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大腸カメラ検査によるポリープ切除の方法は?術後の痛みや合併症の可能性を解説

 公開日:2024/02/07
大腸カメラ ポリープ切除

大腸の内壁にはポリープと呼ばれるイボのような出っ張りが発生することがあります。

多くが良性のポリープですが、中にはがん化してしまうポリープがあります。

そのため胃にできるポリープとは違い、大腸ポリープは必要に応じて切除する必要があるのです。

大腸にポリープができているかどうかは大腸カメラによる検査で分かります。また、大腸ポリープの切除も大腸カメラ検査で可能です。

今回は大腸カメラ検査によるポリープ切除方法・ポリープ切除術後の痛み・ポリープ切除に伴う合併症などについて説明します。

松井 信平

監修医師
松井 信平(医師)

プロフィールをもっと見る
慶應義塾大学医学部卒業、慶應大学関連病院での修練後、慶應大学のスタッフへ就任、2023年4月よりがん研有明病院スタッフ勤務。専門は消化器外科・大腸がん。

大腸カメラ検査によるポリープ切除の方法

大腸カメラ検査によるポリープ切除の方法
大腸内にはポリープと呼ばれるイボのような出っ張りが発生することがあります。
それほど大きくないポリープであれば大腸カメラ検査実施時に切除が可能です。
大腸カメラ検査でのポリープ切除方法には以下のような方法があります。

ポリペクトミー

ポリペクトミーとはイボのように盛り上がった隆起性の病変(ポリープ)を切除・治療する方法のことです。
スネアと呼ばれるワイヤーをポリープに引っ掛けて切除する方法が一般的です。
小さいポリープであれば生検鉗子(バイオプシー鉗子)で切除するケースもあります。

コールドポリペクトミー

スネアを使ったポリペクトミーには「ホットポリペクトミー」と「コールドポリペクトミー」の2種類があります。
ホットポリペクトミーは高周波スネアと呼ばれる器具を使い、ワイヤーに高周波を流してポリープを焼き切る方法です。
一方のコールドポリペクトミーは、ポリープにワイヤーを引っ掛けたらそのままワイヤーで締め上げて切り取ります
昔はポリープの大きさに関係なく全てホットポリペクトミーで切除していました。
しかし現在では10mm以下のポリープはコールドポリペクトミーにて切除するケースが増えています。
コールドポリペクトミーによるポリープ切除には以下のようなメリットがあります。

  • 切除後の出血が少ない
  • 腸管穿孔のリスクが低い

これらの理由から10mm以下の小さなポリープはコールドポリペクトミーで切除するケースが多いです。
10mm以上の大きさで茎も太いポリープはコールドポリペクトミーの適応外なので、ホットポリペクトミーにて切除します。
茎が太いポリープの場合、茎の中にある栄養血管も太くなっているため、高周波で焼き切りつつ止血も行えるホットポリペクトミーが適用されます。

内視鏡的粘膜切除術

内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection:EMR)とは、粘膜下層に生理食塩水を注入し、粘膜層にできた病変を切除する方法のことです。
粘膜に発生した扁平なポリープやがんなど、そのままではワイヤーをかけることが困難な症例で行われます。
内視鏡的粘膜切除術の適応症例は15mm以下の病変です。
内視鏡的粘膜切除術の手順として、まず初めに粘膜下層に生理食塩水を注入します。
大腸の壁は内側から粘膜・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜の6層構造です。
内視鏡的粘膜切除術では局所注射用の針を使って粘膜下層に生理食塩水を注入し、粘膜にできた病変を隆起させます。
隆起した病変に高周波スネアをかけて焼き切りします。
内視鏡的粘膜切除術では将来がん化する恐れのある良性ポリープや早期のがんを内視鏡下で切除することが可能です。
内視鏡下で切除・治療ができるため、患者さんの身体的負担が少ないのが大きなメリットです。
このほか、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という方法もあります。
ESDは入院治療が必要な切除方法ですが、EMRで切除しづらい大腸のヒダにまたがるポリープや、2cm以上の大きな早期がんを内視鏡下で切除できる治療です。
なお、EMRとESDの利点を兼ね備えた「ハイブリッドESD」という手法もあり、ある程度大きな病変も日帰りで切除可能です。
以前よりも内視鏡的治療が可能な病変が増えていますので、どのような治療が適しているか、医師に相談してみましょう。

大腸ポリープとは

大腸ポリープとは
大腸ポリープとは大腸内壁の粘膜に発生するイボのような盛り上がりのことです。
多くは丸く膨らんだ出っ張りですが、中にはのぺっと横に広がるような扁平な形状もあります。
大腸ポリープは主に「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」の2つに大別されます。
腫瘍性ポリープには腺腫やがんがあり、腺腫は良性腫瘍でがんは悪性です。
非腫瘍性ポリープには過形成ポリープや炎症性ポリープなどがあります。

