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しゃくれは噛み合わせが原因?セルフチェックでわかる原因や放置するリスクを解説

 公開日:2026/04/16
しゃくれは噛み合わせが原因?セルフチェックでわかる原因や放置するリスクを解説

「顎がしゃくれている」「下の歯が上の歯より前に出ている」と気になりながらも、どこに相談すればよいかわからず、放置している方も少なくないでしょう。
しゃくれは噛み合わせの乱れによって、咀嚼(そしゃく)や発音、口腔内の健康にまで影響を及ぼす場合があります。

本記事では、しゃくれと噛み合わせの関係について以下の点を中心に解説します。

  • しゃくれに見える噛み合わせの状態と受け口との違い
  • しゃくれの主な原因と放置するリスク
  • 原因別の治療方法と期間、費用の目安

しゃくれと噛み合わせについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

小田 義仁

監修歯科医師
小田 義仁(歯科医師)

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小田歯科・矯正歯科
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事

しゃくれ(下顎前突)は噛み合わせが原因?

しゃくれ(下顎前突)は噛み合わせが原因?
しゃくれは、骨格や歯並びなどの要因で起こります。まずは、しゃくれの状態や受け口との違いを確認しましょう。

しゃくれに見える噛み合わせの状態

”しゃくれ”とは、下顎が前方に突き出て見える状態の俗称で、医学的には下顎前突(かがくぜんとつ)と呼ばれています。

噛み合わせは、上の前歯が下の前歯に少し覆いかぶさる形が正常とされていますが、しゃくれの場合は噛み合わせが逆になっています。下の前歯が上の前歯に覆いかぶさっている状態は反対咬合(はんたいこうごう)とも呼ばれ、下の前歯が上の前歯よりも前方に位置しています。

反対咬合の程度が大きくなると、顎が長く前方に出た印象として顔立ちにも現れやすくなります。
しゃくれに見える状態は、大きく以下の2つに分けられます。

骨格的な問題によるもの
下顎の骨自体が大きく前方に位置しているケース

歯並びの問題によるもの
骨格は正常でも、上の前歯が内側に傾いていたり下の前歯が外側に傾いていたりすることで、噛み合わせが逆になっているケース

受け口(反対咬合)との違い

しゃくれと混同されやすい言葉に”受け口”があります。
受け口とは、下の歯が上の歯よりも前に出ている歯並びの状態のことで、歯科用語では反対咬合と呼ばれる不正咬合のひとつです。

一方で”しゃくれ”は、顎が前方に突き出て見えるという外見を表す言葉です。

【受け口(反対咬合)】
下の歯が上の歯より前に出ている、歯並びと噛み合わせの状態を指す

【しゃくれ】
顎の骨格が前方に出ていることによる、見た目の状態を指す

しゃくれと受け口のセルフチェック

しゃくれや受け口かどうかを確認する方法として、自宅でできるセルフチェックがあります。
以下の項目を、鏡や横顔の写真を使って確認してみましょう。

【しゃくれのセルフチェック】
・正面、横顔ともに、下顎が明らかに前方に突き出て見える
・横顔の写真で、Eライン(鼻先と顎先を結んだ直線)に対して口元の位置バランスが崩れている
・お口を自然に閉じにくい、または閉じると顎に力が入る

【受け口のセルフチェック】
・鏡で噛み合わせを確認したとき、下の前歯が上の前歯より前に出ている
・さ行、た行の発音がしづらいと感じる
・食べ物を前歯で噛み切りにくい

Eラインは、鼻先と顎先に指や定規を当てるだけで簡単に確認できます。
しゃくれの場合、上唇がEラインより大きく内側に入っていることが多いとされています。

ただし、セルフチェックはあくまで目安であり、しゃくれに明確な基準はありません

顎がしゃくれてしまう原因

顎がしゃくれてしまう原因
しゃくれには遺伝や骨格的な問題から、歯並びの乱れ、日常的な生活習慣まで、さまざまな原因が考えられます。以下で詳しく解説します。

遺伝や骨格的要因

しゃくれの原因としてよく見られるのが、遺伝や骨格的な要因です。
下顎の大きさや形、上顎とのバランスは遺伝の影響を受けやすく、両親や祖父母がしゃくれや受け口の場合、子どもにも同様の傾向が現れることがあります。
必ずしも遺伝するわけではありませんが、骨格的な素因を受け継ぎやすいとされています。

