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円形脱毛症の症状や原因、治療法とは?

 更新日:2023/03/27
円形脱毛症とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
後藤 和哉 医師

監修医師
後藤 和哉 医師(京都大学医学部附属病院)

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大分大学医学部卒業後、関西電力病院、京都大学医学部附属病院、研修医を経て京都大学医学部附属病院、天理よろづ相談所、皮膚科医。

円形脱毛症とは

円形脱毛症とは、免疫細胞が誤って自分の髪の毛を攻撃してしまうことで、突然円形の脱毛斑が生じてしまう病気です。幅広い年代で発症しますが、若い人に多いと言われています。その病態は複雑でまだ未解明の部分も多く、遺伝素因やストレスの関与も推測されています。

後藤 和哉 医師後藤先生の解説

円形脱毛症は決してまれな疾患ではありません。皮膚科外来を訪れる患者の0.7-3.8%を円形脱毛症患者が占める、と報告されています。アメリカの調査では、円形脱毛症の発症率は10,000人あたり20.2人(0.2%)と報告されています。

円形脱毛症ではどんな症状が現れるの?

先行する症状や自覚症状がなく、突然円形〜楕円形の脱毛斑が生じることが、円形脱毛症の最も特徴的な症状です。多くの脱毛斑は頭髪に認められますが、眉毛や髭、四肢の毛、陰毛にも生じることがあります。

後藤 和哉 医師後藤先生の解説

基本的には痛みを伴うことはありません。脱毛が始まる前や、疾患が進行している最中には軽度のかゆみや違和感を生じることがあります。

円形脱毛症の原因は?

後藤 和哉 医師後藤先生の解説

円形脱毛症の病態は複雑であり、多くは解明されていません。現時点では、免疫機構の異常により免疫細胞が自分の髪の毛を誤って攻撃してしまうという説が有力です。その背景には、免疫に関与する分子の遺伝因子や、肉体的・精神的ストレスなどの環境因子が複合的に関与しているとされています。その一方で明らかな誘因を認めない患者もいます。
円形脱毛症には、甲状腺疾患・膠原病などの他の自己免疫疾患や、アトピー性皮膚炎の合併が多いといわれています。ステロイドなどの免疫を抑える治療が一定の効果を認めます。これらのことが、自己免疫の異常が病因として支持される根拠となっています。

また、円形脱毛症は遺伝因子の関与も示唆されています。中国や欧米の調査からも、家族内に患者がいる場合は円形脱毛症を罹患しやすいと報告されています。
アトピー素因と円形脱毛症との関連も示唆されています。円形脱毛症患者200例中半分以上で本人もしくは家族にアトピー素因が認められたという報告や、重症例ほどアトピー素因の合併率が高いとする報告があります。
その他にも、ダウン症患者では円形脱毛症になりやすいという報告もあります。
その一方で、円形脱毛症は人種を問わず認められ、発症のしやすさに男女差はないとされています。

円形脱毛症の検査方法・診断方法は?

後藤 和哉 医師後藤先生の解説

先行する症状や自覚症状がなく、突然円形〜楕円形の境界明瞭な脱毛斑が生じた場合、円形脱毛症を疑います。脱毛斑の内部に短い切れ毛や、根元が細くなった毛、黒い点を見ることも特徴です。
また、円形脱毛症の10−20%には爪の変化を認められることから、爪の所見が診断の手がかりとなることがあります。具体的には、爪が点状にへこむ、分厚くなる、色が濁る、剥離するというような変化を見ることがあります。多くの場合、これらの臨床所見のみで診断されます。

臨床所見のみで他の疾患との鑑別が困難な場合は、血液検査や脱毛部皮膚の病理組織検査が行われます。血液検査では貧血、亜鉛欠乏症、甲状腺機能障害、膠原病、梅毒などによる脱毛症を鑑別するために行います。検査時間は5分程度ですが、結果が出るまで数日〜1週間程度かかります。病理組織検査では脱毛部皮膚をメスでくり抜いて検査に提出します。検査は20分程度ですが、検査結果が出るまでは1週間程度かかります。

