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「バレット食道」の原因や症状など解説!「食道がん」の発症リスクがあがる?

 公開日:2023/09/25
「バレット食道」の原因や症状など解説!「食道がん」の発症リスクがあがる?

本来、食道は胃酸の刺激から守られた粘膜で覆われています。

しかし、胃酸が繰り返し食道側に逆流することで、食道と胃の境目にある食道粘膜が強力な胃粘膜に似た上皮に置き換わる現象がバレット食道です。

バレット食道は生命に直接かかわることはありませんが、食道がんにつながることがあるので定期的に検査を受け早期発見し適切な治療をすることが大事です。

このため、本記事ではバレット食道について、原因・検査方法・治療方法・食道がんとの関連などをわかりやすく説明します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

バレット食道の原因

喉が気になる男性

バレット食道の原因を教えてください。

バレット食道は、食道の粘膜が胃酸の逆流・逆流性食道炎(胃が逆流を起こし、食道が胃酸などにさらされて炎症を起こす病気です。)に長時間さらされることで、胃粘膜のように変化してしまったものです。なぜこのような状態になるのでしょうか。
本来、食道は扁平上皮という幅広い細胞が内側を構成しています。一方、胃は円柱上皮といわれる細胞で覆われています。これは胃を守るためです。通常では食道と胃の噴門部が扁平上皮と円柱上皮の境目になるのですが、食道の粘膜が長い時間胃酸にさらされると、自己保護のために食道は一部が円柱上皮に変化します。
この状態が進むことで、バレット食道になるのです。逆流性食道炎を放置すると、最終的にはバレット食道へと進行する可能性が高まります。

バレット食道はどのような症状が出るのでしょうか?

バレット食道自体は症状が出ないこともありますが、多くの場合、逆流性食道炎の症状が現れるのです。これは、胸焼け・胸部の圧迫感・酸っぱい物が口に戻ってくる酸逆流・くしゃみ・咳などがでます。

バレット食道になりやすいのはどのような人ですか?

ピロリ菌感染の減少や生活様式の西洋化によって、逆流性食道炎が増加しており、それに伴いバレット食道の発症も増えています。次の方がバレット食道になりやすいとされています。

  • 肥満の方
  • 胸の辺りが痛む方
  • 高齢者
  • 男性
  • 喫煙される方
  • ピロリ菌未感染者
  • ピロリ菌除菌後の方

また、胸の痛みは食後・前かがみの姿勢・横になる等で悪化しやすいので注意しましょう。

バレット食道の治療法

カウンセリング

バレット食道の治療方法を教えてください。

現在の医学では、バレット食道自体を回復させるための確立された治療法はまだ見つかっていません。しかしながら、ほとんどの場合に逆流性食道炎が同時に存在します。
その症状を軽減し回復させるためには、胃酸の分泌を抑制する薬物を使用した治療や、生活習慣の改善などが行われます。薬物療法においては、胃酸分泌抑制薬に加えて、消化管の運動を活発にする薬を使用することで、症状の改善が可能です。

バレット食道はどのように検査されますか?

食道内の状態を直接観察するために、胃カメラ検査をします。この検査によって、炎症の程度やバレット食道の広がりなどが正確に把握できるのです。
バレット食道の範囲は、3㎝以下の短いセグメント(短縮型スライドバレット食道・SSBE)か、3㎝以上の長いセグメント(拡大型スライドバレット食道・LSBE)であることも把握できるため、適切な治療の判断ができるのです。
さらに疑わしい部位から組織を採取し、病理検査を行うことで、正確な診断もできます。これにより、早期の食道がんを見逃すことなく検出できるのです。
早期の食道がんは症状がほとんど現れないことがあります。バレット食道の症状がでたときは、できるだけ早く胃カメラ検査をするのが良いでしょう。

バレット食道は完治しますか?

