保険適用でも白い歯(詰め物・被せ物)が入れられるって本当?「CAD/CAM」を歯科医が解説
歯科治療で入れる白い歯(詰め物・被せ物)というと、「保険が適用されない」というイメージをもたれている人も多いでしょう。しかし、近年は条件次第で保険でも白い詰め物や被せ物が入れられるようです。今回は保険適用の白い歯の種類や特徴、自費治療の白い歯(セラミック)との違いなどを、「こばやし歯科」の小林先生にお聞きしました。
監修歯科医師:
小林 靖明(こばやし歯科)
目次 -INDEX-
保険適用で白い歯はどこまで入れられる? 奥歯の詰め物・被せ物も白くすることは可能?
編集部
歯科治療の「白い歯」は保険がきかないイメージがあります。実際、保険でも白い歯が入れられるのでしょうか?
小林先生
たしかに、保険でも入れられる白い歯はあります。例えば、前歯の場合は従来の保険診療でも詰め物や被せ物は白い材料が使用されてきました。奥歯に関してもこれまでは「銀歯」がメインでしたが、保険診療の改定により、白い詰め物や被せ物が入れられるようになっています。
編集部
具体的にどの歯の治療まで白い歯を入れることができますか?
小林先生
一番奥の歯(前から7番目の大臼歯)が4本そろっていれば、その手前の6番目までは保険でも白い歯が入れられます。2023年12月以降、7番目の歯も白い歯が保険適用となりました。
編集部
奥歯も7番目までであれば、今は白い歯が入れられる可能性があるのですね。
小林先生
はい。条件はありますが、今は奥歯でも保険で白い歯が入れられるようになっています。これまで、奥歯の詰め物(インレー)と被せ物(クラウン)は金属しか使用できませんでした。しかし、現在は「CAD/CAMインレー」「CAD/CAM冠」という白い修復物が保険適用となっています。
保険の白い歯にはどんな特徴がある? 新たに保険適用となった「CAD/CAM」についても詳しく知りたい!
編集部
保険で入れられる白い歯には、どのような種類があるのでしょうか?
小林先生
従来から保険診療で用いられた白い歯に「コンポジットレジン(CR)」と「硬質レジン前装冠」があります。また、先述したCAD/CAMインレー・CAD/CAM冠も保険適用の白い歯に加わっています。
編集部
それぞれの詰め物・被せ物の特徴を教えてください。
小林先生
コンポジットレジンは歯科用のプラスチックで、ペーストタイプとフロータイプの2種類があります。はじめは柔らかいので、むし歯を削ってできた穴(窩洞)が多少複雑でも、すき間なく流し込めるのが大きな特徴です。ただし、物性的に強度が劣るため、大きなむし歯の治療に使用すると、噛んだときに割れてしまう恐れがあります。したがって、基本的にコンポジットレジンは小さなむし歯の治療に対応した保険の白い詰め物です。
編集部
硬質レジン前装冠は、どういう修復物なのでしょうか?
小林先生
犬歯から犬歯までの前歯に使われる被せ物です。金属がベースとなりますが、審美面を考慮して表面の見える部分は白いレジン(プラスチック)が貼りつけてあります。
編集部
新たに保険が適用されたCAD/CAMについても教えてください。
小林先生
CAD/CAMインレー・CAD/CAM冠は、いずれも修復物の形をコンピューター上で設計して、その形を機械で削り出す詰め物と被せ物です。削りだすブロックはプラスチック(レジン)に近いものの、従来のレジンよりも強度のある素材が使われています。したがって、コンポジットレジンよりも「割れにくい」のが特徴です。また、2023年12月から「PEEK材」という高機能プラスチックが、奥歯の被せ物の素材として保険で使用できるようになりました。
保険の白い歯と自費の白い歯(セラミック)はどう違う? 選び方のポイントや注意点について
編集部
保険で安く白い歯が入れられるのであれば、あえて自費の高い白い歯を選ぶ必要はないように思うのですが、いかがでしょうか?
小林先生
保険の白い歯と自費の白い歯は、使われる素材の物性や強度がそもそも異なります。保険の白い歯は自費のものと比べると物性が劣ります。そのため、あまり長持ちはせず、定期的なやり直しや作り直しが必要となります。対して、自費で使用するセラミックは耐久性に優れ、長く使っていても変色や劣化を起こしません。
編集部
つまり、自費の白い歯(セラミック)の方がより長持ちしやすいということですか?
小林先生
はい。自費の白い歯は「コストがかかる」という点がネックになりますが、基本的に詰め物や被せ物は少ない治療で長持ちするものを入れた方がいいと考えます。詰め物や被せ物を何度も作り直すということは、そのたびに歯を削ることになるため、治療によるダメージも大きくなります。白い歯に関しては最初にセラミックをおすすめする歯科医院が多いのも、1回の治療で長持ちするものを入れた方が歯への負担が少ないためです。
編集部
そうすると、コスト面をクリアできれば「セラミック」の白い歯がおすすめということでしょうか?
小林先生
そうですね。保険診療もこれまでは銀歯が主流でしたが、今は白いものに変わりつつあります。銀歯は見た目の問題だけでなく、アレルギーなど健康面への影響も心配されるため、個人的には保険の場合でも金属よりは白い素材の方をおすすめしたいです。一方で、強度に関していうとプラスチックは金属よりも劣ってしまうため、将来的な劣化や破損のリスクもよく理解しておく必要があります。そのような意味において、セラミックは体に優しく、さらに強度もあるという両者の良い所を併せ持つ素材と言えるでしょう。
編集部
そのほかに、保険の白い歯を選ぶ際に注意しておきたいことはありますか?
小林先生
保険診療は使用できる材料や時間に制約があるため、良いものを作りたくても「適合」という点に関してはやはり限界があります。これに対して、自費診療は自由に材料が使えるうえに時間の制約もないため、修復物の精度にこだわりながら作製することが可能です。このように、保険と自費は素材だけでなく、作製過程にも違いがあることはよく理解しておきましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小林先生
個人的な見解として、歯科治療で入れる詰め物・被せ物については金属をできるだけ避けて、白いものをおすすめしたいと考えています。最もおすすめなのはセラミックですが、コスト面でどうしても難しい場合は保険診療でも白い素材が選べるようになっています。それぞれの素材の特徴やメリット・デメリットをよく理解したうえで、歯科医と相談しながら自身に合ったものを選んでいきましょう。
編集部まとめ
かつては奥歯に白い詰め物・被せ物を入れたい場合に自費診療の素材しか選べませんでしたが、近年は条件がそろえば保険でも白い歯が入れられるようになっています。一方で、自費のセラミックと比べると耐久性が劣ることや、破損や劣化による再治療の可能性があることは、あらかじめよく理解しておく必要があります。詰め物・被せ物の種類を選ぶ際は、「費用が安い」など短期的なメリットだけでなく、長期的なメリット・デメリットも考慮しながら検討していきましょう。
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