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斜視の症状や原因、治療法とは?

 更新日:2023/03/27

斜視とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

村上 友太 医師

監修医師
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医。日本認知症学会、抗加齢医学会、日本内科学会などの各会員。

斜視(しゃし)とは

斜視とは右目と左目の視線がずれている状態のことで、子どもの約2%に斜視があります。斜視は治療しないまま過ごすと目の視力が発達せず、物を立体的に見ることが難しくなってしまう可能性があり注意が必要です。

斜視はどんな症状が現れるの?

村上 友太 医師村上先生の解説

通常視線は両眼とも同じ場所に向かって揃っていますが、斜視は、右目と左目の視線が違う場所に向かっている状態です。

左右で視線がずれているので、精密な立体感覚や奥行きが低下します。子供の視覚の発達期に斜視があると、立体視ができなくなってしまうことや、弱視になってしまこともあります。ボール遊びや平均台が苦手になったり、物が2つに見えたり、両目で見ようとするとはっきり見えなかったりするため日常生活に支障を生じます。視線がずれているという見た目が気になることがストレスになることもあります。通常痛みは伴いません。

斜視の原因は?

症状が現れる原因は、神経や筋肉、遺伝の影響などが考えられていますが、明確にわかっていません。
生後6ヶ月以内に発症する斜視は、家族に斜視の人がいる、遺伝性疾患、未熟児、出生前のアルコールや薬剤への暴露などが危険因子といわれています。
生後6ヶ月以上の子どもに発症する斜視は、強い遠視や筋肉の力の不均衡などが原因として考えられています。強い遠視が原因の調節性内斜視は1歳半から3歳までに発症することが最も多くみられます。
成人では、糖尿病、高血圧、脳の異常や頭の怪我、強い近視、ストレスなどが原因で斜視になることがあります。

村上 友太 医師村上先生の解説

最近では、小児から若者の年代に急性内斜視が増加している傾向があり、近距離でのスマートフォンやゲーム機の過剰使用が原因ではないかと言われています。近距離で画面を見ると、目が寄り目になり、それが長時間に及ぶことで元の状態に戻りにくくなることで急性内斜視を発症する可能性が高くなるのではと考えられています。

斜視の検査方法・診断方法は?

眼位のズレがどのくらいあるのかを測定します。視力検査、屈折検査、眼球運動検査なども行います。スムーズに行けば30分程度では終わりますが、子どもの場合は集中力が持たないことがあり、もっと長くかかることもあります。
眼位のズレがある場合、斜視と診断されます。
内側に視線がずれるのが内斜視、外側にずれるのが外斜視、上下にずれる上下斜視です。
斜視が現れるときと正常な時のある間欠性外斜視や、常に斜視になっている恒常性外斜視、遠視が原因の調節性内斜視、突然発症する急性内斜視など様々な種類の斜視があります。

村上 友太 医師村上先生の解説

目を動かす筋肉に麻痺が起こることで症状が現れる麻痺性斜視の場合、他の病気が隠れている可能性があり、糖尿病や脳動脈瘤、脳梗塞などの検査を行う場合もあります。

斜視セルフチェック

自宅で斜視かどうかをチェックする方法をご紹介します。
ペンライトの明かりを見ている時に、左右とも黒目の中央に光が映っていれば、眼位は正常と考えられます。左右で光の位置にズレがある場合は斜視の可能性があります。
子どもの場合は、目に力が入っていて寄り目になっている、首をいつも同じ方向に傾けるなども斜視の可能性があります。物が二つに見える複視を訴える場合も斜視の可能性があります。

村上 友太 医師村上先生の解説

斜視には、いつも斜視になっている恒常性斜視と、斜視が出現したりしなかったりする間欠性斜視があります。間欠性斜視は疲れているときや起床直後、明るい戸外で起こりやすいのが特徴です。間欠性斜視の場合は斜視が現れるタイミングでチェックをするよう気をつけましょう。

斜視の治療方法

生後6ヶ月を過ぎても視線が内寄りになっている場合は眼科を受診しましょう。
治療方法には、点眼治療、矯正眼鏡をかける、片方の目をアイパッチなどで隠す遮閉法、眼位を直す斜視手術などがあります。
手術後でも二つの目を同時に使ってみるようにするための訓練が必要で、1年から3年以上の治療期間がかかります。
子どもの斜視は矯正眼鏡、手術により弱視になるのを防ぐことができます。
手術で斜視は改善する可能性はありますが、手術後でも少し斜視が残ったり、過矯正となる可能性があります。2、3回手術が必要なこともあります。

村上 友太 医師村上先生の解説

斜視は弱視を引き起こしやすい病気です。弱視とはメガネをかけても視力が出ない状態のことです。5-6歳ごろまでに両眼視機能の発達が完成するので、早期の治療が必要なのです。

