「抜くしかない!」そう言われた歯でも残せる可能性をつなぐ根管治療とは?【大阪市城東区 ヒデ歯科クリニック】

重度のむし歯、歯周病など、歯を失う原因はさまざま。しかし、一度歯を失ってしまえば、見た目が損なわれるばかりでなく、噛む力が低下して生活の質に大きな影響が及ぶ。そのため、可能な限り自分の歯を残すための治療法が重要になってくる。そこで注目されているのが精密な根管治療だ。細菌に感染した歯髄を取り除き、肉眼では見えにくい歯の根の内部を徹底消毒し、抜歯という選択を極力排除していくという。 大阪市城東区の「ヒデ歯科クリニック」では、「抜くしかない」といわれた歯でも、できるだけ抜かずに希望をつなぐ根管治療に力を入れている。マイクロスコープを用いた精密治療や、院長自身が患者になってみて痛感したからこそわかる、患者への配慮も見逃せない。同院院長の板東秀典先生に、根管治療について詳しく伺った。
歯を残すことのメリットと根管治療の重要性
根管治療とは、実際どのような治療を行うのですか?
まずはCBCTと呼ばれるレントゲン写真を撮影し、事前に治療する歯の解剖を三次元的に把握し、治療難易度の判定とシミュレーションを行います。そして、実際の治療ではラバーダム防湿を行い、唾液による汚染を防ぎます。次に、細菌に感染した歯の中をしっかりと観察します。その後、歯の根っこの長さを計測し、その中にある神経をNi-Tiロータリーファイルと呼ばれる専門の器具を用いて全部取ってしまいます。ここでのポイントは、本来の形態を大きく損なわないようにすることで、歯が折れるなどの二次被害の予防につながります。そして消毒薬でしっかりと洗浄をして、バイオセラミックス系シーラーと呼ばれる薬剤で根っこの中を埋めます。最後に、レントゲン写真を撮影し、治療に問題がないことを確認したのちに、土台を立てて、被せ物をします。

貴院の場合、根管治療をする判断基準はどのようなところにありますか?
当院は診査を重点に置いています。マイナス30度に冷やしたスポンジを歯に押し当ててみて、染みている感じが10秒以上続くと神経に何らかの変性すなわち炎症があると判断します。 最終的には、直接神経を確認して、色合いや止血時間から判断します。毛細血管などの構造が破壊されていない、かつ止血が5分以内に可能である場合は歯髄温存療法と呼ばれる歯の神経を残す治療を行います。しかし、ともに厳しい場合は、歯の神経を取り除く根管治療が必要だと判断します。
根管治療ができないときは、やはり抜歯になりますか?根管治療をやってもダメだという症例もあると思われますが、その点はいかがでしょうか?
当院における抜歯の基準は、むし歯を取り除いた後、歯がどこまで残るかで判断をしています。つまり、歯の根っこ部分が十分長く、歯冠(歯の頭の部分)との比率が同じかそれ以上であれば歯を残します。もし、頭より根が短くて頭でっかちになる場合は揺れが必ず残ってしまうので、残念ですがそのときは抜かざるを得ません。ほかには、指で抜けるぐらい上下に揺れている場合も抜歯になります。
やはり抜かないほうがよいに越したことはありませんね。歯を抜くことにはどんなデメリットがありますか?
歯を抜いた部分に、食べ物が挟まりやすくなります。速やかに清掃をすればむし歯や歯周病のリスクにはなりませんが、放置しているとそれぞれの病気になりやすくなります。また、無くなった歯と噛み合っていた歯が伸びてきます。実際に伸びているわけではなく、「能動的萌出」といって、歯が骨から抜け出している状態になっています。 ほかには、もともとそこに三叉神経の刺激が入るはずですが、歯がなくなったことで刺激が入らないので、脳への感覚入力の減少が生じ、側頭葉・海馬領域の活動低下が起きるとも言われています。長期的には認知症のリスク増大につながる恐れがあります。

では逆に、歯を残すことのメリットについてお聞かせください
歯を残すことで、その歯でしっかり噛めるのでいつまでも美味しく食事ができます。歯があれば見た目も自然です。ほかには、先ほど述べましたデメリットを避けることができるのが大きいです。 歯を失ったときの治療としてインプラントは優れていますが、かなり高価な治療になるので、それを避けることができるのもメリットのひとつといえます。
患部をつぶさに観察できるマイクロスコープで精密治療

