マウスピース矯正に他の装置(ワイヤー矯正・顎間ゴム)を併用するのはどんな時? メリット・デメリットは?
最近ではマウスピース型矯正装置での治療が広まってきていますが、症例によってはワイヤー矯正装置を併用したり、顎間ゴムなどの補助装置を併用したりして治療を行うこともあるようです。これらの装置を併用するのは具体的にどのようなケースなのか、また併用のメリット・デメリットなどを目白歯科矯正歯科の山澤先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
山澤 秀彦(目白歯科矯正歯科)
目次 -INDEX-
マウスピース型矯正装置に「ワイヤー矯正」を併用する治療とは?具体的なケースやメリットについて
編集部
マウスピース型矯正装置に「ワイヤー矯正」を併用することもあるのでしょうか?
山澤先生
基本的にはマウスピース型矯正装置単独で治療しますが、なかには単独ではどうしても治せない、あるいはやってみたけど上手くいかないケースがあります。このような場合に、マウスピース型矯正装置の前後でワイヤー矯正を使用します。
編集部
マウスピース矯正をはじめる前か、もしくは終わった後で「ワイヤー矯正」を用いるということでしょうか?
山澤先生
その通りです。「併用」と聞くと同時進行で行うと思いがちですが、2つの装置を同時に使用することはあまり多くはありません。
編集部
では、具体的にどのようなケースに対して、マウスピース型矯正装置とワイヤー矯正の2つを用いるのでしょうか?
山澤先生
例えば、歯列に背の低い、あるいは傾きが大きい奥歯や八重歯があるケースでは、マウスピース型矯正装置を装着してもその歯だけ上手く覆えないことがあります。このような場合に、先にワイヤー矯正でこれらの歯を引っ張りだして歯列にある程度並べてあげたほうが、マウスピースがしっかり装着でき、治療効率も上がります。また、抜歯して矯正するケースでは、先にワイヤー矯正で歯を動かしてスペースを狭くしてから、マウスピース型矯正装置に移行することもあります。
編集部
マウスピース矯正の後に、ワイヤー矯正を行うのはどのようなケースですか?
山澤先生
マウスピース型矯正装置単独で治療したものの、患者さんの協力が得られず思うように歯が動かなかったり、すき間が閉じなかったりした場合に最終仕上げとしてワイヤー矯正を用いることがあります。
編集部
マウスピース型矯正装置にワイヤー矯正を併用すると、どのようなメリットがありますか?
山澤先生
患者さんの協力度が良い場合は、マウスピース型矯正装置単独でももちろん治せるのですが、使用状況が悪い場合にはマウスピース型矯正装置を何回作り直しても治りきらないこともあります。そのような場合ワイヤー矯正を使用した方が結果的に早く歯が動くので、治療期間の短縮に繋がります。また、先述のように、マウスピース型矯正装置が歯を覆うことができないような歯並びでも術前にワイヤー矯正を併用することでマウスピース矯正をすることができます。ワイヤー矯正は24時間歯を動かすことができるので、歯並びを確実に治せるというのもメリットだと思います。
マウスピース型矯正装置に「顎間ゴム」を使用するとどんなメリットがある? 具体的なケースは?
編集部
マウスピース型矯正装置に「顎間ゴム」を併用するのはどのようなケースですか?
山澤先生
顎間ゴムについては、マウスピース型矯正装置のどのケースでも、ある程度必要になってきます。とくに多いのは、奥歯を後ろに移動させるケースです。ワイヤー矯正は奥歯を後ろに動かすのを苦手としていますが、マウスピース型矯正装置に顎間ゴムを組み合わせるとそれが可能になります。
編集部
そのほかに、どのようなケースで顎間ゴムを用いますか?