骨格的なしゃくれは医学的に下顎前突症(かがくぜんとつしょう)と呼ばれ、下顎の骨が前方に突き出すことで噛み合わせ全体がずれた状態です。日本人を含む黄色人種は、ほかの人種と比べて下顎前突の方が多い傾向にあります。

また、遺伝的な素因がある場合は、以下のような生活習慣が骨格的なしゃくれへ移行しやすくなる点にも注意が必要です。

・指しゃぶりや舌を前に突き出す癖
・口呼吸が日常的に続いている
・片側だけで噛む、硬いものをよく噛む習慣

歯並びによる噛み合わせの異常

骨格的な問題がなくても、歯並びの乱れが原因でしゃくれのように見えることがあります。

前歯は上の歯が下の歯を少し覆うように生えそろっていますが、上の前歯が内側に傾いて生えていたり、下の前歯が外側に傾いて生えていたりすると、前歯の噛み合わせが逆になる反対咬合が起こることがあります。

反対咬合が生じる歯並びの原因として、以下のようなケースが挙げられます。

・上の前歯が内向きに生えている
・下の前歯が外向きに生えている
・幼少期から続く、顎を前に突き出す癖や舌で下の前歯を押し出す癖

歯並びの乱れが原因のしゃくれは、骨格自体には問題がなく歯並びのみに原因があるため、歯列矯正治療によって改善が期待できるケースが多いとされています。

ただし、反対咬合には骨格の異常を伴うものと歯並びのみに限定されるものがあり、見た目だけでは判断が難しい場合もあります。

顎の発育異常

遺伝的な要因がなくても、成長の過程で顎の発育バランスが崩れることで、しゃくれにつながる場合があります。

本来、顎は上顎が先に成長し、その後に下顎が成長していきます。上顎の成長が不十分な場合、下顎が相対的に前方に出て見えるようになり、しゃくれや受け口につながることがあります。

また、顎の発育には舌の位置も関係しています。舌の正しい位置は上顎の裏側にくっついている状態ですが、舌の位置が低い状態が続くと下顎への刺激が強まり、下顎が過剰に発達する原因になることがあります。
口呼吸の習慣がある場合も、舌が正しい位置に収まりにくくなるため注意が必要です。

舌癖や口呼吸などの生活習慣

顎骨がやわらかく発育が活発な幼少期に、お口周りの癖が長期間続くと、顎の発達や歯並びに影響を与え、しゃくれや受け口の原因になることがあります。
原因となりやすい主な生活習慣は以下のとおりです。

・口呼吸
・舌で前歯を押す(舌癖)
・下顎を前に突き出す癖
・指しゃぶり、爪噛み
・頬杖をつく

しゃくれを放置するリスク

しゃくれを放置するリスク
しゃくれは見た目だけの問題と思われがちですが、放置すると噛み合わせの乱れが原因でさまざまな悪影響が生じる可能性があります。以下で詳しく解説します。

咀嚼や発音への影響

しゃくれによって噛み合わせが乱れると、上下の歯が正しく噛み合わないため、食べ物をうまく噛み切れなくなる場合があります。
十分に咀嚼できないと唾液の分泌が減り、消化器官への負担が増すことで、胃腸など内臓の健康にも影響を及ぼす可能性があります。

また、前歯の噛み合わせに問題があると発音にも影響が出やすく、特にさ行、た行は空気が抜けて不明瞭になることがあります。

むし歯や歯周病のリスク

噛み合わせが乱れていると、歯ブラシが届きにくい部分が増え、磨き残しが生じやすくなります。
プラーク(歯垢)が蓄積しやすい状態が続くことで、むし歯や歯周病のリスクが高まります。

顎関節症のリスク

しゃくれや受け口の状態では顎の位置や歯並びがずれているため、顎関節(がくかんせつ)に過剰な負担がかかりやすく、顎関節症(がくかんせつしょう)を引き起こすリスクが高まります。
顎関節症の主な症状には、以下のようなものがあります。

