インプラントの治療期間ってどのくらい? 流れや治療後の注意点を歯科医師が解説
インプラントの埋入手術自体は数時間単位だとしても、顎の骨の中で安定するまでの期間が必要です。はたして、トータルの治療期間はどれくらい必要なのでしょうか。今回は、Medical DOC編集部が歯科医師の石本先生(目黒石本歯科クリニック)に取材しました。
監修歯科医師:
石本 光則(目黒石本歯科クリニック)
インプラントの治療期間は?
編集部
今回は、インプラント治療の期間や流れについて伺おうと考えています。
石本先生
わかりました。まず治療の流れですが、大きくは4段階に分かれます。「①事前のカウンセリング」「②土台の埋入手術と安定するまでの経過観察」「③土台への人工歯の装着」「④定期的なメインテナンス」です。①~③までは、前歯か奥歯かにもよりますが、おおむね「3カ月」と考えてください。④はできるだけ続けていくのが理想的です。
編集部
実質の治療開始は②だと思うのですが、埋入手術の時間はどれくらいかかるのでしょうか?
石本先生
インプラントの素材や埋入する本数、歯科医師の腕などにもよりますが、院内にいる時間で「平均1時間30分」といったところだと思います。麻酔などの術前処置や検査で30分、手術で30分、術後の休憩で30分というイメージです。ただし、この段階では土台を埋め込むだけの手術なので、まだ顎の骨とインプラントがしっかり生着していません。土台が骨としっかり生着するまで、おおむね「3カ月」かかるということですね。
編集部
ところで、埋入手術を始めてから、中止となることはあるのでしょうか?
石本先生
CTによる画像診断がきちんとできていれば、原則として起こらないはずです。比較的多いのは、「上顎にインプラントを埋入しようとしたら、思っていたよりも副鼻腔(ふくびくう)が広くて貫通しそうなので中止に至った」ケースでしょうか。しかし、これは事前のCT検査で把握できる項目です。
編集部
歯周病などがあるときも、インプラントが非適応になると聞きました。
石本先生
そのままストレートに非適応ということではなく、「まずは歯周病を治してから、インプラント治療に取りかかりましょう」ということです。歯周病を治さずにインプラントを埋入すると、歯周病菌によって歯ぐきや顎の骨が溶けてしまうことがあります。せっかく手術したインプラントが傾いたり抜けたりしないよう、まずはしっかり病気を治しましょう。この場合、主訴の治療期間は別途、見ておく必要があります。
インプラント治療をしている間にすること
編集部
③までの3カ月の間は、「ひたすら待つ」イメージでしょうか?
石本先生
いいえ。患部の抜歯を1週間後にします。加えて、患部の経過観察もおこないます。そのあたりの通院回数や期間は、患者さんの症状に合わせて歯科医師から説明があると思いますので、その指示に従うようにしましょう。
編集部
前歯の手術の場合、抜歯したままだと見た目が気になります。
石本先生
そうですよね。ですから、③までの間「仮歯」などを入れることもあります。とはいえ、患部で食べ物を噛むと、手術箇所に力が伝わってしまいます。そのため、食事するときは仮歯で噛まないように注意してください。
編集部
万が一、手術箇所から血が出たり痛み出したりしたらどうすればいいですか?
石本先生
インプラントの担当医に遠慮なくご相談ください。手術跡は一種の傷ですから、完全に治るまでは時間がかかります。また、手術部位の炎症は「治ろうとするプロセスの1つ」です。もちろん、感染によって炎症を起こしているのであれば、感染源を取り除く必要があります。
編集部
インプラントの埋入箇所が複数あるときは、どのような進め方になるのでしょうか?
石本先生
同時にできることもあれば、それぞれ別の手術としておこなうこともあるので、ケース・バイ・ケースです。同時進行であれば、手術時間が1カ所あたりプラス30分必要です。別の手術であれば、「箇所数 x 3カ月」とお考えください。また、同時進行が可能であっても、患者さん側から「別の日時にしてほしい」と頼まれる場合もあります。時間がかかっても大きな手術を避けたいのか、全体の治療日程を縮めたいのか、そのあたりは遠慮なくご相談ください。
インプラントの寿命を延ばすためには?
編集部
最後は④のメインテナンスです。インプラントを「埋めて終わり」ではないということですね?
石本先生
はい。ぜひ、歯科健診を続けてください。インプラントは人工物なので病気になりませんが、それを支える歯ぐきや顎の骨は「生きた組織」です。生きた組織ということは、病気になり得ます。その代表格がインプラント周囲炎なのですが、「硬いインプラントが柔らかい組織を押し広げて、その隙間に歯周病菌が繁殖する」ということも起こり得ます。ですから、歯のなくなった場所にインプラントを埋めるだけでなく、組織を押し広げないような、噛み合わせも考えた治療計画が重要になります。
編集部
ちなみにインプラントの寿命は、どのくらいなのでしょうか?
石本先生
一般には「10~15年」とされています。保証内容も、おおむねそれくらいの期間を想定しているようです。その一方、お手入れ次第で一生、使い続けている人もいらっしゃいますよ。やはり、術後のメインテナンスがインプラントの寿命を左右すると言えるでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
石本先生
インプラント、つまり抜歯に至ったからには、その原因があるはずです。原因にアプローチせず「歯の代替品」を入れるだけでは、真の治療と言えませんよね。そして、インプラントの寿命も短くなるはずです。インプラント治療は、お口全体のバランスを考えてくれる歯科医院で受けるようにしてください。
編集部まとめ
インプラントを埋入した日から、実際に噛めるようになるまでの期間は、平均して約「3カ月」ということでした。しかし、その後のメインテナンスが「一生かかる」と考えておいた方がよさそうです。また、こうしたメインテナンスはインプラントに限りません。天然歯の場合でも、定期的な歯科健診を受けておいた方が好ましいでしょう。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |