「入れ歯が合わない原因と対処法」を歯科医が解説 痛い・外れる・話しづらいを改善する方法とは?
入れ歯が合わないと食事を楽しめないだけでなく、痛みに悩まされたり会話がスムーズにできなかったりして日常生活に大きな支障を来してしまいます。「入れ歯だから仕方がない」と諦めがちですが、我慢せずに歯医者さんに相談すれば、調整や修理で入れ歯のお悩みを解決できることもあるようです。そこで、入れ歯が合わない場合に起こりやすいトラブルやその原因、歯科医院での対処法などを植村歯科医院の植村先生に聞きました。
監修歯科医師:
植村 晃一(植村歯科医院)
目次 -INDEX-
入れ歯が合わないとどうなる? よくある入れ歯トラブルとその原因を歯科医が解説
編集部
入れ歯が合わないと、どのようなトラブルが起こりやすくなりますか?
植村先生
入れ歯が合わない場合に生じるトラブルとしては、「痛みがある」「すぐ外れる」「話しにくい」の3つの悩みが多く聞かれます。
編集部
では、その3つのトラブルの原因についてお聞きします。まず入れ歯が「痛い」という場合に考えられる原因は何ですか?
植村先生
シチュエーションごとにいくつか原因が考えられます。まず、入れ歯が合う・合わないにかかわらず、入れ歯を新しく作った直後は、どうしても痛みがでやすい傾向があります。これは新しい入れ歯がまだお口に馴染んでいなかったり、使い方に慣れていなかったりするためです。入れ歯も義手や義足と同じで、入れてすぐに使いこなせるものではないため、お口に馴染んでくるまではある程度の時間と訓練が必要です。
編集部
ほかのシチュエーションとしては?
植村先生
入れ歯のもともとの形や大きさが患者さんのお口に合っていない場合は、作り直しや調整をしないと痛みは改善できません。また、左右の噛み合わせが合っていない場合も、痛みを感じやすくなります。
編集部
「入れ歯が外れる」という場合に考えられる原因は何でしょうか?
植村先生
こちらは、部分入れ歯と総入れ歯で考えられる原因が異なります。部分入れ歯が外れやすい場合は、「クラスプ」という歯にかける金具が経年劣化で緩んでいる可能性があります。新しく作った部分入れ歯が外れやすい場合は、クラスプの数や位置など入れ歯の設計自体に問題がある可能性が高いでしょう。部分入れ歯・総入れ歯に共通する原因では、入れ歯の形や長さ、厚みがお口に合っていないことが考えられます。とくに、総入れ歯の場合は入れ歯の辺縁(フチの部分)が長すぎても短すぎても外れやすくなります。さらに、左右の噛み合わせのバランスが悪い場合も入れ歯が外れやすいため注意が必要です。
編集部
では、3つめの「入れ歯で話しにくい」という場合に考えられる原因を教えてください。
植村先生
こちらも1つは「入れ歯にまだ慣れていない」ことが考えられます。入れ歯の慣れ方には個人差があり、患者さんの順応性や許容量といった「入れ歯の受け入れやすさ」によって大きく変わります。とくに、保険の入れ歯はプラスチック製なので、強度を持たせるためにはある程度の厚みが必要です。入れ歯が厚くなるとお口の中のスペースが狭くなるため、通常よりも舌が動きにくく、会話がしづらくなります。この厚みにどうしても慣れない場合は、入れ歯を薄くすることができる金属の「金属床」といった入れ歯に変えるのも方法の1つです。
入れ歯が合わないトラブルは歯科医院で改善できる? 「作り直し」以外にどんな対処法がある?
編集部
入れ歯が合わない場合は、やはり新しく作り直すほうがよいのでしょうか?
植村先生
入れ歯がある程度お口の形に合っている場合は、調整や修理で対応できる可能性が高いでしょう。しかし、調整や修理にも限界はあるので、もともとの形が合っていなかったり、設計自体に問題があったりする場合は新しく作り直す必要があります。
編集部
状況によっては調整や修理で改善が可能なのですね。具体的に、歯医者さんではどのような調整を行ってもらえるのでしょうか?