・お口を開閉するときに顎が痛む、または音が鳴る
・大きくお口が開けられない
・顎周辺の筋肉がこわばる

肩こりや頭痛のリスク

しゃくれや受け口によって噛み合わせがずれていると、そのズレを補おうとして顎の筋肉(咀嚼筋)が不自然な動きを続けます。
顎の筋肉が不自然な動きをする状態が慢性化すると、顎周辺の筋肉が常に緊張しやすくなります。

顎周辺の筋肉は首や肩の筋肉と密接につながっているため、顎の緊張状態が続くと肩こりへと発展することがあります。
さらに、緊張した筋肉が血管を圧迫して血流が悪化すると、神経にも影響をおよぼし、頭痛につながることもあります。

見た目への影響

しゃくれは、見た目へのコンプレックスや心理的なストレスにつながりやすいという側面もあります。
下顎が突き出て見えることで、顎のラインが強調されたり、きつい印象や老けた印象に見られたりすることがあります。

【原因別】しゃくれを改善する治療方法

【原因別】しゃくれを改善する治療方法
しゃくれの治療方法は、原因が歯並びにあるのか骨格にあるのかによって異なります。以下で原因別に詳しく解説します。

噛み合わせ異常による歯列矯正治療

骨格的な問題がなく、歯並びの乱れが原因でしゃくれになっている場合は、歯列矯正治療によって改善が期待できます。歯列矯正装置を使って歯を少しずつ動かし、正しい噛み合わせと歯並びを整えていきます。
歯列矯正の主な種類と特徴は以下のとおりです。

【表側矯正】
歯の表面に装置をつける方法。適応範囲が広く発音への影響が少ないが、装置が目立ちやすい

裏側矯正舌側矯正)】
歯の裏側に装置をつけるため目立ちにくいが、違和感や話しづらさが出やすい

マウスピース型矯正
取り外しができて目立ちにくいが、1日20時間以上の装着が必要で、対応できない症例もある

参照:『顔の印象は口元から!きれいな歯並びで印象を変えよう!歯列矯正とは?』(セラピア 森ノ宮医療大学)

骨格による外科的矯正治療

骨格的な問題が原因のしゃくれは、歯列矯正だけでは骨を動かせないため、顎骨を切る外科手術を併用した外科的矯正治療が選択肢となります。

外科的矯正治療では、下顎の骨を切って位置や長さを整える骨切り術(セットバック法)が用いられることがあります。歯列矯正と外科手術を組み合わせることで、骨格レベルから噛み合わせと顔のバランスの改善を目指します。

骨格的な問題が大きいしゃくれは、顎変形症(がくへんけいしょう)という病名がつくケースもあり、顎変形症の場合は歯列矯正治療と外科手術に健康保険が適用される場合があります。

子どもの成長期に行う早期矯正治療

子どもの成長期は顎骨がやわらかく発育が活発なため、子どもの成長期に歯列矯正治療を始めることで顎の成長をコントロールしやすく、将来の大がかりな治療を避けられる可能性があります。
成長期に行う主な歯列矯正治療は以下のとおりです。

予防矯正(マウスピース型装置)
 お口周りの筋肉トレーニングや正しい生活習慣の指導を通じて、歯並びや噛み合わせの悪化を予防する。
 取り外し可能なマウスピースを使用し、幼少期から取り組める

拡大装置(床矯正
 上下顎を広げて永久歯のスペースを確保する装置。6〜11歳頃に有効とされている

フェイシャルマスク(上顎前方牽引装置
 上顎の前方への成長を促す装置で、上顎の発育不足が原因のしゃくれに用いられることがある

ワイヤー矯正・マウスピース型矯正(2期治療)
 永久歯がそろう12歳以降に行う本格的な歯列矯正治療

参照:『混合歯列期における上顎側方緩徐拡大が上下顎の各歯間幅径に及ぼす影響』(J-STAGE)

症状の悪化を防ぐセルフケア

しゃくれを自力で治すことは難しいですが、日常生活での工夫やトレーニングによって症状の悪化を予防できます。
まず、以下の癖がある場合は意識して改善することが大切です。