残念ながら元の食道粘膜に戻すことは困難とされています。そのため進行させないための治療を行うのです。頻繁に経過観察して食道がんの早期発見に努めることです。 完治しないのでこの病気にならないことが重要です。
逆流性食道炎が主な原因であることは分かっていますので、この治療について付け加えます。胃酸の濃度を抑制して症状を改善するための薬物療法と生活習慣の見直しによって胃酸の逆流を予防するのが良いでしょう。
治療においては、主にPPI(プロトンポンプ阻害薬)・PCAB(イオン競合型アシッドブロッカー)として知られている薬物 例:パリエット・オメプラゾール・タケキャブなど)を中心に使用します。

バレット食道が食道がんの罹患にどう影響しますか?

食道がんの発症リスクがあるため、そのままにしておくのは危険です。特に、この病気に関わる食道がんの発症リスクは、通常の人々と比べて約30〜60倍高いとされています。さらに、食道腺がん(別名バレット食道がん)と呼ばれる特異ながんのタイプを発症する可能性もあるのです。
この種のがんは通常、胃食道逆流による逆流性食道炎から生じ、その後バレット食道の異常細胞ががん化して進行します。欧米地域では逆流性食道炎が増加しており、そのため、食道がんの患者数も増えているのです。
日本でも欧米化の食事が進行しており、逆流性食道炎の症例が増えているため、同様に食道がんの患者数が増加する可能性が考えられます。

逆流性食道炎との関連があるのでしょうか?

関連はあります。胃酸が食道内に逆流する逆流性食道炎とその持続的な食道炎症が、この病気の原因とされています。さらにその後、何らかの遺伝子異常が関与することで発病すると考えられています。

バレット食道の予防方法

薬を飲む人

バレット食道の予防方法を教えてください。

日常の生活習慣を改善することで予防につながります。主に食事内容を見直すことで症状が和らぐことがあります。特に胸焼けの症状を軽減するためには、香辛料や刺激物・甘いもの・強い酸味のある果物・たんぱく質・脂質を過度に摂取しないように注意が必要です。
食事の際には腹八分目を目指し、満腹になりすぎないように心がけることも重要です。また、食べる際にはゆっくりとよく噛んで、ゆっくり食べましょう。
さらに、カフェインは胃酸の分泌を増加させるため、摂り過ぎないようにします。アルコールも同様に胃酸の分泌を促進し、噴門部(食道から繋がる胃の入り口部分)の筋肉を緩めるため、取り過ぎると症状の悪化を招く可能性があります。
食事の見直し以外にも、食後すぐに横にならず時間を置いてから寝ることで逆流を予防したり、正しい姿勢を保つことで腹圧を減少させることができるのです。また、運動を継続することで肥満を改善することも、症状の改善に役立つことがあります。
日常生活の見直して予防することに心がけましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

バレット食道自体は生命に直接関わるような病気ではありませんので「バレット食道」と診断されても過度に恐れを覚えることはありません。しかしながら、将来、バレット食道がん(食道腺がん)になる可能性がある病気です。
発症してしまうと完治は困難ですが、日常生活の見直しと薬による治療で予防することができます。香辛料などの刺激物・甘いもの・強い酸味のある果物・たんぱく質・脂質を摂り過ぎないようにし、カフェイン・アルコールも適量にしましょう。
逆流を防ぐため食後すぐに横にならず、正しい姿勢を保つよう心がけると良いでしょう。適度な運動を取り入れることも忘れないことです。

編集部まとめ

笑顔の女性
バレット食道について説明してきました。食道は胃酸の刺激から守られた粘膜で覆われています。しかし、胃酸が繰り返し食道側に逆流することで、食道と胃の境目にある食道粘膜が強力な円柱上皮に置き換わる現象がバレット食道です。

胃酸が食道内に逆流する逆流性食道炎とその持続的な食道炎症が、バレット食道の原因とされています。

バレット食道自体は症状が出ないこともありますが、多くの場合、逆流性食道炎の症状の胸焼け・胸部の圧迫感・酸っぱい物が口に戻ってくる酸逆流・くしゃみ・咳などを感じます。また食道がんになる場合もあるので注意が必要です。

完治することは無いといわれていますが、逆流性食道炎に影響されるのでこの病気を防ぐことがバレット食道にならないために大事だといえます。そのためにも定期的に胃カメラで検査し日常生活を改善することがとても重要なのです。

この記事の監修医師