虫垂炎(盲腸)の症状や原因、治療法とは？
虫垂炎、急性虫垂炎(盲腸)とはどんな病気なのでしょうか？その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
監修医師：
梅村 将成 医師（市中総合病院）
消化器外科・総合診療医として、がん治療（手術・抗がん剤・緩和治療）を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患を診療。小児から高齢者まで、健康に悩みを抱えるすべての患者さんが納得した医療を受けられるよう、専門医と総合医の視点をもって日夜診療に努めている。
目次 -INDEX-
虫垂炎（盲腸）とは
虫垂炎（ちゅうすいえん）は、通称盲腸（もうちょう）とも言われます。英語でappendicitis（アッペンディサイティス）と呼ばれるため、医療者の中ではアッペともよばれます。
虫垂は、大腸の一部である盲腸からのびる細長い袋状の臓器です。その虫垂に炎症が起きることで虫垂炎と呼ばれる病気になります。
梅村先生の解説
虫垂炎というより盲腸と言われた方がピンとくる方も多い病気です。
虫垂炎（盲腸）はどんな症状や痛みが現れるの？
虫垂炎は、虫垂がふん石（便のカス）などにより閉塞し、内部で炎症をおこす病気です。右下腹部の骨盤の少し上あたりに痛みが出現することが特徴的で、ほかにも発熱、下痢、嘔吐などがあらわれます。
虫垂の存在する場所＝虫垂炎の時に痛む場所は、右の腰骨とおへそをつないだ線の外側3分の1の場所と言われています。
梅村先生の解説
虫垂炎の初期はみぞおちに痛みが出現し、徐々に右下腹部に痛みの部位が移動するといわれています。小児では、機嫌の悪さが初期症状となる場合もあるため注意が必要です。
虫垂炎（盲腸）の原因は？
梅村先生の解説
小児から高齢者まで発症する可能性があります。ストレスや疲労が原因と言われることもありますが、はっきりしません。
虫垂炎（盲腸）の検査方法・診断方法は？
腹部診察と血液検査、画像検査などを行い診断します。
血液検査では、炎症を反映するマーカーが上昇しているかなどをチェックします。
腹部超音波（エコー）検査は、体脂肪が少ない方や小児などに有用です。腫れて大きくなった虫垂や、糞石などがみられるかをチェックします。
超音波検査などではっきりしない場合や、そのほかの病気との鑑別に苦慮した場合に最も適した検査はＣＴ検査です。腫れた虫垂を認めればほぼ診断が確定されます。
上記の検査をどのように組み合わせるかは担当医の采配です。検査時間自体は1時間程度ですが、待ち時間など合わせると3時間程度かかることもあります。
梅村先生の解説
虫垂炎を診断するために大事なもの一つは腹部の触診所見です。右下腹部あたりの圧痛（押して痛みがあるか）などが重要な所見です。
虫垂炎（盲腸）の治療方法・手術内容
虫垂炎の治療には保存的治療と手術治療の2種類あります。
保存治療とは、手術をせず輸液・抗生剤などで治療する方法です。軽症ならば食事制限のみで自然治癒する可能性もありますが、多くの場合には抗生剤治療をします。外来治療も可能ですが、痛みの程度などによっては入院を必要とします。
保存加療で改善しない場合に手術が必要になることもあります。また、保存加療の場合は、いったん改善を認めても再発する可能性もあります。
手術は、腫れた虫垂を切除するものです。麻酔方法として腰椎麻酔と全身麻酔があり、手術方法として開腹手術と腹腔鏡手術があります。
以前は開腹手術が一般的で、右下腹部を数㎝切って手術していましたが、現在では腹腔鏡手術がほとんどになりました。術後経過が良ければ3～5日で退院できます。
梅村先生の解説
虫垂炎に対するベストの治療方法は結論がでていません。最終的には各々の治療のメリットデメリットをよく聞いて患者さんが判断する必要もあります。
以前は虫垂炎と診断されると緊急手術をしていましたが、近年では待機的虫垂切除という考え方もあります。虫垂の炎症が強い場合など、手術の困難が予想されるときに有用です。一旦、保存的治療を行って炎症が軽くなる時期（数か月後）を待ってから手術を行います。待機した場合の方が手術合併症は少ない、との研究結果があるためです。
虫垂炎（盲腸）の予防方法
虫垂炎の予防は発症原因が明らかではないため、予防も難しい病気です。