大腸がんが発生する可能性がある

大腸がんが発生する可能性がある
大腸に発生するポリープで最も多いのが良性腫瘍の「腺腫」で、次に多いのが非腫瘍性ポリープである過形成ポリープです。
この2つのうち腺腫の一部はがん化するケースがあります。
以前は全ての腺腫ががん化する前段階だと考えられていましたが、実際は一部の腺腫だけががん化することが分かってきました。
重要なのは腺腫の大きさで、10mmを超える腺腫はがん化する恐れが高まるとされています。
このように、良性腫瘍の腺腫からがんが発生する可能性があるので、定期的な大腸カメラ検査によってポリープの有無を確認することが大切です。

早期発見によりがんの発症を防げる

大腸にポリープが発生しても痛みなどの自覚症状はありません。
何故なら大腸内壁の粘膜には痛覚がないからです。
そのため、大腸にポリープができていても気づかず、いつの間にかがん化しているというケースがあります。
大腸がんの発症を防ぐためにも、大腸カメラ検査で大腸内の状態をチェックするのが大切です。
大腸カメラ検査でポリープを早期に発見できればがん化する前に切除し、がんの発症を防げます。

大腸カメラで発見されたポリープは日帰り切除ができる

大腸カメラで発見されたポリープは日帰り切除ができる
大腸カメラ検査で切除が必要なポリープが発見された場合、その場で切除されるケースがほとんどです。
検査中すぐに切除できる数や大きさのポリープであれば日帰り切除が可能です。
しかし、ポリープが多くあったり大きかったりする場合には出血や穿孔のリスクを考慮し、日帰り切除ができないケースがあります。
そのようなケースでは数日に分けて切除したり、切除後数日間入院して様子を見たりして対応します。

大腸カメラ検査によるポリープ切除後の痛みはある?

大腸カメラ検査によるポリープ切除後の痛みはある?
大腸カメラ検査でポリープを切除した後に痛みが現れることは基本的にありません
大腸内壁の粘膜には痛覚がないため、ポリープを切除しても痛みは感じないからです。
しかし、大腸に穴が空く「大腸穿孔」を起こした際には痛みが発生します。
大腸カメラ検査でポリープを切除した後、稀に大腸穿孔を起こすことがあります。
大腸の壁に穴が空き、内容物が腹腔内に漏れ出すことで炎症が発生し、痛みなどの症状が現れるのです。
ポリープ切除後の大腸穿孔は大変稀なケースですが、もし切除後に腹部の痛みが現れたら、すぐに医療機関に相談してください。

大腸カメラによるポリープ切除後の合併症の可能性

大腸カメラによるポリープ切除後の合併症の可能性
大腸カメラでポリープを切除した後、稀に合併症が現れるケースがあります。
大腸ポリープ切除後に現れる合併症について以下で説明します。

術後出血

大腸内のポリープを切除した後、稀に出血がおこることがあります。頻度としては0.4%程度です。
ポリープを切除した後の傷口は、専用のクリップを使って閉じたり高周波スネアで焼いたりして止血します。
しかし、何らかの原因によって止血したはずの傷口から再度出血してしまう術後出血が起こるケースがあります。
便に少量の血が混じる程度の出血や、ドロッとした血の塊が少量出る程度の術後出血ならばあまり問題はありません。
念のため大腸カメラ検査を受けた医療機関に電話で相談し、安静を保つようにしてください。
少量の術後出血であれば安静を保っていれば自然と治ってくるケースが多いです。
しかし、便器が真っ赤に染まるほどの出血が起きている場合にはすぐに処置が必要です。
大腸カメラ検査を受けた医療機関にすぐに連絡をして再受診してください。
再度大腸カメラ検査を行い、止血処置を施す必要があります。

大腸穿孔

ポリープ切除後、大腸の壁に穴が空いてしまう症状が大腸穿孔です。
発生頻度は0.2%程度と非常に稀な症状です。
原因としては、ポリープ切除時の高周波スネアの電流が多量に流れたり、大きなポリープを取る際に深くまで切り取ったりしたことなどが挙げられます。
この他、高周波で焼き切った傷跡に後から穴が空いてしまう「遅発性穿孔」という症状もあります。
大腸穿孔で問題となるのが腸管内容物の漏出です。
大腸穿孔が発生すると腸管内にある糞便などの内容物が腹腔内に漏れ出してしまいます。
これにより腹腔内に炎症が起こり、発熱・食欲不振・吐き気・嘔吐・腹痛などの症状が現れます。
炎症が腹腔内に広がると手術が必要になるケースもあるため、ポリープ切除後に大腸穿孔を疑う症状が現れたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

大腸カメラ検査によるポリープ切除後の注意点

大腸カメラ検査によるポリープ切除後の注意点
大腸カメラ検査によるポリープ切除に伴う合併症が発生する頻度は非常に少ないです。
しかし、ポリープ切除後の過ごし方によっては、これらの合併症が発生するリスクが高まる可能性があります。
大腸カメラ検査によるポリープ切除後の注意点について説明いたします。

