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「離人症」とは?症状・原因について詳しく解説!

 更新日:2023/03/27
「離人症」とは?症状・原因について詳しく解説!

離人症とは、周囲の出来事や人、自分自身などに対して現実感がなくなり、自分の感覚が普段と異なると感じる症状を示す病気です。離人症は10代から20代での発症頻度が高い とされています。
今回は、離人症について、症状、検査・診断、治療法を解説します。

岡田 夕子

監修医師
岡田 夕子(医師)

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滋賀医科大学医学部卒業。現在は、「ひだまりこころクリニック」、「五十嵐こころクリニック」にて勤務。精神保健指定医。日本精神神経学会専門医・指導医。

離人症とは

離人症とは、どんな病気ですか?

離人症とは

離人症とは、自分自身が認識している現状に対して現実感がなくなり、自分の感覚が普段と違うように感じる離人症状を繰り返す病気で、解離性障害の一つとされています。離人症状は、患者本人に激しい苦痛や社会生活における生活機能に大きな障害をもたらしますが、離人症状が出ていても、自分の考えが現実的か、合理的であるかなどを判断する現実検討能力は、正常に保たれて います。

離人感とは身体や精神から自分が切り離されたような感覚で、自分の生活を外から観察しているような感覚や自分が外界から切り離されているように感じます。

離人症状は一時的に発症する場合だけでなく、離人症状が生涯続く慢性離人症も見られます。

離人感や現実感消失は、離人症患者だけでなく、他の精神障害の症状としても見られる場合やけいれん性疾患などの身体的な病気の症状としても見られます。

患者に発生する離人感や現実感消失が薬物や他の精神障害によるものではなく、ひとりでに発生し、長期間持続したり、繰り返し発症したりする場合や、症状により患者が大きな苦痛を感じたり、家庭や職場で役割を果たせなかったりする場合は、離人症 と診断します。

離人症の発症は10代から20代に見られ、特に幼児期や小児期中盤に多く、40歳以上での発症はまれです。人口の2%程度に発症し男女差はありません 。

一時的な離人感や現実感消失は、よく見られる症状で生涯に約半数の人が経験しています。特に生命を脅かすほどの危険な経験、幻覚剤、マリファナ、ケタミン、エクスタシーなどの特定薬物の使用、激しい疲労、断眠、集中治療室での治療中に見られる感覚刺激の喪失などの後 に多く見られます。

離人症の症状

離人症の症状はどのようなものですか?

離人症の症状

離人症の症状は、自分自身の意識である自我意識や自己の感覚、周りの環境や物事に対して現実感が無く、自身が周りから疎隔されていると感じます。また、自分の意識が自分から離れ、自分を客観的に観るような状態になります。さらに具体的な感覚として、自分の感覚がこれまでと違う様に感じる、周りの世界が曖昧に見え夢の中にいるように感じる、現実感に手ごたえがない、自分の身体の大きさや形が依然と変わったように感じる、見たことのない光景を以前に見たと感じるデジャブ感、見たことがあるはずの光景を見たことがないと感じるジャメブ感などです。

これらの感覚はまるで周りの世界と自分の間にベールがあり、世界がぼやけているような感じと表現されたりします。

また、これらの症状は本人に耐えがたいほどの激しい苦痛をもたらし、不安や抑うつが見られます。多くの患者は、これらの症状の原因が脳に回復不能な異常が起きたからではないか、正気を失いかけているのではないかと不安 になります。

しかし、これらの離人症状を感じている間も、意識の混濁や見当識障害はなく、現実検討能力は保たれており、この点で精神性障害とは区別 されています。精神性障害の患者では自身の異常に対する認識が欠如しています。

