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インプラントか、入れ歯か。残存歯を守るために知っておきたい「適切な選択肢」【堺市西区 深野歯科医院】

 公開日:2026/05/11

インプラントか、入れ歯か。残存歯を守るために知っておきたい「適切な選択肢」
インプラントか、入れ歯か。残存歯を守るために知っておきたい「適切な選択肢」

歯を失った際の治療としてインプラントが注目されているが、それが必ずしも最善とは限らないケースもある。そう語るのは堺市で開業する「深野歯科医院」の深野秀明副院長だ。同院では口全体を総合的に捉える「1口腔1単位」という考えのもと、将来を見据えた精密な治療計画を立案。患者さんの状態次第で、入れ歯を提案することもあるという。術後の徹底した管理体制を構築し、QOLの向上に尽力している深野副院長に話を伺った。

Doctor’s Profile
深野 秀明(ふかの ひであき)
医療法人至誠会 深野歯科医院 副院長

大阪歯科大学卒業。新しい設備を導入し、個々の症例に応じた精密な治療計画を立案することが、歯科医師に求められる真の技量であると自負する。父の代から通う患者さんを含め、すべての来院者にとってより良い治療とは何かを常に追求し続けながら、国内外の勉強会に積極的に参加し日々自己研鑽に励んでいる。
〔所属学会等〕
日本臨床歯科学会(大阪支部理事)、日本顎咬合学会(近畿中国四国支部副支部長・認定医)、S P Iインプラントシステムインストラクター、大阪S J C D精密歯科治療コースインストラクター、南カリフォルニア大学歯学部客員研究員、ほか

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口全体をひとつの単位としてとらえる「1口腔1単位」の考えとは?

まず、インプラントのメリットとデメリットについてお聞かせください

まず、インプラント治療とは、歯を失った箇所に生体親和性の高いチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を被せて「噛む」機能の回復を図る治療法です。埋め込んだ人工歯根と顎の骨が強固に結びつくことで人工歯が安定し、自分の歯のように噛むことができるため、QOL(生活の質)が改善します。
メリットはほかに「自然な見た目」「噛む力が顎に伝わるため顎が痩せにくい」「ブリッジのように、周囲の健康な歯に負担をかけにくい」などです。
一方、デメリットについては、「保険が適用されないので費用が高額になる」「外科的な手術が必要」「すでにお持ちの疾患によっては、治療を受けられないケースもある」などが挙げられます。

口全体をひとつの単位としてとらえる「1口腔1単位」の考えとは?

インプラント治療ができないのはどんなケースでしょうか?

まず全身面でいうと、とくに重度の糖尿病を患っている方は難しいと思います。血糖値がコントロールできない状態だと、インプラントに限らず、外科的な処置全般で傷の治りが悪くなります。インプラントは、傷が治っていく過程を利用する手術なので、そこはやはりできないという判断になります。
それと、インプラントはメンテナンスフリーではありません。重度の歯周炎をコントロールできない方は予後が悪くなりますから、これも難しいと思います。
また、患者さん自身の問題だと、メンテナンスにお越しいただけない方も厳しいと思います。メンテナンスをしないまま放置していると、汚れが溜まってインプラント周囲粘膜炎、そしてインプラント周囲炎になっていくので、インプラントそのものがダメになってしまう可能性が高くなります。

残念ながらメンテナンスを受けずに放置してしまう患者さんもおられるということですが、そのようになってしまう可能性を、治療前に見抜く術(すべ)はないのでしょうか?

カウンセリングの段階で、患者さんにしっかり説明します。そして、実はインプラントに限ったことではないのですが、「基本的に歯医者とは一生付き合うことになります」という話をするので、「定期的なメンテナンスが必須のインプラントならなおさらですよ」という意味合いでお伝えしています。

インプラント治療の精度を高めるために工夫していることはありますか?