食事・飲酒

大腸ポリープ切除後1週間程度は食事や飲酒に注意が必要です。
食事は大腸に負担をかけないよう、消化しやすくお腹に優しい食事を心がけましょう。
ポリープを切除した当日はお粥・うどん・豆腐・ヨーグルト・ゼリーのような消化しやすく負担が少ない食事にしてください。
ポリープ切除の翌日に腹痛などの異常が見られなければ消化の良い食事から摂り始め、1週間程度かけて徐々に通常の食事に戻していきます。
唐辛子などの辛味の強いものや香辛料は腸を刺激するだけでなく、血流を促進し出血を助長する恐れがあります。
これらの刺激物は、ポリープ切除後1週間以上経過してから徐々に摂取するようにしましょう。
ポリープ切除後の飲酒もNGです。
飲酒は大腸カメラ検査前日も禁止ですし、ポリープ切除後も1週間程度は禁酒してください。
アルコールには血流を促す作用・血圧を高める作用・腸の動きを活発にする作用などがあります。
これらアルコールの作用により、術後出血や大腸穿孔のリスクが高まる恐れがあります。
ポリープ切除後1週間程度は食事や飲酒に注意して過ごすようにしましょう。

入浴

入浴
ポリープ切除後は入浴方法にも注意が必要です。
ポリープ切除後2〜3日程度はシャワーのみとし、湯船には浸からないようにしましょう。
湯船で暖かいお湯に浸かると血行が促進されたり全身にお湯の水圧がかかったりします。
通常であればこれらの効果は体にとって好ましいものですが、ポリープ切除後の体には適していません。
お湯の温熱効果と水圧は術後出血や大腸穿孔リスクを高めます。
大腸ポリープ切除後2〜3日はシャワーのみで様子を見て、問題がなければ湯船に浸かるようにしましょう。

出血

大腸ポリープ切除後は、排便時に出血の有無をよく確認するようにしましょう。
便に少量の血液が付着していたり、少量の血の塊が出てくる程度ならば大きな問題はありません。
念のため大腸カメラ検査を受けた医療機関に相談した方がよいですが、ほとんどの場合安静にしていれば治ります。
しかし、排便時に便器が真っ赤になるほどの出血が見られたら、すぐに検査を受けた医療機関に連絡をして診察してもらいましょう。
ポリープ切除後1週間程度は出血の恐れがあるので、排便時の出血の確認を必ず行なってください。

大腸カメラ検査でポリープを切除する予定がある場合には、血液をサラサラにする抗血栓薬などの薬の投薬は一時的に中止します。
何故ならこれらの薬の効果が持続している状態でポリープを切除してしまうと、血が止まらなくなるからです。
ポリープを切除した後もしばらくは抗血栓薬などの薬は飲めません。
薬の再開時期については担当医師に確認してから再開するようにしましょう。

運動

大腸ポリープ切除後は運動にも注意が必要です。
腹圧が強くかかる運動は術後出血や大腸穿孔リスクを高めるため、ポリープ切除後1週間以上経過するまでは行わないようにしてください。
腹圧が高まる激しい運動の例としては、ゴルフ・テニス・ランニング・筋力トレーニングなどが挙げられます。
上記以外にも力んでお腹に力が入ってしまうような運動は避けましょう。
散歩のような緩やかな運動であれば、ポリープ切除翌日から行えます。

旅行・出張

旅行・出張
大腸のポリープを切除したら1週間以上は旅行や出張を控えてください。
何故なら旅行や出張先で術後出血や大腸穿孔を起こした場合、対処が遅れる可能性があるからです。
ポリープの切除を受けた医療機関であれば、万が一に備えていつでも対処できるように準備しています。
そのため、術後出血や大腸穿孔を疑う症状が現れた場合には、すぐに受け入れて処置をしてくれます。
しかし、旅行や出張先にすぐに受け入れてくれる医療機関が必ずあるとは限りません。
なかなか受け入れてもらえず対処が遅れる可能性もあります。
大腸カメラ検査でポリープを切除する予定がある場合には、1週間以上旅行や出張の予定がない期間に検査を受けるようにしましょう。

編集部まとめ

大腸カメラ ポリープ切除 まとめ
大腸カメラによるポリープ切除は、開腹手術と比べて患者さんの身体的な負担が少なく低侵襲なのが大きなメリットです。

また、大腸の粘膜には痛覚がないため、ポリープを切除する際や切除後に痛みを感じることはありません。

そのため切除可能な小さなポリープは、基本的には日帰りでポリープ切除術を受けることが可能です。

大腸にできるポリープで最も多いのは腺腫と呼ばれる良性腫瘍ですが、大きくなった腺腫にはがんが発生することがあります。

大腸は痛覚がないため、たとえ大腸内に腺腫やがんが発生しても自覚症状が現れません。

そのため、症状が現れたときにはがんなどの病状が進んでいるというケースがあるのです。

しかし、腺腫などのポリープを早期に発見しがん化する前に切除してしまえば、大腸がんに発展するのを未然に防げます。

恥ずかしさなどから胃カメラ検査よりも抵抗を感じる人が多い大腸カメラ検査ですが、大腸ポリープやがんの早期発見に大いに役立ちます。

特に、厚生労働省が推奨する「大腸がん検診」の対象年齢である40歳以上の方は、一度大腸カメラ検査で精査してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修医師