植村先生
噛み合わせが合っていない場合は、噛み合わせを高くしたり低くしたり、あるいは左右のバランスを整えたりといった調整を行います。同じく、入れ歯の長さが長い場合は削って短くし、反対に短い場合は足りない部分を足してあげて、適切な形や大きさに調整していきます。
編集部
入れ歯の調整は削るだけでなく、足りない部分を補うこともできるのですか?
植村先生
はい。長く使っているうちに入れ歯と歯ぐきの間にすき間ができてスカスカになった場合も、空いた部分に素材を足して調整することも可能です。また、部分入れ歯の場合は、金具の部分(クラスプ)だけを新しく作り直して入れ替えることもできます。
編集部
やはり「入れ歯が合わない」と感じたら我慢せずにまずは歯医者さんでみてもらうほうがよさそうです。
植村先生
そうですね。とくに、総入れ歯の方は入れ歯が合わないと食事ができなくなりますから、早めに歯科医院で調整してもらうことが大切です。仮に新しく作り直すにしても完成まで1~2か月はかかるため、その間に歯のない時期がないようにする必要があります。その場合、ほかにお持ちの古い入れ歯をある程度使えるようにする方法もいくつかありますから、歯科医院でご相談していただければと思います。
入れ歯が合わないまま使い続けると、どんなリスクがある?
編集部
合っていない入れ歯をそのまま使い続けるとどんなリスクがありますか?
植村先生
入れ歯が合わず痛みや噛めない状態が続くと、自然とその部分をかばうように口を使ってしまうため、変な噛みグセや動かし方が身についてしまいます。さらに、そのクセや動かし方につられて筋肉の動きも偏ってしまいがちです。こうなると、新しく入れ歯を作ってもお口に馴染みにくく、慣れるのに時間がかかってしまいます。また、入れ歯が緩くてすぐ外れるからといって安易に入れ歯安定剤を使うのも要注意です。
編集部
入れ歯安定剤にもリスクはあるのですか?
植村先生
はい。入れ歯が合わないところを安定剤で無理に合わせて使ってしまうと、あごの骨に余計な負担がかかってしまいます。そうすると、次第にあごの骨が痩せていき、かえって入れ歯が合わなくなってしまうため注意が必要なのです。
編集部
ほかにも合わない入れ歯を使い続けるとどのようなリスクが考えられますか?
植村先生
入れ歯が合わないと、軟らかい食品を好んだり、食べる量を抑えたりする傾向があります。とくに、ご高齢の方の場合は、お肉などのタンパク質が不足すると、体の抵抗力や筋力の低下につながりかねません。また、食事自体が嫌になって食べる楽しみがなくなると、精神的にも弱ってしまいます。
編集部
合わない入れ歯を使い続けることは、健康状態の悪化にもつながってしまう可能性があるのですね。
植村先生
※参照:日本歯科医師会「歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020」
https://www.jda.or.jp/park/
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
植村先生
入れ歯をお使いの方のなかには、自身の入れ歯が合っていないことに気づかずに使い続けている方も実は少なくありません。車を買ったら定期的にメンテナンスをしていくように、入れ歯も「もの」ですから作ったら終わりではなく、歯医者さんで定期的なメンテナンスを受けることが大切です。入れ歯でも歯科定期健診を継続し、長く快適な状態を維持していきましょう。
編集部まとめ
入れ歯が合わなくなると、痛みやすぐに外れる、話しづらいといったトラブルの原因になります。このような不具合も、入れ歯やお口の状態によっては歯科医院での調整や修理での対応が可能です。合わない入れ歯を無理に使い続けるとあごの骨がやせてしまうだけでなく、体の健康状態にも影響を及ぼすおそれがあります。入れ歯が合わないと感じたら、我慢せずに早めに歯医者さんに相談しましょう。
医院情報
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