ワイヤー矯正の｢裏側｣と｢表側｣の違いを歯科医が解説 付け方でメリット･デメリットはどう変わる?

篠原先生

ワイヤー矯正は「ブラケット」と呼ばれる小さなボタンのような装置と、細いワイヤーを使って歯並びを整える治療法です。歯の表面に貼り付けたブラケットにワイヤーを通し、動かしたい方向に適切な力を加えて歯を動かしていきます。

篠原先生

ワイヤー矯正で使用する装置は、患者さん自身で外すことはできません。ブラケットは特殊な接着剤を使って歯面に装着するため、外す際は専用の器具が必要になります。したがって、一度治療を開始したら、治療が終わるまで基本的に外せないと思っていてください。

篠原先生

ブラケットとワイヤーの組み合わせは同じですが、表側矯正ではこれらの装置を歯の表側に装着するのに対し、裏側矯正では歯の裏側に装着する点が異なります。表側矯正はどうしても装置が目立ってしまいますが、裏側矯正の場合は装置が人の目に触れることがありません。そのほかの違いとしては、歯に前から力が加わるか、後ろから力がかかるかで歯の動き方や動かせる範囲、方向などが変わります。

篠原先生

そうですね。治療中に装置が見えない点が裏側矯正の一番のメリットです。また、審美面においては表側矯正より裏側矯正の方が、より美しく仕上がります。裏側矯正にはほかにも、表側矯正と比べて「むし歯になりにくい」「舌癖が改善されやすい」というメリットもあります。

篠原先生

歯の裏側は唾液が常に循環しているので歯や装置についた食べかすが取れやすいほか、唾液による殺菌作用や再石灰化作用が働きやすくなります。とはいえ、歯磨きを疎かにするとむし歯になってしまうため、裏側矯正であっても毎日のブラッシングは必須です。

篠原先生

歯並びは舌から受ける力の影響を受けやすく、「舌を前に突き出す」といった舌の癖は歯を前に押し出して歯並びを悪くします。つまり、仮に治療で歯並びが綺麗になっても、舌の癖が残ったままだと再び歯が動いて歯並びが元に戻ってしまうわけです。裏側矯正は歯の裏についた装置が舌の癖を防いでくれるので、治療が終わるまでの間に癖が改善され、結果として後戻りのリスクも少なくなります。

篠原先生

大きなデメリットとしては、表側矯正と比べて費用がかかる点が挙げられます。歯の裏側に装置を付けるので、技術的に難易度が高く、調整にも少し時間がかかってしまうのがその要因です。

篠原先生

裏側矯正は「食事がしづらい」「発音しにくい」とよく言われていますが、それも最初の1～2週間ぐらいのことで、時間が経つに連れて慣れていきます。したがって、ある程度時間が経てば、日常生活におけるストレスも表側矯正とそれほど差はないでしょう。

篠原先生

どちらの治療も最終的な仕上がりに大きな差はありません。表側矯正と裏側矯正で大きく変わってくるのは治療中の「見た目」と「費用」なので、どちらを優先するかで治療を選択していくと良いと思います。

篠原先生

そうですね。マウスピース矯正も装置が透明で目立たないのが特徴ですが、裏側矯正は装置が「見えない」という点でマウスピース矯正よりも見た目に優れていると思います。さらに仕上がりについても、ワイヤー矯正は3次元的な動きやコントロールができる分、マウスピース矯正よりも仕上がりは綺麗です。

篠原先生

矯正治療は自費診療なので受診する歯科医院によって費用は大きく異なりますが、一般にワイヤー矯正の費用相場は60～150万円前後といわれています。表側と裏側での違いですが、表側矯正の費用相場が60～130万円前後なのに対し、裏側矯正では100～180万円前後と費用に差があります。

篠原先生

治療期間は最初の歯並びの状態によって異なります。表側矯正と裏側矯正ではそれぞれに得意とする動きがあるので、そこがうまくマッチすると結果的に治療期間の短縮につながります。つまり、歯並びの状態によって表側矯正のほうが早い場合もあれば、裏側矯正のほうが早く終わるケースもあるわけです。したがって、自分の歯並びはどちらの方法がマッチして、治療が早く終わるかということも、治療法の選択の参考にしていただければと思います。

篠原先生

歯列矯正でどの治療法を選ぶかは個々の事情でその基準も変わりますが、「治療中の見た目」を重視したい場合は装置が人目に触れない「裏側矯正」がメリットは大きいといえます。ただ、どの治療法にもメリットとデメリットがありますので、担当医とよく相談のうえで決めていきましょう。