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「マウスピース型矯正」で起こりやすいトラブルはご存じですか? 対処法や口腔ケアの重要性も歯科医が解説!

 公開日:2024/10/25

「透明で目立ちにくい」と人気のマウスピース型矯正ですが、適切なケアを怠るとむし歯や口臭のリスクが高まることはあまり知られていないようです。今回は、マウスピース型矯正で起こりやすいトラブルとその原因、治療中の口腔ケアのポイントなどを、「みずた歯科医院」の楊先生に解説していただきました。

楊 義弘

監修歯科医師
楊 義弘(みずた歯科医院)

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日本歯科大学卒業。東京都内の歯科医院での勤務を経た後、東京都西東京市に位置する「みずた歯科医院」に入職。その後、理事長に就任。日本成人矯正歯科学会、日本小児歯科学会、日本メタルフリー歯科学会の各会員。

マウスピース型矯正に起こりやすいトラブルとその原因

マウスピース型矯正に起こりやすいトラブルとその原因

編集部編集部

マウスピース型矯正は「歯磨きがしやすい」というメリットがある一方で、「むし歯になりやすい」とも聞きます。これはなぜでしょうか?

楊 義弘先生楊先生

たしかに、マウスピース型矯正は装置を外して歯が磨けるメリットがあります。しかし、食事のたびにマウスピースを外す必要があり、さらに食後は歯磨きとマウスピースの洗浄が必要です。この手間を省こうとして、歯磨きをサボったり、マウスピースをつけたまま食事をしたりすると口内に食べカスが残り、それが原因でむし歯になってしまうことがあります。また、マウスピースが歯全体を覆ってしまうため、唾液が歯に届きにくくなります。唾液には、歯の表面を洗い流したり、歯質を修復したりする働きがあるのですが、この働きが弱まってしまうことも、むし歯になりやすい原因の1つです。

編集部編集部

マウスピース型矯正は口臭や口内炎も発生しやすいと聞きますが、その原因について教えてください。

楊 義弘先生楊先生

マウスピースを装着すると唾液の自然な洗浄作用が妨げられるため、細菌が繁殖しやすく、それが口臭の原因になることがあります。また、マウスピースの端が鋭かったり尖っていたりすると、歯ぐきや舌の粘膜を傷つけてしまい、口内炎のような症状を引き起こすこともあります。とくに、唇の内側や舌に当たりやすいので、注意が必要です。

編集部編集部

そのほかに、マウスピース型矯正に起こりやすいトラブルはありますか?

楊 義弘先生楊先生

お口の乾燥が挙げられます。マウスピースの装着によって無意識に口呼吸になってしまうことや、唾液の流れが妨げられてしまうことがその要因です。さらに、マウスピースの変形も、治療中に起こりやすいトラブルの1つです。例えば、装着したまま熱い飲み物を飲むと、マウスピースが変形してしまうことがあります。そうなると、新しく作り直すのに追加で費用がかかったり、治療期間が延びたりするため注意が必要です。

マウスピース型矯正の口腔ケアと日常生活における注意点

マウスピース型矯正の口腔ケアと日常生活における注意点

編集部編集部

マウスピース型矯正をしているときの歯ブラシの選び方・磨き方のポイントを教えてください。

楊 義弘先生楊先生

マウスピース型矯正中の歯磨きは、基本的に矯正開始前と同じ歯ブラシを使っていただいて問題ありません。ただし、歯の表面にアタッチメントという補助装置がついている場合は少し注意が必要です。アタッチメントは自分では外せないうえに汚れがたまりやすいため、歯ブラシの毛先を使って丁寧に磨きましょう。

編集部編集部

歯磨きのほかに、取り入れたい口腔ケアはありますか?

楊 義弘先生楊先生

歯ブラシでの清掃に加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを使って、歯と歯の間の清掃をおこなうことも大切です。マウスピースで覆われる部分なので、念入りにケアしましょう。また、フッ素(フッ化物)配合の歯磨き剤や殺菌成分配合の洗口液を使うのも効果的です。これらのケアを日常的に取り入れることで、より健康的な口内環境を保つことができます。

編集部編集部

マウスピース自体の洗浄や消毒はどのようにおこなうべきですか? また、その頻度はどのくらいが適切ですか?

楊 義弘先生楊先生

マウスピースのお手入れは、毎日欠かさずおこないましょう。おおよその汚れは軽くこするだけでほとんど取れるので、指や柔らかい歯ブラシを使って水で洗うだけで問題ありません。ただし、歯磨き粉は使わないようにしてください。研磨剤でマウスピースを傷つける可能性があります。また、週に1〜2回は専用の洗浄剤を使うと、目に見えない汚れや匂いも取れて、より清潔に保てるでしょう。

編集部編集部

マウスピース型矯正中の飲食で注意したいことは何ですか?

