「子どもが歯医者を怖がる理由」をご存じですか? 恐怖心を和らげる親のサポートを歯科医師が解説

「歯医者が怖い」「泣いてしまって診療が進まない」。そんな悩みを抱える保護者の方も多いのではないでしょうか。とくに小さなお子さんにとって、白衣や機械の音、口の中で作業されることは未知の体験であり、不安や恐怖につながりやすいものです。いったい、恐怖心を和らげるために、歯科医院ではどんな工夫をしているのでしょうか。子どもが歯医者を怖がる理由や、そして親ができるサポートも併せて、自由が丘Ohana Dental Clinic副院長の中村先生に詳しくお話を伺いました。

監修歯科医師:
中村 彩乃(自由が丘Ohana Dental Clinic)
なぜ歯医者が怖くなるの? 子どもの心理を知る

編集部
歯医者を怖がる子どもには、どのような心理的背景があるのでしょうか?
子どもが歯医者を怖がる背景には、まず「慣れない環境」への不安が挙げられます。いわゆる白衣症候群のように、病院や医療者への漠然とした恐怖心を抱きやすく、とくに注射などの医療体験が先行していると、歯科も「痛い・怖い場所」と認識してしまうことがあります。また、口の中は自分の目で見えないため、何をされるのかわからないということも恐怖につながります。子どもは納得できれば安心するケースが多いため、一つひとつ丁寧に説明していくことが重要です。
中村先生
編集部
年齢によって「怖がりやすい時期」はあるのでしょうか?
年齢によって恐怖心の現れ方には違いがあります。0歳からでも怖がる子はいますが、特に注意が必要なのは4〜5歳頃です。この時期は想像力が発達し、自分がされることをより具体的にイメージできるようになるため、突然「歯医者が怖い」と言い出す子も少なくありません。それまでは無邪気に受け入れていた診療に対して、不安や疑問を抱くようになるため、年齢や発達段階に応じた対応が求められます。
中村先生
編集部
小児歯科でおこなわれている「怖くない工夫」にはどのようなものがありますか?
小児歯科では、子どもの恐怖心を軽減するために様々な工夫がされています。初めての治療には必ずトレーニングの時間を設け、使用する機材の音や感触を事前に体験してもらいます。たとえば削る器具の音は「飛行機のエンジン音」、バキュームは「掃除機」といった具合に、親しみのあるものに例えて説明することで、不安を和らげる効果があります。子どもの理解を助けるためには、見せて、触って、納得してもらう経過が欠かせません。
中村先生
子どもの恐怖心を和らげる歯科の工夫とは?

編集部
受診の際に怖がり続ける子どもにはどのような対応があるのでしょうか?
まず大切なのは、「何が怖いのか」を子ども自身から聞き出すことです。そして、その恐怖心を否定せずに受け入れてあげることが、第一歩になります。「そっか、それが怖いんだね」と共感しながら、一緒に解決策を考えていくことで、子ども自身が安心感を持てるようになります。怖さの原因に寄り添うだけで、不安が軽減し、落ち着いて治療に臨めるケースが多いです。大丈夫だからと言い聞かせるのではなく、子どもの感情に丁寧に向き合う姿勢が大切です。
中村先生
編集部
怖がらないようにするために、実際の治療や説明のときどのような工夫をされていますか?
「見せる・触らせる・例える」の3つが基本です。機械の音を親しみやすいほかの音に例えたり、鏡や探針などの器具は、事前に手に取ってもらい「これ、痛くないよ」と確認してもらったりしてから使用します。さらに、お母さんやお兄ちゃんの処置を見せることで、「自分もできそう」と思えるようになるケースもあります。子どもにとって想像できることが安心につながるのです。
中村先生
編集部
実際に“歯医者嫌い”から“楽しんで通える子”になるケースはありますか?
たくさんいらっしゃいます。最初は大泣きしていた子が、数回通ううちに「歯医者行くの楽しみ!」と笑顔で来院するようになることも珍しくありません。最近では、イベントやセミナーを開催している小児歯科もあり、歯科医院を“楽しい場所”として認識してもらえる機会が増えています。歯科医院によっては職業体験型の取り組みもあり、そうした入り口から通いやすくなるケースも多いです。初回の印象をポジティブに変えることが、継続的な通院につながるのです。
中村先生
親ができる声かけ・準備・NG行動とは?

編集部
親の不安や無意識な態度が、子どもの恐怖心に影響することはありますか?
親御さんの表情や言動が、無意識のうちに子どもに伝わってしまうことは少なくありません。「〇〇したら先生に怒ってもらうよ」などの“脅し文句”も悪影響です。親世代は“治療中心”の歯科体験をしている方が多く、「歯医者は怖い場所」というイメージを持っている場合もあります。その意識が無意識に子どもに伝わってしまうのです。まずは親自身が歯科を“予防の場所”と捉え直し、ポジティブな言葉で声かけをしてあげることが大切です。
中村先生
編集部
親が付き添う場合と、あえて離れる場合、それぞれのメリットはありますか?
母子分離での診療は、処置がスムーズに進むことが多いです。親が近くにいると、どうしても子どもは甘えてしまい、できないと感じやすくなります。最初だけ一緒に入り、徐々に離れていくという方法も有効です。母子分離で頑張れたときには、たくさん褒めてあげることで自信にもつながります。大切なことは、子どもの成長段階に応じた対応と親子間の信頼です。
中村先生
編集部
自宅でできる“歯医者が怖くなくなる”ための声かけや遊びはありますか?
おすすめは親の通院に同行させることです。お母さんがクリーニングを受けている姿を見て、「あれ? 怖くないんだ」と感じてもらうだけでも、印象が大きく変わります。また、歯医者さんに関する絵本を読む、ごっこ遊びで人形を使うなどの方法も効果的です。遊びや日常の中に歯医者さんを取り入れることで、自然と身近な存在として受け止められるようになります。お子さんの気持ちを焦らず、少しずつ前向きに育てていきましょう。
中村先生
編集部まとめ
子どもが歯医者を怖がる背景には、環境への不慣れや何をされるかわからないという不安があることを学びました。しかし、丁寧な説明や親しみやすい例え、実際に見て、触れてみること、何より親の前向きな関わりによって、歯科医院は「怖い場所」から「通いたい場所」に変えることができることも教えていただきました。本記事が読者の皆様にとって、お子さんと一緒に安心して歯科に通うきっかけとなりましたら幸いです。
医院情報

| 所在地 | 〒152-0035 東京都目黒区自由が丘1丁目24-3 玉川ビル2F |
| アクセス | 東急東横線・東急大井町線「自由が丘駅」徒歩5分 |
| 診療科目 | 歯科 |




