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顎の骨が少なくてもインプラント治療が受けられる⁉ 「骨造成(こつぞうせい)」を歯科医が解説

 更新日:2023/03/27
顎の骨が少なくてもインプラント治療が受けられる⁉ 「骨造成(こつぞうせい)」を歯科医が解説

かつては「骨が薄い・量が足りない」という理由で断られることも多かったインプラント治療。しかし、近年は「骨造成(こつぞうせい)」という方法で、骨が少ない人でもインプラント治療が可能になっています。では、その骨造成とはどのような治療なのか、そして治療によるメリット・デメリットなどを「赤坂ひろデンタルsmile design & works」の西原先生に解説していただきました。

西原 宗信

監修歯科医師
西原 宗信(赤坂ひろデンタル smile design & works)

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九州大学歯学部卒業。九州大学病院口腔総合診療科にて研修後、2014年よりドイツのフライブルク大学補綴科に所属。帰国後、複数の歯科医院に勤務して研鑽を積む。2022年、東京都港区に「赤坂ひろデンタル smile design & works」を開院。歯科先進国ドイツで習得した知識や技術を活かし、失われた機能の回復に審美性や咬合を考慮した診療をおこなう。日本口腔インプラント学会、日本顎顔面インプラント学会の各会員。

骨造成とは? どんなメリット・デメリットがある?

骨造成とは? どんなメリット・デメリットがある?

編集部編集部

インプラント治療における「骨造成」とは、どのような治療なのでしょうか?

西原 宗信先生西原先生

一口に「骨造成」といっても様々な種類があるのですが、一般的にはインプラント治療において骨が不足している部分に骨を増やし、インプラントを入れるスペースを作る処置のことを指します。

編集部編集部

具体的に、どのように骨を増やすのでしょうか?

西原 宗信先生西原先生

患者さん自身から取り出した「自家骨(じかこつ)」や、人工的に作られた「骨補てん材」などを骨の足りない部分に補い、そこを足がかりに新しい骨を作っていきます。どのような方法で補っていくかで手術の方法が異なりますので、骨造成はこれらの術式の総称と考えていただくと理解しやすいと思います。

編集部編集部

なぜ、「骨造成」をおこなう必要があるのでしょうか?

西原 宗信先生西原先生

近年のインプラントは長さや太さの種類も多く、患者さんの骨の厚みや高さに応じて選べるようになっています。しかし、最低限の長さ・太さのインプラントを入れるにも、それを支えるだけの十分な骨の厚みや高さが必要です。もし、骨の量が足りないままインプラントを入れてしまえば、治療後すぐにグラグラしたり抜け落ちたりするリスクが高くなります。そうならないためにも、骨造成で必要な骨を増やしてあげることはとても重要なのです。

編集部編集部

「骨が足りない人でもインプラント治療ができる」という以外にも、何かメリットはありますか?

西原 宗信先生西原先生

副次的な効果ですが、痩せていた骨を増やしてあげることで、歯ぐきの見た目やバランスが整います。ただし、審美面を重視して骨造成をおこなうというよりは、あくまで必要な骨を増やした結果として得られる効果なので、その点はご留意ください。

編集部編集部

骨造成はデメリットもあるのでしょうか?

西原 宗信先生西原先生

患者さんのデメリットとしては、通常の治療に骨造成がプラスされて治療期間が長くなること、さらに費用も別途かかってしまうことなどが挙げられます。また、骨造成に患者さんの別の部位から取り出した自家骨を使用する場合は、その部位に痛みや腫れが強く出てしまうのもデメリットになります。

編集部編集部

骨造成は、どのくらいの頻度でおこなわれているのでしょうか?

西原 宗信先生西原先生

日本では、ごく一般的におこなわれている処置だと考えています。というのも、アジア人は人種的に欧米人と比べて骨の高さや厚みが少なく、インプラントを入れるスペースが足りないケースも多いからです。簡単な処置まで含めると、日本では割と広くおこなわれているような印象がありますね。

骨造成の種類を歯科医が紹介

骨造成の種類を歯科医が紹介

編集部編集部

骨造成の手術法(術式)には、どのような種類がありますか?