斜視の手術について

手術では、目を動かす筋肉のついている位置をずらすことで、目の位置を改善します。
乳幼児や小学生の場合は全身麻酔が必要です。成人の場合は局所麻酔を選択することもできます。手術前に問診、検査、手術後も定期的な通院が必要です。
手術時間は1つの筋肉について20~30分で、多くの場合、片目だけ1つか2つの筋肉を手術します。
手術にかかる費用は、局所麻酔で健康保険3割負担の方は片目15,000円程度です。その他検査などに別途費用が必要です。

村上 友太 医師村上先生の解説

手術に伴うリスクとしては、手術をすることで、目の周りに感染が起こる可能性があります。また、手術後に麻酔が切れると痛みが現れます。眼位のずれの矯正が不十分であったり、過矯正になったりする可能性もあります。

自宅で出来る斜視改善トレーニング

斜視でない目をアイパッチなどで覆い、斜視の目だけを使うことで目を鍛えるトレーニングや、目をぐるぐる回したりするトレーニングなどがあります。
スマートフォンなど小さい画面を近くで見るものは、両目でものを立体的に見る機能に悪影響を及ぼします。特に子供は6歳ごろまでに立体視の機能が完成するため、それまでは特に注意が必要です。スマートフォンはできる限り利用しないほうがいいでしょう。

村上 友太 医師村上先生の解説

斜視の種類や年齢や重症度により適切なトレーニングはさまざまです。不適切なトレーニングにより斜視の評価が困難になるため、トレーニング前にまずは眼科を受診しましょう。

斜視の予防方法

小児の場合、遠視が強いと斜視の原因となるため、遠視が見つかった際に早めに治療することが斜視の悪化を予防することにつながります。
成人の場合、糖尿病からくる血行障害、神経障害などで斜視が出現する可能性があるため、定期的に検診を受けましょう。生活習慣病を予防し規則正しい生活を心がけましょう。

もしかして斜視?初期症状・気になる症状を解説

ここでは斜視の初期症状や、斜視の疑いのある症状、病院へ行くべき目安や対処法などをなどを解説します。

視線のずれや寄り目

視線がずれている、視線が合わない、寄り目になる、頭が傾いている、物が二重に見える、などの症状がある場合は、斜視の可能性があります。
子供の斜視では、視線が合わない、頭が傾いている、などが気づかれやすい初期症状です。
自覚症状としては、物が二重に見える、物が見づらい、目が疲れやすいなどの症状があります。
6歳までに両目で立体的に物を見る機能の発達が完成するので、斜視は治療を早く開始することが大切です。子供は斜視の疑いがある場合はすぐに眼科を受診を検討しましょう。

村上 友太 医師村上先生の解説

遠視が原因となる調節性内斜視は、1歳6ヶ月から3歳までの発症が多いのですが、この年齢の子供は自覚症状を訴えることはほぼありませんので、基本的には保護者が異変に気づいたり、三歳児検診で異常が見つかり受診することになります。病院では視力検査など集中力が必要な検査も多いため、診察前は体調を整えて、落ち着いた状態で来院するようにしましょう。

斜視でコンタクトは使っていいの?

村上 友太 医師村上先生の解説

斜視の人もコンタクトレンズは使用可能です。斜視の人に限らずですが、コンタクトレンズを使用する際は正しい洗浄、保存方法を守り、装着前には手を洗いレンズを清潔に保つよう気をつけましょう。

コンタクトレンズは目に直接触れるため、結膜炎やドライアイなどがある人はコンタクトレンズの使用を控えた方が目にいいでしょう。
コンタクト使用中に痛みや目のかすみ、充血、違和感を感じる時はコンタクトの使用をやめ、目を休め、眼科を受診しましょう。

まとめ

斜視は、3~4歳ごろまでに発覚することが多いのですが、子供の視力のためには早く斜視の治療を開始することが大切です。普段から視線がずれていないか、視線が合うか、目をしかめたりしていないかなど気にかけておきましょう。小児の斜視は適切な加療により日常生活に支障が出ないようにすることができますが、完全に整復することは困難です。
大人の斜視はさまざまな原因で発症しますが、主な症状は物が二重に見える複視、目の疲れです。また、斜視の原因となる疾患によって予後が異なりますので、現疾患をきちんと治療しましょう。


関連する病気


関連する症状

  • 物が二重に見える
  • 目つきがおかしいと周りから指摘される
  • 目を細める
  • 視線が合わない
  • 視線がずれている
  • 眼球が細かく揺れる
  • 首が傾いている
  • 目が疲れやすい
  • 肩こりや頭痛が多い
  • 絵本やテレビなどに顔を近づけて見ている
  • 目を頻繁にこする