重症化すると“壊疽”や“足の切断”になる「末梢動脈疾患」 治療法を医師が解説
「末梢動脈疾患」は進行すると潰瘍や壊疽を引き起こし、最悪の場合、足の切断に至ることもある病気です。早期発見が重要ですが、適切な治療を受けることで予後を改善し、重症化を防ぐことが可能です。「TOWN訪問診療所城南院」の宇都宮誠先生に、末梢動脈疾患の治療法について詳しく聞きました。薬物療法や手術療法、運動療法、食事療法など、4つの治療アプローチを分かりやすく解説します。
監修医師:
宇都宮 誠(TOWN訪問診療所城南院)
編集部
末梢動脈疾患はどのように治療するのでしょうか?
宇都宮先生
主に「薬物療法」「手術療法」「運動療法」「食事療法」の4つがあります。末梢動脈疾患に対する薬物治療では、症状を軽減する薬と予後を改善する薬があり、歩行時の足の痛みを軽減する薬にはシロスタゾールというものがあります。心臓に病気があると使いにくいなどのデメリットはありますが、歩行時の症状は軽減できます。潰瘍・壊疽に至ってしまうと、医学的根拠のある薬は少なく、血行再建術という手術が必要になる場合が多いですね。
編集部
予後を改善する薬はどのようなものですか?
宇都宮先生
予後を改善する薬としては抗血小板薬、いわゆる血液をサラサラにする薬です。心筋梗塞や脳梗塞など全身の動脈硬化疾患を予防します。近年では新しい抗凝固薬が承認され、いま期待が高まっています。
編集部
手術療法について教えてください。
宇都宮先生
薬物治療や運動療法で改善しない歩行時の痛み、足の潰瘍・壊疽に至ってしまった場合には、血流を改善する治療が必要です。詰まった血管の先まで血液を送る治療にはバイパス手術とカテーテル手術という2つの方法があります。病変の部位や血管の長さなどによって治療法が選択されます。一般的にはバイパス手術の方が効果は長持ちすると考えられていますが、体への負担や入院期間が長くなるなどの問題があります。一方、カテーテル治療は体への負担が少なく、入院期間は短いので適応が拡大しています。潰瘍や壊疽がある場合には傷に対する治療も必要になるため治療は長期化します。
編集部
運動療法や食事療法についても教えてください。
宇都宮先生
歩行時の足の痛みに対しては運動療法も有効です。病院で理学療法士と一緒にプログラムを考え、歩行や筋力トレーニングを行います。長期的なことを考えた場合、食事療法も重要です。動脈硬化を予防する意味では一般的にバランスの取れた食事が良いと思います。また潰瘍・壊疽がある場合には傷の治りを良くするために栄養をとり、傷が治るために必要なエネルギーを補充することが重要と考えます。
※この記事はMedical DOCにて【重症化すると足の切断も!? 本当は怖い足の血流低下について専門医が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。