歯科用CTやマイクロスコープ、レーザー、口腔内スキャナー、CAD/CAMシステムなど、新しい機器を導入しています。
また、インプラントの術前シミュレーションソフトを用いて、精密な治療計画を立てたうえで治療を行います。インプラントを埋入する位置や角度、深さなどを事前に細かくシミュレーションしますから、治療の精度がより高くなります。

インプラントを入れた後のメンテナンスについて教えてください

インプラントを埋入したあと長い間放置すると、インプラントの周りが炎症を起こす「インプラント周囲炎」を発症することがあります。進行すると顎の骨が溶かされて、最悪の場合は、埋入したインプラントが抜け落ちてしまう恐れがあります。ですから、術後は定期的にメンテナンスを受けることが必要です。

口全体をひとつの単位としてとらえる「1口腔1単位」という考えのもと診療にあたられているとのこと。それについて教えてください

「木を見て森を見ず」では、治療の効果が十分に得られません。たとえば、むし歯はその歯だけの問題ではなく、ほかの要素が関係していることもあります。そこで、本当の原因を探るためにお口全体を診ます。
全体を診て何も異状がないこともありますから、そのときは「何もない」というのが証明できて、患者さんにとって安心につながりますよね。

口全体をひとつの単位としてとらえる「1口腔1単位」の考えとは?

インプラントを入れようと決めている患者さんで、費用は納得していても「手術が痛そうだな」と不安を抱えている場合、その不安をどのようにして軽減させるとよいでしょうか?

痛みが出ないようにするためには、適切な処置が欠かせません。もうひとつ大事なのが、手術時間をいかに短縮するかですね。お口を大きく開けている時間が長くなれば出血と腫れ、そして痛みが出やすくなりますから、なるべくスピーディーに処置することを考えています。1本のインプラントを非常にシンプルに行うのであれば、15分ぐらいで終わります。もし、長くなりそうだったら、回数を分けます。
実は私も1本、インプラントを入れています。当院のインプラント治療をした第1号の患者が私なんです。インプラントガイドを使った精密な埋入を、同級生の歯科医に頼んで処置してもらいました。

インプラントが必ずしも最善とは限らないから、入れ歯をすすめることも

インプラントが必ずしも最善とは限らないから、入れ歯をすすめることも

患者さんの状態によっては、インプラントよりも入れ歯をすすめることがあるそうですね?

多数の歯が失われている状態で、いま残されている歯の保存を第一に考えるのであれば、入れ歯をおすすめします。
入れ歯の隠れた利点は、入れた瞬間に「箍(たが)」がかかりますから、いま残されている歯をひとまとめにしっかり保存していくというイメージです。
あるいは、入れ歯がちょっと嫌だなっていう感じになってくると、もう全部抜いてしまってインプラントを入れましょうというふうに、いろいろなパターンを選択できます。ですから、インプラントが必ずしも最善の策とは言い切れないのです。

保険外診療の入れ歯も取り扱っているそうですが、保険が適用される入れ歯との違いを教えてください。

まず誤解のないように申し上げておきますと、保険適用の入れ歯がダメということではありません。ただ保険外診療の場合、やはり構造的なところで、保険ではできないことができるということです。
いわゆる部分入れ歯は、隣の歯に引っ掛けて支えるのですが、装着感がまるで異なります。私どもはリジッドな入れ歯という言い方をしていて、支える側の歯と一体化するような感触です。
入れ歯の利点としては、手術が不要であることと、取り外しができますから自分でメンテナンスできることですね。とはいえ、定期的に通院していただいてチェックすることは必須だとお考えください。

やはり、入れ歯でも定期メンテナンスは必要なのですね?

