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「日本人の50人に1人が斜視」若年層・高齢層に顕著 京都大学ら研究グループが発表

 公開日:2024/01/16
日本人の約50人に1人が斜視との研究報告

京都大学らの研究グループは日本人における斜視の発生状況を解析し、2020年時点の斜視の有病率が2.154%という結果を発表しました。この内容について柳医師に伺いました。

柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

発表した研究内容とは?

今回、京都大学らによる研究グループが発表した研究内容について教えてください。

柳 靖雄医師柳先生

今回紹介する研究は京都大学らの研究グループによるもので、成果は学術雑誌「American Journal of Ophthalmology」に掲載されています。

研究グループは、厚生労働省の匿名医療保険等関連情報データベースを解析しました。その結果、2020年10月1日時点で、日本の人口1億2570万8000人中270万9207人が斜視と診断され、斜視の有病率は2.154%と算出したことを発表しました。斜視の有病率は学齢期で高くなる傾向がみられ、5~9歳で6.019%、10~14歳で7.652%、15~19歳で5.664%でした。また、高齢者も有病率は高くなり、75~79歳で2.611%、80~84歳で2.762%、85~89歳で2.495%という結果になりました。若年層では女性、高齢層では男性の有病率が高い傾向がみられました。

以上の結果から、研究グループは「斜視の有病率・発生率は二峰性の年齢分布を示し、学齢期から中年期にかけての有病率は斜視手術により低下している可能性が示唆された」と結論づけています。また、若年層では女性、高齢層では男性の有病率が高い傾向がみられたことについては「若年男性患者と比べて、若年女性患者は心理社会的な不利益を被ることが多いという理由から、眼科の受診率および斜視施術の施行率が高くなっている可能性がある」と述べています。

斜視とは?

京都大学らによる研究グループが研究対象にした斜視について教えてください。

柳 靖雄医師柳先生

斜視とは左右の眼が違う方向をみている状態で、「外斜視」「内斜視」「上下斜視」などに分類されます。外斜視は片方の眼が目標を見ていて、その反対の眼が正面より外に向いている状態で、内斜視は内側を向いている状態です。

さらに、斜視は目を動かす筋肉に原因がある「麻痺性斜視」、麻痺がない「共同性斜視」に分けられます。小児の斜視はほとんどが共同性斜視で、その原因は不明です。症例によっては、目を動かす筋肉や命令を出す脳神経、斜視以外の目の病気の有無、全身的な病気がないかの検査が必要になることもあります。斜視は「視力が発達しにくい」「立体視などが発達しない、または使えない」「ものが2つに見える」などの影響が考えられます。眼鏡や斜視手術、訓練といった治療法があります。

今回の研究内容への受け止めは?

京都大学らによる研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。

柳 靖雄医師柳先生

今回の研究は、病院を受診して斜視と診断された患者数がどれくらいいたのかを調査したものです。実際には、斜視があっても病院を受診していない人がいるので、こうした人を含めると今回の報告よりも有病率は高いと推察されます。その一方で、斜視の有病率はこれまでの海外の報告とほぼ同程度であり、かなり精度の高い報告であると言えます。さらに、今回の調査で初めて日本でも若年性の斜視と加齢に伴う斜視があり、有病率が二峰性であることがはっきりと示されました。

斜視の原因は様々なものがあります。最近では、スマートフォンの見過ぎが原因と思われる「スマホ内斜視」もみられるようになってきました。また、加齢に伴う斜視「加齢性斜視(Sagging eye syndrome)」は、最近になって原因が判明しつつあります。気になる目の症状があれば、できるだけ早く眼科に相談をしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

京都大学らの研究グループが日本人における斜視の発生状況を解析し、2020年時点の斜視の有病率が2.154%という結果を発表しました。「日本人の50人に1人が斜視」という結果は注目を集めそうです。

この記事の監修医師