西原 宗信先生西原先生

一般の歯科医院では「骨誘導再生法(GBR法)」と、上顎に対しておこなう「サイナスリフト」「ソケットリフト」という術式がおこなわれています。

編集部編集部

ではまず、「骨誘導再生法(GBR法)」とはどのような治療か教えてください。

西原 宗信先生西原先生

「骨誘導再生法」という名前にあるように、この術式は骨を増やしたいところにスペースを作り、そこに新しい骨を誘導してあげる治療法です。自家骨や骨補てん材を補った部分を特殊な膜で覆い、そこに新たな骨の再生を誘導していきます。

編集部編集部

上顎に対しておこなう「ソケットリフト」「サイナスリフト」は、どのような治療なのでしょうか?

西原 宗信先生西原先生

この2つは、主に上顎の奥歯のインプラント治療で骨の高さが足りないケースに対しておこなう治療です。上顎には鼻の両側に「上顎洞」という空洞がありますが、奥歯のインプラント治療ではこの空洞によって骨の高さが不足してしまうケースがあります。このような場合に、その部分の骨の高さを増やしてあげるのが「ソケットリフト」や「サイナスリフト」という術式です。

編集部編集部

「ソケットリフト」と「サイナスリフト」は、どのような点で違うのでしょうか?

西原 宗信先生西原先生

サイナスリフトは骨の量が圧倒的に少ない、あるいは広範囲に増やしたい場合に用いられる術式です。歯ぐきを大きく開く必要があるため手術による負担は大きくなりますが、残っている骨量に関係なく適応できるという利点があります。一方のソケットリフトは、歯1本分の比較的狭い範囲で骨を増やしたい時に用いる術式です。歯ぐきを大きく切るなどの処置が必要ないので手術による負担は少ないですが、ある程度骨が残っているケースでないと適応は難しくなります。

骨造成を受けるうえで知っておきたいこと

骨造成を受けるうえで知っておきたいこと

編集部編集部

骨造成は術後に痛みや腫れが出るのでしょうか?

西原 宗信先生西原先生

広範囲に及ぶ骨造成でなければ、仮に痛みや腫れが出ても歯を抜いたときと同程度であることがほとんどです。一方で、自家骨を取り出すケースやサイナスリフトのように広範囲に骨を増やすケースについては、痛みや腫れが強く出るケースも多くなります。

編集部編集部

仮に痛みや腫れが出た場合、痛みのピークはいつ頃なのでしょうか?

西原 宗信先生西原先生

多くの場合、術後2~3日目がピークとなり、1週間ほどで症状は落ち着きます。痛みが続くときは、痛み止めを服用しながら症状をコントロールしていきます。

編集部編集部

骨造成をしてから新しい骨ができるまでに、どれくらい期間がかかりますか?

西原 宗信先生西原先生

新しい骨ができるまでには、おおよそ6~8カ月ほどかかります。全体の治療期間については、骨造成をインプラント手術と別におこなうか、インプラント手術と同時におこなうかで異なります。一般的には、同時におこなう方が期間は短くなります。

編集部編集部

骨造成の費用はどれくらいかかりますか?

西原 宗信先生西原先生

骨造成はインプラント治療と同様に、治療費に保険が適用できません。したがって、治療を受ける歯科医院や、どのタイプの骨造成をおこなうかによって費用は大きく異なります。おおまかな相場としては、サイナスリフトで20~30万円前後、ソケットリフトで5~10万円前後、GTR法で5~10万円前後くらいだと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

西原 宗信先生西原先生

骨造成は、これから入れるインプラントを長く使っていただくために必要な処置です。治療期間や費用面に不安を感じる人も多いと思いますが、まずは信頼できる歯科医に相談して納得したうえで治療に臨みましょう。

編集部まとめ

インプラント治療における骨造成は、骨の足りない部分に新しい骨を作り、インプラントを長期的に安定させることを目的におこなわれるとのことでした。一番心配な術後の腫れや痛みに関しては、広範囲に及ぶ骨造成を除くと抜歯と同じくらいの症状で済むことが多いようです。費用や治療期間については、どの手術法で・どのくらい骨を増やすか、また受診する歯科医院によって異なるため、まずは信頼できるドクターに相談してみましょう。

医院情報

赤坂ひろデンタル smile design & works

赤坂ひろデンタル smile design & works
所在地 〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目14−31 ウィンド赤坂2F
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診療科目 歯科

この記事の監修歯科医師