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「根管治療」の前に知っておきたいリスクと注意点を歯科医が徹底解説

 公開日:2025/03/17

根管治療(歯内療法)は、自身の歯を残すために必要不可欠な治療です。一方で、治療中や治療後にどのようなリスクがあるのか、失敗しないためにはどのような歯科医院を選べばいいのか、不安に思う方も少なくありません。そこで、根管治療のリスクや注意点、さらに信頼できる歯科医院選びのポイントなどを、亀戸とよむら総合歯科の村野先生に聞きました。

村野 浩気

監修歯科医師
村野 浩気(亀戸とよむら総合歯科)

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神奈川歯科大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院(歯髄生物学分野)博士課程修了。日本歯科保存学会認定医。歯学博士。

根管治療中・治療直後に起こりうるトラブルとその対処法

根管治療中・治療直後に起こりうるトラブルとその対処法

編集部編集部

根管治療中に起こりやすいトラブルに、どのようなものがありますか?

村野 浩気先生村野先生

治療直後はわずかに痛みや違和感をともなうものの、それも数日で落ち着くケースがほとんどなのですが、まれに「フレアアップ」といって、治療後に大きな腫れや強い痛みを生じることがあります。フレアアップに関しては発生頻度が低いものの、完全に予防するのは困難です。とはいえ、これらの症状は治療の成否に影響を与えるものではなく、あくまで一時的な症状、副作用的なものだと考えてください。

編集部編集部

痛みや腫れが出た場合の対処法を教えてください。

村野 浩気先生村野先生

先ほどお話しした「フレアアップ」が生じた場合は、腫れや痛みが1週間ほど続くことがあります。その間は、処方された鎮痛剤で症状をコントロールしていくのが一般的です。ただし、顔全体が腫れたり、熱感をともなうような症状が表れたりした場合は、抗菌剤の投与を検討することもあります。鎮痛剤で症状が治まらない場合は、担当医にご相談していただければと思います。

編集部編集部

そのほかに、根管治療中に起こりやすいトラブルにどのようなものがありますか?

村野 浩気先生村野先生

治療中の歯は内部が削られて薄くなっているため、強く噛んだり触ったりすると仮の歯が取れたり、歯が割れたりすることがあります。また、治療で使用する「ファイル」という細い器具が根管内で折れてしまうことも、治療中に発生するトラブルの1つです。昔と比べて器具の性能もかなり向上していますが、それでも折れるリスクがゼロとは言い切れません。

編集部編集部

治療中に根管内で器具が折れた場合、その後の対処はどのように行うのでしょうか?

村野 浩気先生村野先生

器具が根管内で折れた場合は、基本的に折れた器具の除去を優先的に行います。ただし、根の奥深くや曲がった部分で折れた場合は、除去が難しい場合もあります。その部分に感染がなければ、折れた器具自体が問題を起こすことはありませんが、まだ感染が残っている場合は別の対処が必要です。具体的には、横から新たな通路を作って根の先の感染を除去するバイパス処置や、外科的に根の先端部分を切り取る手術などを行います。

根管治療のリスクと予後:治療後の再感染・再治療を防ぐためにできること

根管治療のリスクと予後:治療後の再感染・再治療を防ぐためにできること

編集部編集部

根管治療を受けた歯は、そうでない歯と比べて寿命が短いといわれますが、それはなぜでしょうか?

村野 浩気先生村野先生

根管治療では少なからず歯を削る必要があるため、治療前よりも歯が薄くなってしまいます。そのため、歯の強度が弱くなって割れたり欠けたりしやすくなるのが、寿命が短くなる要因の1つです。さらに、神経がなくなると噛んだ時の感覚が鈍くなるため、神経がある時と比べて強く噛みすぎてしまう傾向があります。その結果、歯に負担がかかり、ヒビや割れを生じやすくなります。このような理由から、根管治療を受けた歯はそうでない歯と比べて寿命が短くなりやすいため、できるだけ神経を取らずに済むように普段からケアを心がけることが大切です。

編集部編集部

根管治療では、治療後しばらくして再び腫れや痛みがでて治療を繰り返す(再治療になる)という話もよく聞きます。これはなぜでしょうか?

村野 浩気先生村野先生

治療後に再び炎症を起こす原因の多くに、初回治療(神経を取る治療)の精度が関係しています。根管治療では、治療中に無菌状態が保てていないと、根管のなかに新たな細菌が入り込み、再感染を起こしやすくなります。また、初回の治療で根管内の感染を完全に取り除けていない場合や、未処置の根管が残っている場合、そこが新たな感染源となって症状を再発してしまうことがあります。

編集部編集部

再感染や再治療を繰り返すと、その歯にどのようなリスクや影響がありますか?

