再発のない根管治療のために、 ラバーダムを使う歯科を選びたい【札幌市豊平区 山田歯科・矯正歯科】
むし歯が進行したときに行う「根管治療」は、「神経を抜く」治療として比較的メジャーな施術だが、手順や治療の精度には歯科医院によって違いがあるようだ。歯の寿命に深く関わる治療なだけに、治療の際には信頼できるクリニックを選びたい。2023年4月に開院した山田歯科・矯正歯科では、再発のリスクを抑えるため、あらゆる手を尽くして治療を行っている。その詳しい治療法を山田怜院長に聞いた。
山田 怜(やまだ りょう)
山田歯科・矯正歯科 院長
2021年3月に北海道大学義歯補綴科大学院卒業、博士号を取得後、北海道大学病院義歯補綴科客員臨床医師を経て、2023年4月に開院。祖父の代から続く角田歯科医院を継承し、山田歯科・矯正歯科として再スタートを切った。日本補綴歯科学会認定医。日本口腔インプラント学会、日本歯周病学会、日本有床義歯学会所属。国際的な勉強会グループITI(International Team for Implantology)にも所属し、日々、自己研鑽を続けている。
治療にラバーダムを使うか否かで、再発リスクは大きく変わる
根管治療とは、どのような治療なのかを教えてください
歯の根にある組織が細菌感染したときに行う治療のことを「根管治療」といいます。健康な歯の根に細菌はいませんが、むし歯が進行すると歯の組織内部にまでむし歯菌が侵入して歯の神経が死んでしまいます。この場合、根管治療で細菌や死んだ組織を取り除きます。根管治療をしている時に唾液に含まれる細菌が新たに入ってしまうと、数年で再発し、再び根管治療を行わなければいけなくなります。
しかし再治療時には、すでに歯の神経を抜いているため、ご本人が異常に気づきにくく、感染が根の先まで進むことがあります。こうなると治療はさらに難しくなり、成功率も下がってしまいます。とにかく根管治療では、細菌の侵入を防いで治療することが何より大切です。
治療しても、細菌感染のリスクは残るということですか?
再治療になる原因として、大きく二つの可能性があります。一つは、患者さんの口腔内が細菌でいっぱいだった場合です。神経を抜く根管治療は、決して簡単なものではありません。
たとえば手を切ったとき、神経が出るほどの傷となると間違いなく大ケガですが、それは歯も同じです。それほど大事な処置をするときに、手術室となる口腔内が細菌だらけだと、治療中や治療後の仮の蓋の状態での細菌感染のリスクは上がります。
もう一つは、治療側の問題です。細菌は目に見えませんので、どんなに技術力のある歯科医師が細心の注意を払っても、完全に細菌が入らない環境を作らない限り、細菌感染を許す余地は残ると思っています。
完全に細菌が入らない環境とは、どういうことですか?
根管治療を受ける際に確認したい治療法ですね。保険は適用されるのでしょうか?
はい。当院では、保険治療・自費治療のどちらでも行っています。ラバーダムは使い捨ての器具ですので、ご安心ください。
歯は、一生使い続けるものです。だからこそ、歯を残すための治療が一番大切だと思います。特にラバーダムは、根管治療を行う上で必須の器具だと思います。
再治療になった場合でも、歯を残す治療法はある
細菌感染の再発では自覚症状が少ないとお聞きしましたが、早期発見の手立てはありますか?
神経を抜いた歯の細菌感染では、歯に痛みは感じませんが、歯茎にニキビのようなできものができることがあります。これが一つのサイン。体調によって、できものが出現したり消えたりするという場合でも、一度歯科で検査した方が安心です。
急性症状の場合は、歯茎が腫れたり、膿が出たりして、痛みを伴うこともあります。このようなときは、すぐに受診してください。
最初の根管治療から時間が経つと、再発の危険性が高まります。特に金属の詰め物をした、一般的に銀歯と呼ばれる歯は、時間の経過とともに詰め物と歯との間に微細な隙間が生まれ、そこから細菌が侵入する可能性があります。10年も前に治療したような場合は、再発のリスクが高いといわざるを得ません。レントゲンに病巣が映ることもありますが、歯科医師が見て怪しいと思った場合は、根管の再治療を提案します。
根管の再治療は、さらに難しいとおっしゃっていましたね
前回の治療がどのような形で行われたかがわからないため、本来あるはずの根管が壊されていたりすることが再治療を難しくする一因です。加えて、歯の根の形状が複雑だと重症化しやすく、治療も難しい。そのため再根管治療の成功率は約60%と言われています。また、根は枝分かれしていることもあり、枝分かれした根の先まで病気が広がっていると、外科的な処置が必要になります。
歯の神経を抜いたあとの治療は、抜歯しかないと思っていました
クリニックによっては、抜歯で治療するところもあります。もし他院で抜歯をすすめられたときは、一度当院にお越しください。他院で治療を進めてしまうと、治療の内容や方針の違いなどで当院での治療が難しくなることもありますので、「根管治療が必要」と診断されたら、セカンドオピニオンの一環として当院を受診いただけると治療の選択肢が増えると思います。
歯への関心が、歯の寿命を左右する
再発を防ぐために患者側にできることは、口腔内の清潔を保つことですか?
