インフルエンザのワクチンを打った方が早く治る? 子どもに感染させない対策を医師が解説

インフルエンザエンザウイルスは毎年変異するため、毎年その年に合ったワクチン接種が必要です。予防接種を受けても感染することはありますが、ワクチンの大きな役割は感染そのものの予防よりも「重症化の防止」にあるそうです。子供への感染予防の観点から、「ソージュ山下町内科クリニック」の中村先生にワクチンの効果について伺いました。
編集部
基本的にインフルエンザの予防接種って毎年ですよね?
中村先生
はい。インフルエンザウイルスが少しずつ「姿を変え続ける」のが理由です。このため、毎年、その年の姿に合わせたワクチン接種が必要となります。また、ワクチンを接種したとしても、インフルエンザにかかることがあります。厚生労働省の乳幼児を対象とした研究によると、「インフルエンザワクチンの発病防止効果は20~60%」とのことです。
編集部
20%って、本当に必要なんでしょうか?
中村先生
インフルエンザのワクチン接種に限って言うと、感染予防というより、「重症化防止」の役割の方が大きいと考えています。肺炎や脳炎などへの進行、生涯にわたって抱えるような後遺症、あるいは異常行動などを防ぐという考え方ですね。
編集部
治り方はどうでしょう。接種していた方が早いと考えていいですか?
中村先生
重症化を防ぐわけですから、「早い」と考えていただいて構いません。また、そのことにより、ほかの病気を併発した場合でも、早期の回復が見込めます。最悪なのは、インフルエンザも重症で、ほかの病気も重症というパターンです。このような事態を、インフルエンザのワクチン接種で防いでいきましょう。
編集部
周りの大人も、インフルエンザに気をつけないといけないと?
中村先生
ワクチン接種による予防効果が100%ではないことを考えると、非常に大切な発想です。「かかる可能性がある人を1人でも少なくしていく社会的責任」のようなものが、感染症対策には求められます。とくに1歳に満たない赤ちゃんの場合、「家族からもらうケースが全て」と考えていいでしょう。
※この記事はメディカルドックにて【インフルエンザの予防接種は何歳から受けるべき?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

監修医師:
中村 蓉子(ソージュ山下町内科クリニック 院長)
東京医科歯科大学医学部医学科入学後、海外留学を経て、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程神経病理学分野入学、修了。東京医科歯科大学医学部附属病院や横浜市立みなと赤十字病院へ勤務後の2020年、神奈川県横浜市に「ソージュ山下町内科クリニック」開院。予防の観点から、定期的に相談できるかかりつけ医を目指している。医学博士。日本内科学会認定内科医、産業医、協力難病指定医。