村野 浩気先生村野先生

再感染や再治療の繰り返しにはいくつかのリスクがともないます。1つは、感染が複雑化・長期化して治りにくくなってしまう点です。また、治療が繰り返されるたびに歯を削る量が増え、歯質が薄くなると選択できる治療法も限られてしまうため、結果的に治療の難易度が上がってしまいます。これも治療が長期化してしまう要因の1つです。さらに、歯質が薄くなると歯の強度自体も落ちてしまうため、歯根破折(歯が折れる)のリスクも高まります。

編集部編集部

治療後の再感染・再治療を防ぐためには、どのような点に気をつけたらいいでしょうか?

村野 浩気先生村野先生

根管治療の成否や予後は、歯科医の技術に大きく依存すると言われています。したがって、まずは根管治療を専門に行っている歯科医院に相談してみることが大切です。とくに、初回治療(神経を取る治療)が非常に重要ですので、「とりあえず治療を受けてみる」という判断はおすすめできません。初回治療がしっかり行われていれば、再感染のリスクを大幅に減らすことができますので、適切な歯科医院選びと丁寧な治療を受けることが、治療を繰り返さないための大きなポイントとなります。

根管治療で失敗しない歯科医院選びのポイントと治療後のケア

根管治療で失敗しない歯科医院選びのポイントと治療後のケア

編集部編集部

根管治療で失敗しない歯科医院選びのポイントを教えてください。

村野 浩気先生村野先生

先ほどもお話ししたように、まずは根管治療(歯内療法)を専門に行っているところ、できれば専門医が在籍している医院が望ましいでしょう。そのうえで、設備面では「マイクロスコープ」「歯科用CT」「ニッケルチタンファイル」などがそろっているかをチェックしてみてください。くわえて、根管治療で「ラバーダムを使っているか」も重要なポイントになります。これらの技術や設備が不足している場合は、歯科医院選びを見直したほうがよいかもしれません。

編集部編集部

治療をしてもなかなか治らない・治療が長引くといった場合は、他院に相談すること(セカンドオピニオン)も検討したほうがいいのでしょうか?

村野 浩気先生村野先生

根管治療を適切に進めていても回数がかかることや、なかなか思うように治らないケースは少なくありません。したがって、その状況が一概に「治療が不適切」とは言い難く、必ずしも治療が上手くいっていないというわけではないことは、ご理解いただきたいと思います。そのうえで、大切なのは患者さんと歯科医師との信頼関係です。もし、患者さん自身が「この先生に任せて大丈夫だろうか」と不安に感じたり、歯科医師への信頼が揺らいだりした場合は、セカンドオピニオンを検討するのも良い選択だと思います。

編集部編集部

根管治療後の歯を長持ちさせるために、患者さんは普段からどのような点に気をつけたらよいでしょうか?

村野 浩気先生村野先生

治療後はほかの歯と同じように、毎日の歯磨きを徹底してむし歯や歯周病を防ぐことが長持ちのポイントです。くわえて重要なのが、歯科医院での定期メンテナンス(健診)です。定期的に歯科医院に通ってお口の状態やセルフケアの状況を確認してもらい、必要に応じて指導やアドバイスを受けることで、治療後の歯をより長持ちさせることができるでしょう。

編集部編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

村野 浩気先生村野先生

私自身、患者さんには痛みのない100%の治療を提供したいと考え、あらゆる面で最善を尽くしています。しかし、根管治療は目に見えない部分の治療であるため、予測しがたい様々なリスクやトラブルが起こりえます。したがって、何か問題が生じた際にしっかりと相談できる歯科医院を選び、歯科医と対話を重ねながら納得したうえで治療を進めていくことが大切です。ご自身の体を預ける治療ですので、「なんとなく不安だな」と感じたら迷わず相談できるような、信頼できる歯科医院をぜひ選んでいただきたいと思います。

編集部まとめ

根管治療後も予後を安定させ、再発を予防するうえでは、「初回の治療(神経を取る治療)の精度」が大きなカギになります。したがって、「とりあえず治療を受ける」のではなく、まずは根管治療に精通した歯科医院を選ぶことが重要です。一方で、根管治療は目に見えない部分を治療するため、予測が難しいリスクやトラブルが起こることも少なくありません。そのような場合に、不安や疑問はその都度相談し、納得がいくまで説明を受けることが、安心して治療を進めるポイントとなります。本記事を参考に、ぜひ信頼できる歯科医院を探してみましょう。

医院情報

亀戸とよむら総合歯科

亀戸とよむら総合歯科
所在地 〒136-0071 東京都江東区亀戸2丁目21-5 亀戸ファーストスクエア2F
アクセス 「亀戸」駅北口より徒歩2分
診療科目 歯科、矯正歯科、小児歯科

この記事の監修歯科医師