口腔内の細菌を減らすことは、とても重要なポイントです。
当院の場合、痛みが強いときは応急処置を優先しますが、それ以外の時は治療効果を上げるためにお口の清掃や歯ブラシ指導を徹底的に行ってから治療へと移行していきます。そのために口腔内写真をはじめ、様々な画像や動画、検査結果を視覚的に患者さんにお伝えするように努めています。そうすることで歯の大切さや治療への理解も進み、生涯にわたってご自分の歯で何不自由なくご飯が食べられることにつながると思っています。
情報を把握し、共有することが大切なのですね
患者さんの歯ですから、ご自身で状況を把握することが重要です。初診時は歯周病や虫歯の状態など徹底的に情報を検査し資料を集めます。また、患者さんが『本当に悩んでいるのはどんなことなのか』『今まで歯科治療されてきてどうだったのか』など患者さん自身のことについてもよくお話を聞かせていただきます。
2回目は、歯周病のリスク評価や唾液検査です。唾液のなかにいるむし歯菌の種類や量、唾液の分泌量を測り、食生活をお尋ねしてむし歯のリスクを判定します。加えて、口腔ケアの指導や歯のクリーニングも行います。結果は3回目の診察でお知らせします。
唾液検査が高額なクリニックもあるそうですが、当院の検査費は1,600円(税込)なので、みなさんに受けていただいています。むし歯リスクに応じて、歯磨き粉などの口腔ケア製品の選び方や食生活についても患者さんが続けられる無理のない範囲でアドバイスさせていただきます。
治療に入るまで、ステップがありますね
あえて、このシステムを取っています。やはり口腔内の環境が改善されなければ、治療の質も落ちますし、頑張って治療をしても結果的に短い期間で再治療になる可能性が高くなります。治療を繰り返すのではなく、根本を正すことで、治療を必要としない状態に持っていきたい。そのため当院では、治療の前に3回にわたって口腔ケア指導やクリーニング、お口の中の情報共有を行って口腔内の衛生状態を引き上げ、4回目で治療計画を説明しています。
お話を聞いていて、患者側の意識改革が必要だと感じました
お口の健康を守れるのは、ご自身だけです。最近では、歯周病が原因で全身疾患や認知症を引き起こすこともわかってきました。メンテナンスに通うことは非常に重要ですが、ただ歯科医院に通っているだけではお口の健康は守れません。365日のうちメンテナンスに通う数日だけお口の中が綺麗になっても効果はそれほどないのです。近年、歯周病が糖尿病や認知症、低体重児早産など全身への関与がわかってきました。歯のことを軽んじて異常を放置するリスクは、とても高いといえます。
人生100年といわれるいま、歯の寿命も延ばせるように考えていかなければなりませんね
根管治療の被せ物には、自由診療にはなりますがセラミックでの治療をおすすめしています。保険診療の場合、使える素材に制限があるため性能の高いセラミックは使えません。セラミックの利点は、細菌が付きずらく、適合精度も高いため、再発のリスクを抑えられる点にあります。デメリットとしては、保険適用外のため高額になってしまいます。ただ、再発のリスクを抑えられることを考えれば、デメリット以上にメリットがある素材であると考えております。費用は、インレー、アンレーは5万円、ラミネートベニアは8万5,000円、ジルコニアは臼歯部7万円、前歯部8万5,000円、オールセラミックは10万円です。
当院の患者さんのなかには、自由診療で根管治療をご希望になる患者さんもいらっしゃいます。自由診療のメリットは、治療期間の短縮が図れること。時間の制約を受けずに治療できるので、一回の診療時間は長くなりますが、通院回数は少なくてすみます。自由診療の場合、奥歯は10万円、それ以外の歯は6万円です。
※費用は全て税込です。
根管治療を受ける際には、どのような選択肢があるのか確認することが大切ですね
いまは、全国どこの歯科医院でも同じ治療をするという時代ではありません。歯科医師の考え方や方針で、治療にも選択肢が生まれています。治療計画や方針をしっかり説明してくれる歯科かどうか、また望む治療が可能かどうか、患者さんもある程度の知識を持って治療に臨むと、後悔のない治療ができると思います。
いつまでもご自分の歯で、人生を豊かにお過ごしいただきたい。そのために、歯科医として私も全力を尽くしていきます。
編集部まとめ
治療方法に無知でいては、大切な歯を守れないと実感しました。同じ保険適用の治療でも、歯科医によって大きな違いがあります。反対に、自由診療であれば安心というわけでもありません。重要なのは、どのような装置や器具を使って、どんな手順で治療するかということ。長くなった人生を楽しむために、歯の健康管理はこれまで以上に重要です。だからこそ、歯科医院選びにも慎重さが求められると改めて思いました。