もしかして虫垂炎（盲腸）の前兆？初期症状・気になる症状を解説
みぞおち周囲の痛みや、痛む場所が移動する
虫垂炎の典型的な症状は、初めはみぞおち周囲が痛み、徐々に右下腹部の痛む場所が移動すると言われています。
しかし、初めから右下腹痛が出現する場合や、吐き気や嘔吐、発熱、下痢が初発症状である場合もあります。
虫垂炎が増悪すると振動で揺れるだけで痛むため、歩行やかかと落としをしただけで痛みがつよくなる方もいます。
普段と違う症状や、改善されない持続した腹痛などがある場合は、病院を受診しましょう。虫垂炎は早めに受診した方がその後の経過が順調ですので、我慢しないことも大事です。
梅村先生の解説
虫垂炎は、進行すると局所の腹膜炎を引き起こしたり、ぱんぱんに腫れた虫垂が穿孔（一部分破裂すること）して重症な腹膜炎（汎発性腹膜炎）を引き起こしたりします。
虫垂炎についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「虫垂炎」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
虫垂炎の治療中や手術後にコーヒーは飲んでいいの？
梅村先生
虫垂炎をはじめ、腸管に炎症が起きているときはコーヒーの飲用はさけてください。コーヒーを含めた刺激物は腸管への負担が大きく、回復を妨げてしまいます。
手術後も含めて治療期間中は、炎症の程度によって腸管回復にかかる時間が変わります。軽症であれば、術後まもなくコーヒーなども飲用できるようになりますが、具体的な日数は主治医と相談してください。
虫垂炎（盲腸）で入院する場合のおおよその期間は？
梅村先生
手術加療の場合には入院が必須で、術後3-5日程度が一般的です。
短期間の入院で済む場合や、1-2か月の入院を要する場合もありますので、主治医に確認してください。
保存加療の場合は、入院は必須ではありません。ただし、強い腹痛の場合や、抗生剤を点滴する場合などには、入院をお勧めすることがほとんどです。事情があって外来治療を希望される場合は、主治医に相談してください。
手術後に虫垂炎（盲腸）が再発する可能性は？
梅村先生
手術で虫垂を切除すると、再発の可能性はありません。
保存加療した場合は、再度虫垂に炎症が起きると再発しますが、その割合は30％程度と言われています。
もともと原因のはっきりしない病気で、再発する人に特定の特徴はありません。
虫垂炎（盲腸）の手術ではどれくらいの傷が残るの？
梅村先生
開腹手術では、右下腹部を5-6㎝程度切るために、傷が目立つ傾向にありました。
最近は腹腔鏡手術が普及しており、これは腹部に1-2㎝の傷が数カ所切りますが、開腹手術と比べて傷は目立ちません。
外科医は術後の傷跡が残りにくいように丁寧に縫合していますが、どの程度残るかは個人差があります。
虫垂炎（盲腸）にかかる年齢は？大人でもかかる？
梅村先生
虫垂炎に罹患する年齢は10-20代が多いと言われますが、幼児～高齢者まで誰しも発症する可能性があります。
まとめ
虫垂炎は、医師の中では「たかがアッペ、されどアッペ」と言われる病気です。多くの場合は軽症ですが、重症の場合には長期間の入院や集中治療を必要になることもあり、とても奥が深い病気です。
右下腹部痛といわれれば虫垂炎というほど有名ですが、類似した疾患も多数ありますので、気になる症状があれば早めに病院受診をしてください。
虫垂炎（盲腸）と関連する病気
「虫垂炎（盲腸）」と関連する、似ている病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
消化器系の病気
婦人科の病気
- 卵巣腫瘍
- 卵巣嚢腫
- 異所性妊娠
- 子宮内膜症
虫垂炎以外にも右下腹部痛を呈する病気は多数ありますし、女性の場合は婦人科系の病気との鑑別が重要になります。
虫垂炎（盲腸）と関連する症状
「虫垂炎（盲腸）」と関連している8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについては詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
虫垂炎は右下腹部痛が有名ですが、それ以外にも多彩な症状で発症します。
■一般社団法人 千葉医師会 コラム