・頬杖をつく
・口呼吸
・舌で歯を押す
・猫背前傾姿勢

また、お口周りのトレーニングも悪化予防に役立ちます。

【舌を回すトレーニング】
唇を閉じた状態で、歯茎の外側を舌でなぞるように時計回り、反時計回りに回す。1日20回程度を目安に行う

【舌のポジショニング】
舌先を上顎の前歯の付け根付近に当て、舌全体を上顎に軽く触れさせる正しい位置を意識する

しゃくれ治療にかかる治療期間と費用の目安

しゃくれ治療にかかる治療期間と費用の目安
しゃくれの治療期間や費用は、治療方法や症状の程度によって大きく異なります。以下で方法別の目安を解説します。

歯列矯正治療の期間と費用

歯列矯正治療の期間は、治療の方法や症状の程度によって異なります。主な方法別の期間の目安は以下のとおりです。

【成人の歯列矯正
表側矯正・マウスピース型矯正:1〜3年程度
裏側矯正舌側矯正):2〜3年程度

【子どもの歯列矯正(1期治療)】
小児歯列矯正:2年程度
その後、永久歯列期に2期治療が必要になる場合がある

費用は歯列矯正の方法や症状の程度、歯科医院によって大きく異なるため、まずは歯科医院での初診相談や精密検査を受けたうえで確認しましょう。

参照:『矯正歯科』(日本歯科大学付属病院)

外科的矯正治療の期間と費用

外科的矯正治療は、術前の歯列矯正治療、外科手術、術後の歯列矯正治療という流れで進むため、治療期間は3〜4年程度かかります。歯列矯正治療と比べて期間が長くなる傾向です。

費用は、保険適用の有無によって大きく異なります
骨格的な問題が大きく顎変形症と診断された場合は健康保険が適用されるケースがあり、自費診療と比べて自己負担額が軽減される可能性があります。

なお、治療終了後は歯列矯正治療と同様に、保定装置(リテーナー)の使用が必要です。

参照:『顎関節症外来』(東京医科大学 口腔外科学分野)

子どもの早期矯正治療の期間と費用

子どもの歯列矯正治療は、成長段階に応じて段階的に進めていくことが重要です。治療時期の目安は以下のとおりです。

乳歯期(3〜6歳頃)
口呼吸や舌の癖など生活習慣の改善が中心。必要に応じてマウスピース型の装置を使用し、舌の位置や動きを正常化する。治療期間は6ヶ月〜2年程度。

小児期(6〜12歳頃)の1期治療
顎の成長をコントロールしやすい時期。上顎を広げる装置などで上下顎の成長バランスを整える。治療期間は2年程度。

思春期(12歳以降)の2期治療
永久歯がそろうタイミングで本格的な歯列矯正治療を開始。治療期間は2〜3年程度。

参照:『矯正治療について』(九州大学病院 矯正歯科)

保険適用になるケースと自費治療の違い

矯正治療は原則として自費診療(保険適用外)ですが、顎変形症と診断された場合は、外科手術を伴う歯列矯正治療に健康保険が適用されるケースがあります。

保険適用を受けるには、指定された医療機関での診断と治療が必要となるため、まずは噛み合わせを専門とする歯科医師への相談が必要です。
保険適用の有無による主な違いは以下のとおりです。

保険適用(顎変形症と診断された場合)
外科手術および歯列矯正治療に保険が適用され、高額療養費制度も活用できるため自己負担額を抑えられる可能性がある

自費診療(保険適用外)
骨格的問題が軽度で手術が不要な症例や、審美目的の治療は保険適用外となる

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまでしゃくれと噛み合わせの関係や原因、治療方法についてお伝えしてきました。
要点をまとめると以下のとおりです。

  • しゃくれは骨格的な問題や歯並びの乱れ、顎の発育異常、舌癖、口呼吸などの生活習慣が原因となる場合があり、原因によって治療法が異なる
  • しゃくれを放置すると、咀嚼や発音への影響だけでなく、むし歯、歯周病、顎関節症、肩こり、頭痛など全身への悪影響が広がる可能性がある
  • 治療方法には歯列矯正治療外科的矯正治療、成長期の早期歯列矯正治療があり、顎変形症と診断された場合は保険適用となるケースもある

しゃくれは見た目だけの問題ではなく、噛み合わせや全身の健康にも影響を与えかねません。原因によって治療法が異なるため、自己判断せず早めに歯科医師へ相談しましょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師

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