慢性腎臓病とは? 放置すると透析が必要になるCKDを早期発見する方法【医師解説】
CKD(慢性腎臓病)は、腎機能の低下や腎障害が持続する病気で、多くの場合無症状で進行します。放置すると透析が必要な状態や心筋梗塞などのリスクを高めることが知られています。本記事では、CKDの基本的な特徴や症状、腎臓の役割、そして予防方法について高柳ひかり先生に聞きました。
著者:
高柳 ひかり(筑波大学附属病院 腎臓内科)
共著者:
山縣 邦弘(筑波大学 医学医療系腎臓内科学教授)
編集部
CKDとはどのような病気なのか教えてください。
高柳先生
CKDは、血液または尿検査によって腎機能の低下や腎障害が持続している場合に診断される病気で、多くの場合は無症状に進行していきます。放置すると徐々に腎機能が低下し、透析などが必要な末期腎不全まで進行したり、脳卒中や心筋梗塞などによる死亡リスクが高まったりすることが知られています。
編集部
CKDの患者数はどれくらい多いのでしょうか?
高柳先生
日本では、生活習慣の変化や高齢化などを背景として年々患者数が増加しており、現在では成人の7人に1人が慢性腎臓病であると言われています。進行すると「末期腎不全」と呼ばれる状態になり、透析療法や腎移植が必要となる場合があります。また、心筋梗塞や心不全、脳卒中といった重大な病気とも深く関わっており、健康や生命を脅かすこともある病気として注目されるようになってきました。
編集部
そもそも腎臓にはどのような働きがあるのでしょうか?
高柳先生
腎臓は、主に血液中の老廃物を尿として体外に排泄する働きを持つ臓器です。腎臓の「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる部分で血液をろ過して尿のもとを作り、続く「尿細管(にょうさいかん)」で尿の成分を微調整します。そうして作られた尿は「尿管」を通って一時的に「膀胱」へ集められ、尿意を感じたときにまとめて排泄する、という仕組みです。
編集部
腎臓は尿を作るほかにも何か役割があるのでしょうか?
高柳先生
・体の水分量や血圧を調整する
・電解質(体にとって必要なミネラル。ナトリウムやカリウム、カルシウム、リンなど)を調整する
・酸性・アルカリ性のバランスを整える
・骨髄に赤血球を作るよう指令を伝えるホルモンを産生する
慢性腎臓病では、上に挙げたような腎臓の働きが低下することで、様々な症状や合併症が生じます。
編集部
CKDではどのような症状が出るのですか?
高柳先生
腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほどですので、初期にはまず自覚症状などはないものと思って下さい。症状が出るのはかなり進行した段階です。進行した場合の症状としては、からだに老廃物が蓄積してだるさや食欲不振などを引き起こす「尿毒症」、尿量が減って体に水分がたまることによるむくみや息切れ、その他、赤血球の産生が低下して貧血になり、息切れやだるさを生じる場合などもあります。
編集部
CKDを予防するためには、どのようなことに注意すればいいのでしょうか?
高柳先生
繰り返しになりますが、慢性腎臓病はかなり進行するまで自覚症状が表れにくく、多くの場合で初期には症状がありません。上に挙げたような症状や合併症が生じたときには、すでに腎臓の働きが大きく損なわれてしまっていることが多いのです。そのため、健康診断や人間ドックなどを毎年受診して早期に発見し、診断や治療につなげることが重要です。
※この記事はMedical DOCにて【慢性腎臓病(CKD)の早期発見のポイントを医師が解説 診断基準の「eGFR」とはなにか】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。