貴院での根管治療の流れを概略教えてください
まずは診査から始めます。その次にカウンセリングを行い現状説明とどのような治療が必要になるかなどを話します。痛みがある場合は応急処置を行います。カウンセリングで納得していただいたら、実際に治療に入ります。局所麻酔を行ったのちにラバーダム防湿をします。まずはむし歯を徹底的に取り除きます。そこから、歯の内部の観察を行い、神経の入り口をすべて見つけます。そして根っこの中の汚れを除去し、消毒薬で何度も洗浄します。根っこの中の汚れがなくなったら、根管充填を行い、土台をつくって被せ物をするという順序です。 当院での根管治療は最短1回で終わりますが、再治療の場合は2回以上になるときもあります。なぜ少ない回数で終わらせるかというと、治療回数が多いと新しい感染が入りやすくなるからです。あと、根っこの治療はお口を数十分も開けていないといけないので、そのようなしんどい治療は減らしてあげたいという願いもあります。 今の世界的な潮流だと、1回か2回目で終わらせるというのが基準になっています。
治療回数が多くかかる患者さんはどういう状態なのでしょうか?
再治療の場合、被せ物を外して中に金属の土台が入っていると、それを除去する作業に手間取ります。また、むし歯に冒された部分を全部取ると壁がなくなるので、根っこの治療の前にプラスチックで壁をつくる必要があります。壁をつくってからやっと根っこの治療を始めることができますが、大体は壁をつくるまでの処置で1回になってしまいます。言い換えれば、金属の被せ物の下はそこまで大きな虫歯になっていることが多いということです。 あと、根管閉塞や石灰化と呼ばれるような、根っこの入り口が封鎖されている場合や根っこが極端に細くなっている場合は、とても時間がかかります。
神経を抜いた後でも、根管の掃除をしているときに痛みを感じるようなことがあります。神経がないはずなのに、それはなぜですか?
根っこの先に血流があって、骨の中にも神経があります。そこにファイルと呼ばれる器具で刺激をした時に痛みが出ます。神経を抜いたはずなのに痛みを感じたことで、それが恐怖となって治療をためらう患者さんもいらっしゃいますので、できるだけ安心してもらうために、事前に根っこの先を触る時は痛みが出やすいことを患者さんに伝えます。 痛みを伴う治療なので、もちろん局所麻酔もします。本当に痛みが怖い人には、治療を始める1時間前に痛み止めを飲んでいただくことにしています。そうすると麻酔が効きやすくなるに加え、患者さんの心に「痛み止めを飲んだ」という安心感をもっていただけます。
貴院では治療設備にマイクロスコープが導入されていますね
マイクロスコープは肉眼の最大20倍に拡大して患部を観察できる、優れた治療機器です。大臼歯だと3~6つの根っこがあって、その中のひとつでも見落としてしまったら再発してしまいます。見落としがないように、拡大してつぶさに観察しています。
根管治療の保険外診療に関して教えてください
現状では、神経が生きている歯の神経を取る治療には当院では保険が適用されます。それはマイクロスコープを使用する・しないに関係ありませんし、ラバーダム防湿は全ての症例でマストにしています。 保険外の治療になるのは、再治療の場合です。もともと治療してある歯に細菌が感染して、根っこの先で炎症を起こしてしまうと当院では保険外診療になります。これは再治療の場合は、抜歯のリスクが高くなっているため、慎重に治療をしないといけません。そのために、プラスチックで壁をつくることや、前医の治療の修正が必要になりますが、これは保険治療では含まれていません。安全に確実な治療を行うためには絶対に必要であると私は考えていますので、保険治療ではなく自由診療で行っております。また、1回60~90分と長く時間を確保できるのも心理的な余裕ができ、かなり集中して治療をすることができます。 参考までに治療費は、前歯が55,000円、小臼歯が77,000円、大臼歯が99,000円になります。いずれも税込みの金額です。

自ら患者になってみてよくわかった患者への配慮

根管治療を受けた患者さんが治療後に気をつけることは、歯磨きのほかに何でしょうか?
神経がある歯は、噛み過ぎたら「これ以上は危険」と察知してパッと放すのですが、神経のない歯にはその反応が出ないので、噛み過ぎてしまうことがあります。その結果、力がかかりすぎて歯が割れてしまう可能性が出てきます。氷のブロックなど固い食べ物は避けたほうがいいでしょうね。就寝時の食いしばりにも注意が必要です。 ちなみに、歯の神経を抜くと歯が弱く脆くなるといわれているのですが、データを見ていくとそれほど違いはないようです。ただ、神経を抜いた歯の方が折れやすいのは事実でして、歯の脆さというよりはリミッターが効かず食いしばってしまうため割れやすいと考えられています。 割れてしまうと、最悪の場合は歯を抜くことになるので、固い食べ物には注意してほしいと思います。
根管治療を行う際に、先生はどんなことを心がけていますか?
患者さんの困りごとを丁寧に聞き出すことはもちろんですが、費用や通院回数の不安もあると思います。 費用に関しては、20万円を超える部分は金利なしの3分割でお支払いが可能です。治療回数に関しては、先ほど申し上げたように最短1回で終わります。
治療あたって、患者の気持ちはやはりよい歯医者さんに巡り遭うことです。患者の気持ちに寄り添ってくれる、そんな歯医者さんを選ぶポイントなどはありますか?
じつは僕も計4本、根管治療を昨年に受けています。中学生のときに治療したところに、昨年激痛が出て、私の師匠に再治療をしてもらいました。そのときに「こんなに痛いんだな」ということと、口を開け続けるのも大変だということを実感しました。 今心がけているのは、いかに患者さんが楽になるかということです。たとえば、根管治療は30分から1時間ぐらい口を開けっぱなしになるのですが、自分でやってみたら、治療の途中から顎の感覚がなくなってくるのです。ですから、顎に負担をかけないようにバイトブロックと呼ばれるやわらかいシリコンを噛んでもらいます。ほかには、唾液がたまってくるので、バキュームで適宜吸引するようにしています。
歯科医として活動する上で心がけていらっしゃることはありますか?
きちんと正しい治療ができるということと、やっぱり患者さん来ていただいた以上は治さないといけないと思っておりますので、僕としては徹底的に治療します。病気があればしっかり治す。歯科医としては、やっぱりきちんと治したいっていう意識を持ってやっています。 そして、患者さんにとってやはり一番メリットがあるのは、少ない費用で治療回数も少なくて済むということではないでしょうか。当院では新しい技術と設備で、体にも負担のない治療を目指しています。

最後に読者に向けてメッセージをお願いします
当院では保険診療・保険外診療にかかわらず、治療する歯の周りをゴムのシートで覆うラバーダム防湿を必ず行っています。これをした方が術者も患者さんも楽であり、口の中の唾液や細菌が治療部位に入り込まないように徹底配慮して治療を行いますので、安心してください。もし、過去に「歯を残せない」とか「根っこの治療が難しくてできない」と言われ悩んでいる方がいらっしゃれば、当院へ来ていただくと残せる可能性は高いと思います。お気軽にご相談ください。



