【雑誌「Hanako」コラボ #4】胃もたれや胸焼け、これって「胃の衰え」?《胃腸科》
人気雑誌『Hanako』とコラボレーション。副編集長の佐藤あやが、体に関するさまざまな情報を専門医に聞く対談連載の第4弾は、「内視鏡」をテーマに消化器内科専門医の寒河江三太郎さんをお招きし、詳しい話をききました。
※2022年5月27日発売の「Hanako」に掲載された記事をMedical DOC用に再編集しています。
監修医師:
寒河江 三太郎(厚木胃腸科医院 院長)
日本消化器内視鏡専門医。北里大学医学部医学科卒業後、稲城市立病院、平塚市立病院を経て、慶應義塾大学一般・消化器外科教室に所属。2015年、父が開いた〈厚木胃腸科医院〉の院長に。
CLINIC DATA
50年前からこの地で続く、地域に根ざした病院。苦痛の少ない内視鏡検査で、病気の早期発見、早期治療、予防を目指す。神奈川県厚木市妻田南1-16-36 TEL 046-223-1155 9:00~12:00、15:00~17:00(土は第2・4のみ)、17:00~19:00(月水のみ) 火日祝休
佐藤あや(「Medical DOC」副編集長)
モデル、ハナコラボ パートナー。最新医療に関心が高く、2021年8月から「Medical DOC」副編集長に。YouTubeチャンネル『教えてドクター・Medical DOC』などで活動。一児の母としての目線も。
30代からの胃の不調は内視鏡検査が鍵に
佐藤あや
30代になって、胃もたれや胸焼けをすることが増えた気が。食べ過ぎてはいないのに、なぜでしょう?
寒河江先生
原因は、慢性胃炎や機能性ディスペプシアなどいろいろと考えられ、胃に生息する細菌、ピロリ菌への感染が関与していることが多いですね。病気を特定するには内視鏡検査(胃カメラ)が近道です。
佐藤あや
胃カメラではどんなことがわかるのでしょうか?
寒河江先生
まずは慢性胃炎があるかどうかを確かめます。慢性胃炎は、タバコ、酒、ストレス、ピロリ菌などによって胃が老化している状態のこと。必ずしも症状が出るわけではないのですが、がん化してしまうリスクになるため、悪化を防ぐことが大事です。ピロリ菌がいる場合には、退治する治療に入ります。これだけで悪化の予防ができて、がん化の予防効果もあるのですよ。若い方ならさらに効果が期待できます。
佐藤あや
私も最近、我慢できないほどの胃痛が何度も続いて、薬で治っても、またぶり返すという悩みがありました。それで「ピロリ菌が原因なのでは?」と自発的に内視鏡検査をしたのです。診てもらうと病気の可能性が潰せて安心。
寒河江先生
ピロリ菌が原因で機能性ディスペプシアになる人も多いのですよ。ピロリ菌を退治するだけで、症状が良くなる場合も多くあります。
佐藤あや
先生、機能性ディスペプシアとは聞きなれないのですが。
寒河江先生
ここ5~10年くらいで主流になってきた疾患概念なので、無理もないですね。簡単にいうと、胃の流れが悪くなったり、知覚過敏になって少しの刺激にも痛みを感じたりしてしまうこと。症状としては、食後にお腹が張ることや、水を飲んだ時に胃が染みることがあります。逆流性食道炎に関与していることも。この病気は、内視鏡で見ても胃は綺麗で、荒れていないのです。胃カメラとエコーの検査をして、異常がなければ機能性ディスペプシアの可能性を考えるという具合ですね。
佐藤あや
なるほど。消去法ですか。だからこそ胃カメラが大事だと。
寒河江先生
機能性ディスペプシアの治療は、睡眠や食事など生活習慣の見直しが第一。それで良くならなければ、胃の粘膜を保護したり胃酸を抑えたりする薬を服用し、それでもダメなら抗うつ剤などで神経の過敏さを抑制します。
佐藤あや
ピロリ菌で胃を老化させないためにも、胃カメラは若いうちに受けた方がいいのでしょうか。
寒河江先生
10代での検査は、主治医とよく相談してみてください。20~30代なら比較的悪性腫瘍の頻度は少ないですが、症状の期間や出方、体重減少や貧血・黒色便などのほかの症状によっては積極的な検査がおすすめ。まずは近くの胃腸科や消化器内科で相談することが大切だと思います。
佐藤あや
では、いつから始めるのがいいですか?
寒河江先生
たとえば、症状がない方でもご家族に胃がんなどの家族歴があってリスクの高い方は35歳からをおすすめします。そうでない場合にも40歳からは定期的な内視鏡検査を推奨しています。どの程度の期間で内視鏡検査を受けるかは、正確な基準はまだありませんが、当院では内視鏡所見に応じて1~2年間隔で受けるのがよいとお伝えしています。特に、除菌済みの人も含めてピロリ菌保有者には、ぜひ受けていただきたい。バリウムよりも精度が高いですし。
佐藤あや
とはいえ、痛い、怖い、というイメージが拭えません……。
寒河江先生
病院によって方法は違いますが、当院では経口内視鏡より細い経鼻内視鏡を口から入れて検査します。今はだいぶ進化していて、胃の状態を見る程度なら経鼻内視鏡でも問題なし。希望者には静脈麻酔をするので、眠ってしまって検査自体覚えていないという人もいます。
佐藤あや
毎年受けるなら、苦しくない方が続けられそうですね。
寒河江先生
まさに私が大事にしていること。苦手意識があると病院にも行きたくなくなりますから。
佐藤あや
病院選びは何が基準に?
寒河江先生
内視鏡検査は一回で終わりではないので、長く付き合える医院を見つけましょう。ちょっとした相談にも親身になってくれる先生がいいですね。まずは検査のことは置いておいて、体の不調を話してみるところから。消化器内視鏡の専門医がいると安心です。
photo : Yoichiro Kikuchi
illustration : Ema Mori
hair & make : Akina Higuchi
text : Kahoko Nishimura