患者さんには「基本的に、管理を丸投げしてください」と言っています。なぜなら、自分の口の中のことを、皆さん意外と意識しておられない。たとえば「今、歯は何本ありますか?」と尋ねても、即答で正しく答える方は少ないです。そういったことを考えると、患者さんご自身で把握しておくこと自体に無理があると私は思うんですよね。
ですから、お口の中の状況も含めて、管理も私たちにまかせていただきたいというか、丸投げしてください。患者さんの履歴はこちらに記録がありますし、衛生士も担当制になっていますから、患者さんの事情を把握しています。そうやってまかせていただいているほうが、結果的に後からトラブルも少ないかなと思います。

インプラントと入れ歯それぞれに、治療が済んだあとに患者さんがやってはいけない行為は何でしょうか?

まず、インプラントを埋入した後は、必ず禁煙してもらう必要があります。というのは、喫煙すると血流が悪くなりますから、毛細血管へ流れる血液が不足します。そうなると、細菌が感染したとき、十分に戦えません。結果、歯周病が悪くなるということです。
入れ歯は、ちょっとゆるんだかなと感じたときに、自分で調整することは控えていただきたいです。自己判断で入れ歯をいじると、支えている隣の歯に不具合が出ることがあるので、良い結果は生まないですね。

インプラントが必ずしも最善とは限らないから、入れ歯をすすめることも

よい歯科医院を選ぶポイントのひとつは丁寧な対応ができる歯科衛生士がいること

よい歯科医院を選ぶポイントのひとつは丁寧な対応ができる歯科衛生士がいること

「よい歯科医院」を選ぶポイントはなんでしょうか。先生の考えをお聞かせください

一言でいえば、丁寧な対応ができる歯科衛生士が在籍している医院だと思います。医師が治療をして、その後のケアは歯科衛生士が行います。ということは、患者さんは、医師よりも衛生士とのお付き合いのほうが長くなるわけですからね。
それと、患者さんのお困り事をしっかり引き出してくれること。天然の歯ありきで考えるのがもちろん筋なのですが、その歯をダメになるまで残しておくことがいいのか、それとも早めの対応として戦略的に抜歯し、インプラントもしくは入れ歯にしたほうがいいのかという判断を下すには、やっぱり患者さんとのコミュニケーションが大事です。

ちなみに、貴院のインプラントと入れ歯の費用を教えてください

インプラントは1本あたり550,000円(税込)、入れ歯は部分床義歯が660,000円(税込)です。

よい歯科医院を選ぶポイントのひとつは丁寧な対応ができる歯科衛生士がいること

ありがとうございました。最後に、Medical DOCのサイトを訪れる読者にメッセージをお願いします

口元の不具合は、やがて全身へつながっていきます。20代30代の若い世代にはなかなか実感が湧かないと思いますが、だからといって何歳になったら対応する、というものでもありません。すべての患者さんにインプラントが良い方法とはいえませんが、いかに長く良好な状態を維持できるかという治療方法を考えたとき、インプラントはメリットが多いと思います。
私は、将来起こり得るトラブルを予測した治療計画をいつも考えています。長いお付き合いにはなりますけれど、足を運んでいただければ、患者さん一人ひとりに寄り添った具体的なお話をさせてもらえるかなと思います。

編集部まとめ

木と森に喩える「1口腔1単位」の考え方や、入れ歯をすすめることがある理由など、わかりやすい説明が頭にすんなり入ってくる印象です。日頃の診療でも、患者さんとはきっとこのように接しておられるのだろうなと、容易に想像できました。そして国内のみならず、海外へも積極的に出かけて自己研鑽に励み、知識と技(わざ)を磨き続ける姿勢は、まさに安心して治療もメンテナンスも「丸投げ」できる医師の姿だと感じました。

深野歯科医院

医院名

深野歯科医院

診療内容

インプラント治療 一般歯科 審美治療 など

所在地

大阪府堺市西区浜寺諏訪森町中2丁186-12

アクセス

阪堺電軌阪堺線「船尾」駅より徒歩すぐ
南海本線「諏訪ノ森」駅より徒歩3分

この記事の監修歯科医師