大腸カメラの「死角」とは? 内視鏡検査を毎年受けることが重要なワケ【医師解説】
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、大腸の内部を観察できるだけでなく、必要に応じてその場でポリープを切除することもできるそうです。そこで「大腸内視鏡検査でのポリープ切除」について、内視鏡医の工藤豊樹先生(東京内視鏡クリニック院長)にMedical DOC編集部が詳しい話を聞きました。
監修医師:
工藤 豊樹(東京内視鏡クリニック)
目次 -INDEX-
大腸内視鏡検査とは? 大腸カメラで大腸のがん・腫瘍・ポリープが発見される確率はどれくらいある?
編集部
大腸内視鏡検査について教えてください。
工藤先生
カメラを使って、視覚的に大腸の内部を観察できる検査です。肛門から直径1cm程度のスコープを挿入して、大腸全域の内部を診ていきます。映像は、画質の良いハイビジョンモニタで見られますので、小さな粘膜の変化も確認できます。
編集部
どんな病気がわかるのですか?
工藤先生
粘膜の色や形状などを直接観察できるので多くの情報を得ることができ、大腸ポリープや潰瘍性大腸炎、大腸憩室症など、さまざまな病気を発見することができます。それだけではなく、必要であればポリープなどをその場で切除することもできるのです。
編集部
どのくらいの確率で、異常が発見されるのでしょうか?
工藤先生
異常所見の種類や程度によって変わるので、一概に「このくらいの確率」とはいえませんが、例えば大腸ポリープの発見は、「腫瘍性病変」発見率であるADR(Adenoma Detection Rate)という用語で表され、よく用いられています。施設などによってばらつきはありますが、日本では概ね40〜50%程度と言われています。
編集部
そんなに高い割合で発見されるのですね。
工藤先生
そのように驚かれる方が多いですね。しかし、内視鏡専門医として皆さんにお伝えしたいのは「高確率で発見される」イコール「見逃しがない」ではないということです。むしろ、大腸という臓器の特性上、病変があっても気が付けないことがかなり多くあります。
大腸内視鏡検査には「死角」アリ 見つかったポリープをすべて切除するワケとは?
編集部
もう少し詳しく教えてください。
工藤先生
大腸の内部は、細かなヒダがたくさんあります。さらに大腸は「蠕(ぜん)動運動」といって、全体がウネウネと動いています。そのため、観察における「死角」が出来てしまうのです。内視鏡自体の精度や検査する医師の技術などで発見率は上がりますが、それでも「すべての病変を必ず見つけられる」というわけではありません。ですから、当院では患者さんに「今回は異常なしであっても、大腸内視鏡検査を定期的に受けましょう」と言っています。
編集部
ちなみに「ポリープ」と「腫瘍性病変」は違うのですか?
工藤先生
大腸ポリープは、大きく腫瘍性と非腫瘍性に分けられます。さらに、腫瘍性のポリープのうち、悪性のものがいわゆる「がん」ということになります。大腸がんは、最初は良性の腺腫と呼ばれる状態であることがほとんどですので、なるべくがん化する手前の状態である腺腫を発見して、早期に治療することが重要になってきます。
編集部
先ほど、「必要であれば、ポリープなどをその場で切除することもできる」とおっしゃっていましたが、悪性だけではなく良性でも切除するということですか?
工藤先生
ポリープが見つかったら、腫瘍性病変であれば良性・悪性にかかわらず基本的にはすべて切除します。我々が日常的に使っている「拡大内視鏡」や「超拡大内視鏡」を使えば腫瘍・非腫瘍だけでなく、良性・悪性もかなりの精度で治療前に診断することができます。最終的な診断はポリープを切除後、切除したものを病理組織検査に回し、そこで判断されます。
大腸内視鏡検査の検査・治療の流れと注意点
編集部
内視鏡検査を受けに行ってポリープ切除も行った場合、治療・処置の流れは大きく変わってしまうのですか?
工藤先生
基本的には、内視鏡検査当日そのまま日帰りにて切除(治療)が可能です。あまりにポリープの数が多いとき(10個以上)や直径が2cmなどの大きなものは切除するのに時間がかかるため、後日あらためて来院をお願いすることもありますが、それ以外ではポリープ切除目的で再び来院していただくことは原則ありません。
編集部
多忙な現代人には嬉しいですね。
工藤先生
そうだと思います。内視鏡検査の最大のメリットは、その場で発見と同時に切除治療を行えることです。これは大腸ポリープのみならず、初期のがんでも同様で、その場で切除ができるため開腹手術を避けることができます。患者さんの身体的負担もほとんどなく、検査が終わればそのまま歩いて帰ることもできます。
編集部
切除後に注意することはありますか? 切除後は何日くらい安静が必要ですか?
工藤先生
ポリープを切除した箇所は、出血しやすくなっていますので、切除後1週間は運動・アルコール・熱いお風呂やサウナなど、血流がよくなることは控えていただいています。また、何かあった時に対応できなくなるため、遠方への移動、特に海外旅行などは避けるようにお願いしています。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
工藤先生
大腸がんは、初期だとほとんどが無症状です。つまり、症状が出てから受診・検査をしたのでは手遅れとなる可能性があります。症状のない時に検査することで、がんになる前のポリープや、初期のがんの段階で切除することができるのです。「自分は健康なので必要ない」と思っている方こそ、一度内視鏡で確認してもらってください。特に、40歳以上の方は、できれば毎年大腸内視鏡検査を受けていただくことをお勧めします。
編集部まとめ
ポリープや腫瘍性病変はかなり高い確率で発見される一方で、大腸の特性上、1回の検査では見つからない場合もあるとのことでした。もしポリープなどが見つかっても、基本的にはその場で切除が可能なので、特に40歳以上の方にはぜひ毎年検査を受けていただけたらと思います。
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