多くの場合、離人症状は単独ではなく解離性障害など他の症状と同時に現れます。

離人感の症状は、徐々に現れたり、突然現れたりなど、出現期間はほんの数時間から数年におよぶ場合まで様々です。

症状の出現パターンは3つあり、症状の発生と消失を繰り返す人、症状が持続的に発生する人、症状が断続的から継続的になる人、それぞれ3分の1の患者で見られます。

離人症は悪化と軽減を繰り返し、重症化すると症状が数年から数十年続くこともあります。

離人感の症状

自分の体、精神、感情、感覚などが自分から切り離され現実感がない、あるいは自分がロボットになったように感じ、自分の言動を自分でコントロールできないと感じます。感情や身体が麻痺していると感じ、自分の生活を外から観察している、自分を生きる屍と表現することもあります。

現実感消失の症状

人や物などあらゆる物から切り離されていると感じ、外界のことが現実ではないと感じます。自分が夢や霧の中にいる、ガラスの壁や幕によって周囲から隔離されているように感じます。また、世界が生命感や色彩を失った人工物のように感じたり、世界が歪んで見えたり します。

例えば物がぼやける、異常に明瞭に見える、実際よりも平板に見えたり、大きさが違って見えたりします。音についても、実際と異なる大きさで聞こえたり、時間が現実と異なる速さで経過していると感じたり します。

その結果自分が本当に存在しているか不安になり、自分の知覚が現実のものかどうか繰り返し確認してしまうのです。

離人症の原因

離人症の原因はどのようなものですか?

離人症の発症については、そのメカニズムが明確になっていませんが、患者さんの中には、幼少期の虐待などのトラウマ(心的外傷)を体験されている方も多く見られ、強い恐怖感を避けるために、離人症が形成される という説もあります。

離人症に見られる離人感や現実感の喪失の原因としては、例えば小児期の情緒的虐待やネグレクト、身体的虐待、ドメスティックバイオレンス、親の身体的・精神的障害、愛する人の突然死など、人間関係、金銭、仕事などによる強いストレスを経験したこと、うつ病、不安、違法薬物やレクリエーションドラッグの使用 などが見られます。

しかし、25~50%の患者はストレスが比較的軽微であり、ストレスの特定が困難な場合も見られます。

離人症は、離人症状がありかつ、他の病気に合併しないものと定義されていますが、うつ病や不安障害、強迫性障害、パニック障害、境界性人格障害、統合失調症などの精神疾患でも見られます。

また、甲状腺、副甲状腺、膵臓などの内分泌障害、てんかん、脳腫瘍、脳外傷などの身体疾患、神経外科手術時の電気刺激や一部の薬剤投与時にも見られますが、離人症状が他の疾患に合併する場合は、離人症では無く主疾患による症状 と考えます。

しかし、これらを明確に鑑別することは難しい場合が多く、例えば当初は離人症のみが見られ、その後幻覚妄想が出現し統合失調症と診断される場合などもあります。

離人症の検査・診断

離人症の検査と診断はどのようにしますか?

離人症診断の診断は脳波や脳画像検査、血液検査による方法は確率されておらず、医師による患者の問診を行い診断基準によって決定します。ただし、離人症状が精神疾患や身体疾患によるものでないことを確認するための検査は必要 となります。

例えば、脳波、脳画像検査、神経学的所見、血液検査を行い、てんかん、脳腫瘍、内分泌疾患などの除外を検討 します。離人症状が身体疾患によるものであれば、その疾患を治療することで離人症状を改善することができます。

離人症の治療

離人症の治療はどのようなものですか?

離人症の治療薬として有効なものは開発されていませんが、離人症に伴う不安や抑うつ症状に対して、抗不安薬や抗うつ薬を処方します。また、カウンセリングや認知行動療法などの精神療法を行います。

離人症状が統合失調症やうつ病などの精神疾患やその他の身体疾患に付随して見られる場合は、それらの疾患に対して薬物療法などの治療方法を検討します。


編集部まとめ

離人症による離人感や現実感消失症状は、特に離人症の原因となっているストレス要因が明確な場合には完全な回復が期待できます。しかし、治療を行っても治療効果が慢性化する場合や自然に緩解する場合も見られる疾患です。

参考文献

この記事の監修医師

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