円形脱毛症の治療方法

円形脱毛症の代表的な治療法には、

  1. ステロイド外用療法
  2. ステロイド局所注射療法
  3. 局所免疫療法
  4. ステロイドパルス療法
  5. 紫外線療法など

があります。

ステロイド外用
ステロイド外用では、比較的強いステロイド外用剤を1日1−2回、脱毛部とその周辺部、そう痒などの前駆症状を訴える部位に塗布します。手軽に使用しやすく、使用実績も非常に多い治療法です。副作用には、ざ瘡や毛包炎を起こすことが挙げられます。また、長期の使用によって皮膚萎縮や血管拡張、陥凹をきたすことがあるため、漫然と使用し続けないよう注意が必要です。
ステロイド局所注射療法
ステロイド局所注射療法では、ケナコルトA®というステロイド剤を希釈し、真皮〜皮下脂肪の層に注射します。約4週間に1度の治療で良いため通院回数の負担は少ないことが利点です。一方で、刺入時の痛みが強いため、脱毛斑が多発している患者や小児例には使用しにくいことが難点です。副作用として皮膚萎縮や疼痛、血管拡張が報告されているため、連用する場合は注意が必要です。
局所免疫療法
局所免疫療法は、1-2%のSADBE(スクアレン酸ジブチルエステル)あるいはDPCP(ジフェニルシクロプロペノン)といった物質を脱毛部に外用し、感作成立後に低濃度に希釈した同物質を塗布することで人工的にかぶれを起こす治療法です。1-2週間に1度使用し、脱毛が改善してからも3-4週に1度の外用を継続します。年齢を問わず使用でき、広範囲の脱毛斑でも使用しやすいことが特徴です。一方で、副作用として重度のかぶれ、自家感作性皮膚炎、リンパ節腫脹、蕁麻疹、色素沈着、色素脱失などが報告されています。
ステロイドパルス療法
ステロイドパルス療法では、大量のステロイド剤を3日間連続で点滴投与します。発症後6ヶ月以内で、かつ急速に進行する症例で良い適応です。一方で、再発も多く、小児例での使用は安全性が未確立であることから推奨されません。また、ステロイド内服と同様に体重増加、満月様顔貌、高血糖、消化管潰瘍、骨粗鬆症、大腿骨頭壊死、精神症状、感染症などの副作用が生じることがあります。
紫外線療法など
これらの代表的な治療以外にも、紫外線療法や冷却療法、抗ヒスタミン薬やセファランチン、グリチルリチン・DL-メチオニン配合剤(グリチロン)の内服、ミノキシジル(リアップ、ロゲイン)や塩化カルプロニウム(フロジン、アロビックス)の外用なども行われています。

後藤 和哉 医師後藤先生の解説

円形脱毛症は再発しやすい疾患ですので、これらの治療法はいずれも基本的に対症療法です。その完治と判断することが難しく、多くの場合は改善後も治療を続けることになります。

円形脱毛症の予防方法

円形脱毛症の原因は、現時点で完全に解明されていません。そのため予防法も確立されていません。ただ、疲労や精神的ストレスが誘因となる可能性が指摘されていることから、疲れやストレスを溜め込まないような規則正しい生活を送ることは大切です。

もしかして円形脱毛症?初期症状・気になる症状を解説

ここでは円形脱毛症の初期症状や、円形脱毛症の疑いのある症状、病院へ行くべき目安や対処法などをなどを解説します。

突然円形〜楕円形の境界明瞭な脱毛斑が生じる

先行する症状や自覚症状がない状態で突然円形〜楕円形の境界明瞭な脱毛斑が生じた場合、円形脱毛症を疑います。また、後頭部など自分で視認できない部位に発症した場合は、理容室や美容室で指摘されて初めて自覚することもあります。病変が小さい初期の方が治療介入しやすいため、上記の病変を認めた場合は速やかに皮膚科を受診してください。

円形脱毛症についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「円形脱毛症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

男性と女性では円形脱毛症の原因に違いはあるのでしょうか?

後藤先生後藤先生

円形脱毛症自体には性別による違いはありません。
男性の場合は男性型脱毛症、女性の場合は女性型脱毛症やfrontal fibrosing alopeciaといった脱毛症との鑑別が時に必要となります。

10円ハゲよりも小さい脱毛がありますが病院に行くべきでしょうか?

後藤先生後藤先生

一般的に、円形脱毛症は2~3cm以上で発見されることが多いのですが、小さいという理由のみで円形脱毛症の初期病変ではない、とは言い切れません。脱毛斑の内部に、短い切れ毛や根元が細くなった毛、黒い点などの変化を認める場合や、牽引して容易に脱毛を認める場合、あるいは前述のような特徴的な爪の変化を認める場合は円形脱毛症の可能性が高くなります。

円形脱毛症に漢方やサプリメントは効果があるのでしょうか?

後藤先生後藤先生

漢方やサプリメントの有用性についてはまとまったエビデンスが乏しいのが実情です。現に日本皮膚科学会のガイドラインでは漢方薬の使用は推奨されておらず、サプリメントについても言及されておりません。

円形脱毛症に効果的なツボやマッサージはあるのでしょうか?

後藤先生後藤先生

円形脱毛症に対するツボの刺激や頭皮マッサージについては質の高いエビデンスはありませんが、鍼灸院などのホームページでは百会、通天、天柱といった様々なツボや頭皮マッサージ法が紹介されています。
ツボの刺激や頭皮マッサージで重篤な副作用が生じるとは考えにくく、その実施自体に問題はありません。しかし、脱毛斑を自覚した際には、正確な診断のためにもまずは速やかに皮膚科を受診することをお勧めします。

まとめ

円形脱毛症は決して稀なものではなく、QOL(生活の質)に大きな影響を与えてしまう重要な疾患です。前触れもなく脱毛斑が生じた場合は円形脱毛症を疑う必要があるため、そのような場合は一度皮膚科を受診してください。

円形脱毛症と関連する病気

「円形脱毛症」と関連する、似ている病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

皮膚科の病気

  • 男性型脱毛症
  • 女性型脱毛症
  • 休止期脱毛症
  • アトピー性皮膚炎
  • 甲状腺機能障害
  • ダウン症
  • 尋常性白斑

円形脱毛症には合併する病気が多く、甲状腺疾患や尋常性白斑、膠原病、アトピー性疾患、ダウン症などさまざま挙げられます。

全身の病気

  • 亜鉛欠乏症
  • 膠原病による脱毛
  • 梅毒による脱毛

脱毛症というと皮膚の病気と考えがちですが、微量元素や自己免疫疾患、感染症などの全身疾患による脱毛も鑑別にあがります。

円形脱毛症と関連する症状

「円形脱毛症」と関連している3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

【参考文献】

■日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版

■清水宏『あたらしい皮膚科 第3版』中山書店、2018年

■大塚藤男『皮膚科学 第10版』金芳堂、2016年

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