70g) 119mg
菜の花 1/4束(50g) 80mg
水菜 1/4束(50g) 105mg
切り干し大根 煮物1食分(15g) 81mg
海藻 ひじき 煮物1食分(10g) 140mg
小魚 さくらえび(煮干し) 大さじ1杯(5g) 100mg
ししゃも 3尾(45g) 149mg
豆類 木綿豆腐 約1/2丁(150g) 180mg
納豆 1パック(50g) 45mg
厚揚げ 1/2枚(100g) 240mg

※出典:農林水産省「大切な栄養素カルシウム」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics1_05.html

編集部編集部

これらの食品から、カルシウムを効率よく摂取する方法がありましたら教えてください。

山口 史恵さん山口さん

植物性食品には、ほうれん草やケールに多く含まれるカルシウムの吸収を阻害する「シュウ酸」、穀類や豆類に多く含まれるフィチン酸などがあるので、動物性食品に比べてカルシウムの吸収率はよくありません。火を通してもカルシウム吸収阻害の栄養素を減少させることはできませんが、種実類なら一晩水につけておいたり、穀類や豆類の食材は発芽、発酵させたりすることによって、消化吸収力を向上させることは可能です。

編集部編集部

カルシウムの吸収率を向上させる栄養素にはどんなものがありますか?

山口 史恵さん山口さん

カルシウムの吸収率を向上させてくれる栄養素は、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンCなどですね。ビタミンDは食品以外にも日光を浴びると体内で生成され、カルシウムの利用効率を高めてくれます。ビタミンKはカルシウムを骨に沈着させて骨の形成再生を促す作用があります。また、ビタミンCと胃酸はカルシウムの吸収率を高めてくれるため、食前に小さじ1ほどのレモン汁、リンゴ酸などを入れた水を飲むことをお勧めします。

編集部編集部

食べ合わせの注意点がありましたら教えてください。

山口 史恵さん山口さん

カルシウムの体内吸収率はほかのミネラルとのバランスが影響するため、カルシウム吸収を阻害する栄養素を多く含む食品との食べ合わせを避け、バランスよく食べることが大事です。時間がなくてもインスタント食品で済ませる、ということはせず簡単にできるキノコや小魚をバターで炒めるなど、工夫をしましょう。

編集部編集部

その他、カルシウム不足の対策にはどのようなものがありますか?

山口 史恵さん山口さん

まずは上記の内容に気をつけた食事を摂っていただき、それでもカルシウムの不足が気になるという方にはカルシウムサプリメントをお勧めします。主に市販されているのは炭酸カルシウムとクエン酸カルシウムですが、吸収されやすいのはクエン酸カルシウムです。1カプセルが500mg以下のものを選び、1日数回に分けて摂取すると吸収率も上がります。

カルシウムを摂取する際の注意点を管理栄養士が解説不足だけでなく過剰摂取にも気をつけよう

カルシウムを摂取する際の注意点を管理栄養士が解説不足だけでなく過剰摂取にも気をつけよう

編集部編集部

改めて、カルシウム不足にならないために気をつけるべき事を教えてください。

山口 史恵さん山口さん

気をつけていただきたいのは4つですね。①カルシウムが豊富な食事、特に吸収率のいい動物性食品(魚介類、乳製品)からの摂取を心がける。消化吸収を妨げる栄養素(アルコール、カフェイン、シュウ酸、フィチン酸など)は、カルシウムを多く含む食品との食べ合わせを避ける。3食バランスよく食べる。ストレスを減らし、リラックスして食事をする。イライラしている時や急いでいるときにかき込むのは避ける。

編集部編集部

カルシウムの過剰摂取は起こり得ますか?

山口 史恵さん山口さん

通常の食事からの過剰摂取が起こることは稀ですが、気をつけたいのはカルシウム強化食品やサプリメントによる過剰摂取です。サプリメントなどからカルシウムを摂取している方は、特に気をつけましょう。

編集部編集部

カルシウムの過剰摂取による症状を教えてください。

山口 史恵さん山口さん

腎臓結石、心臓の鼓動の変化、過度の喉の乾き、便秘、皮膚の痒み、筋肉の痙攣、頭痛、吐き気、腹痛、関節痛などのほか、気分の浮き沈み、イライラしやすい、記憶障害などが主な症状です。カルシウム不足の時と同じような症状が、カルシウム過剰摂取により現れることが多いですね。

編集部編集部

カルシウムの1日の摂取量を満たし過剰摂取にならないための秘策は何ですか?

山口 史恵さん山口さん

過剰摂取にならないようにするには、よほど欠陥が無い限りサプリメントに頼らないということです。まずはバランスの取れた食事を心がけましょう。そして、毎日体を動かし適宜筋トレをすることも大事です。また、ビタミンD生成のため日光に当たる、睡眠の質の向上、喫煙や飲酒を減らす・避ける、ということも1日の摂取量に影響を与えるため、気にかけていただきたい点ですね。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

山口 史恵さん山口さん

カルシウムは体が必要とする16のミネラルのうちの一つですが、カルシウムが欠陥していると感じる時、ほかのミネラルも不足しているということがほとんどです。ミネラルの吸収にはしっかり胃酸が分泌されていることが絶対条件なので、規則正しくバランスの取れた食事をする、ストレスを軽減する、ジャンクフードやアルコールを控える、といったことを心がけ、運動や料理も自分のライフスタイルに合わせて楽しく無理なく続けていける工夫をしてください。

編集部まとめ

カルシウムは骨や歯の健康だけでなくホルモンバランスや筋肉、神経系の健康にも重要な働きをするため、不足だけでなく過剰摂取にも注意し吸収率を高められるようバランスよく食べることが大切です。カルシウム強化食品やサプリメントを摂取する前に一度管理栄養士に相談してみましょう。

この記事の監修管理栄養士