楊 義弘先生楊先生

基本的に、マウスピースをつけたまま口にできるのは「お水」だけです。それ以外の飲食時はマウスピースを外し、食べ終わったら歯を磨き、マウスピースを洗浄してから再装着しましょう。マウスピースを装着したままの飲食は、むし歯のリスクだけでなく、マウスピースの着色や変形のリスクもあります。とくに、熱い飲み物や着色しやすい食べ物には注意が必要です。

もし、マウスピース型矯正中にトラブルが起こったら? むし歯や口内炎、マウスピースの変形などの対処法について

もし、マウスピース型矯正中にトラブルが起こったら? むし歯や口内炎、マウスピースの変形などの対処法について

編集部編集部

マウスピース型矯正中にむし歯が発生した場合、どのような処置が取られますか?

楊 義弘先生楊先生

マウスピース型矯正中にむし歯が見つかった場合、状況に応じて対応が変わります。小さなむし歯であれば、矯正治療と並行して治療をおこなうことが可能です。その場合、一時的にマウスピースを外してむし歯の治療をおこない、治療後はすぐにマウスピースを装着して治療を続けます。また、状況によっては応急処置だけおこない、矯正治療を続けることもあります。一方で、むし歯が大きい場合や症状が進行している場合は、一度矯正治療を中断してむし歯の治療を優先することもあります。その場合、矯正期間が長引く可能性があるため注意が必要です。

編集部編集部

マウスピース型矯正中に粘膜のキズや口内炎が発生した場合、どのようなケアが必要ですか?

楊 義弘先生楊先生

マウスピースのエッジが原因でキズや口内炎が発生した場合、マウスピースを調整することで粘膜への当たりを緩和できます。また、塗り薬やうがい薬を処方したり、歯科医院によってはレーザー治療で症状を和らげたりすることもあります。ご家庭では口内を清潔に保つことも大切なので、多少痛みがあっても歯磨きは欠かさないようにしてください。通常、口内炎は1〜2週間で自然に治りますが、痛みのためにマウスピースを長時間外すと、治療計画に影響が出る可能性があるため注意が必要です。

編集部編集部

以上の対応は、矯正治療を受けている歯科医院でおこなってもらえるのでしょうか?

楊 義弘先生楊先生

矯正歯科専門医院のなかには、これらの治療に対応していない医院もあるので、その場合はほかの一般歯科医院での治療が必要になることもあります。治療中にトラブルが発生した場合の対応についても、治療前によく確認しておきましょう。

編集部編集部

お口の渇き(ドライマウス)は、どのように対処したらよいでしょうか?

楊 義弘先生楊先生

まずは、十分な水分補給を心がけましょう。こまめに水を飲むことで、口内の潤いを保つことができます。加えて、お口が渇きやすい場合は、舌のトレーニングや唾液腺マッサージも効果的です。舌をよく動かしたり、唾液腺を優しくマッサージしたりすることで、唾液が出やすい環境を作り出すことができます。

編集部編集部

マウスピースの変形や破損についてはいかがでしょうか? 歯科医院ではどのような対応をおこなっていますか?

楊 義弘先生楊先生

マウスピースが変形・破損した場合は、すぐに歯科医院に連絡することが大切です。軽度の変色や破損であれば、専用の洗浄剤や修理で対応できる場合があります。一方で、修理では対応が難しい場合は、新しくマウスピースを作り直す必要があります。いずれにしても、自己判断で使い続けると治療の効果が十分に得られなかったり、口内トラブルの原因になったりする可能性があるため、歯科医院に相談しましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

楊 義弘先生楊先生

マウスピース型矯正の大きな利点は、ワイヤー矯正と比べて歯磨きがしやすいことです。したがって、毎食後の歯磨きは丁寧におこないましょう。一方で、矯正治療中は歯の移動によって、歯ブラシがうまく当てられなかったり、自分では磨けているつもりでも汚れが残っていたりすることが珍しくありません。そのため、定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受けることをおすすめします。ご自身の日々のケアと歯科医院での定期的なクリーニングを両立しながら、お口の健康を保っていきましょう。

編集部まとめ

マウスピース型矯正は装置を外して歯磨きができる一方で、長時間お口の中に装置が入ることで口内に細菌が繁殖しやすく、むし歯や口臭のリスクが高まります。面倒でも食事の際は必ず装置を外し、食後の歯磨きとマウスピースの洗浄を欠かさずおこないましょう。万が一、トラブルが発生した場合は自己判断せず、早めに歯科医院に相談することが大切です。マウスピース型矯正のメリットだけでなく、デメリットやリスクも十分に理解したうえで、治療に臨みましょう。

医院情報

みずた歯科医院

みずた歯科医院
所在地 〒202-0023 東京都西東京市新町2-2-2 ドムス武蔵野1F
アクセス JR「武蔵境駅」 バスで10分
診療科目 歯科

この記事の監修歯科医師