山澤先生
上下の歯が噛み合っていない、あるいは噛み合わせをさらに良くしたい場合に、歯列に対してゴムを垂直にかける「垂直ゴム」を使用します。さらに、奥歯の噛み合わせがすれ違う「シザーズバイト」や「クロスバイト」という不正咬合では、「交叉ゴム」と呼ばれる顎間ゴムを使用した方が効率よく治療を行える場合があります。
編集部
マウスピース型矯正装置に顎間ゴムを併用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
山澤先生
先述のように、マウスピース型矯正装置と顎間ゴムの併用は、歯を後ろに移動するのを得意とします。これによって、歯を抜かずに治せる可能性が高くなるのがメリットです。マウスピース型矯正装置では歯を引っ張り出す移動が苦手なのですが、顎間ゴムを併用することによって効率よく歯を引っ張り出すことができるので、最終的な噛み合わせを良くすることができます。また、ワイヤー矯正の併用と同様に、治療効率が上がることで治療期間を短縮することができます。
マウスピース型矯正装置にワイヤー矯正・顎間ゴムを併用するデメリットや注意点
編集部
マウスピース型矯正装置にワイヤー矯正を併用した場合、デメリットはありますか?
山澤先生
固定式の装置がつくことで、痛みや違和感が強くなったり、歯磨きがしづらくなったりします。また、マウスピース型矯正装置単独のときよりも、食事が制限されてしまうのもデメリットだと思います。
編集部
マウスピース型矯正装置のみと比べると、「わずらわしさ」が増えてしまう感じでしょうか?
山澤先生
そうですね。ほかにも、器具が頬や唇の粘膜に当たって傷ついたり、口内炎ができたりするリスクも高くなります。また、通院回数もマウスピース治療単独の場合は2か月に1回のペースだったのが、ワイヤー矯正を行うと1か月に1回と頻度が多くなります。
編集部
「顎間ゴム」はいかがでしょうか? こちらも併用に際し、デメリットや注意点はありますか?
山澤先生
顎間ゴムはマウスピース型矯正装置と同様に、患者さん自身で装置の着脱が必要となります。毎日決められた時間装着しないと効果はありませんし、思うように顎間ゴムの効果が得られない場合には当初の治療計画を最初から見直す必要もでてきてしまいます。
編集部
必要な装置とはいえ、毎日つけたり外したりするのは面倒に感じてしまいそうです。
山澤先生
ゴムをかけること自体はそんなに難しいことではないですし、さほど手間暇もかかりません。また、きちんと使わないと治療の変更を余儀なくされますし、歯を抜かずに治療できるはずが、結果的に歯を抜かないと治せなくなる、あるいは噛み合わせが悪いまま治療を終えることになってしまうなど、かえって治療が面倒になってしまいます。したがって、顎間ゴムを併用する場合は、必ず使用時間は必ず守るようにしてください。
編集部
最後に読者へメッセージをお願いします。
山澤先生
近年はマウスピース型矯正装置単独で治すのが一般的となってきましたが、歯並びの状態や治療の経過によってはほかの装置や補助装置の併用が必要になります。その点をふまえ、治療を受ける際はマウスピース矯正治療だけでなく、ワイヤー矯正やほかの装置でリカバリーできる矯正治療の研修を受けたドクターを選ぶことが大切です。矯正治療の知識や経験の豊富な歯科医院をぜひ探してください。
編集部まとめ
近年はマウスピース型矯正装置のみで治療できるケースが多い一方、単独で難しいケースについてはワイヤー矯正や顎間ゴムを併用することもあるようです。いずれも多少の面倒やわずらわしさが伴うものの、効率が上がることで治療期間が短縮されるほか、仕上がりが良くなるというメリットがあります。これらの装置を併用する際は、歯科医の指示を守って正しく装着するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒171-0031 東京都豊島区目白3-4-11 ヒューリック目白3F |
アクセス | JR山手線「目白駅」徒歩2分 |
診療科目 | インプラント、一般歯科、予防治療、入れ歯、口腔外科、審美治療、小児歯科、歯周病、矯正歯科 |