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根尖性歯周炎の治し方は?症状や原因、セルフケアも解説

 公開日:2025/08/11
根尖性歯周炎の治し方は?症状や原因、セルフケアも解説

根尖性歯周炎を繰り返さないために、どのような治し方が必要なのかと気になっている方もいるのではないでしょうか。根尖性歯周炎は、しっかりとその原因を特定し、適切な治療を行うことが大切です。
この記事においては、根尖性歯周炎の症状や原因をはじめ、歯科医院での治し方や、セルフケア方法などを解説します。

松浦 京之介

監修歯科医師
松浦 京之介(歯科医師)

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歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。

根尖性歯周炎の基礎知識

根尖性歯周炎の基礎知識 根尖性歯周炎の根尖とは、歯の根っこの先の部分を示す言葉です。根尖性歯周炎は、歯の内部で増殖した細菌が、根っこの先にある顎の骨などに広がって感染を引き起こし、根の先の周囲に炎症を引き起こすという歯の疾患です。

根尖性歯周炎の症状

根尖性歯周炎には、急性の場合と慢性の場合の二通りがあり、それぞれ異なる症状が現れます。
急性の場合、歯の根っこの先に急激に膿がたまり、歯茎の腫れや持続的な強い痛みを生じさせます。痛みの原因は歯茎の内部から膿によって圧力がかかるためで、歯茎を切開して排膿などの処置を行わないと、この痛みが持続する場合があります。 一方、慢性の場合は、特に痛みなどの自覚症状がなく進行し、顎の骨が少しずつ溶かされ、気が付いたときには歯がグラついたり、噛んだ際に違和感が生じたりといった状態になります。多くの場合は慢性で、自覚症状がないため歯科医院でレントゲンなどを撮ってはじめて気が付くという場合もあります。 ただし、慢性の場合でも、疲労の蓄積や体調の悪化などで免疫力が低下すると、感染が急激に拡大して急性の症状につながる場合もあります。

根尖性歯周炎の原因

根尖性歯周炎は、歯の内部の細菌が、歯の先端から周囲の組織に広がる病気です。つまり、重度のむし歯などによって歯髄の細胞が壊死し、壊死した細胞の腐敗などによって歯の内部で細菌の増殖が生じることが、根尖性歯周炎の直接的な原因となります。
むし歯を治療せずに放置し続け、歯髄壊死引き起こされている状態だけではなく、歯髄にまで細菌の感染が広がっている場合に行われる根管治療において、十分に細菌を除去できていなかった場合も、根尖性歯周炎を引き起こす可能性があります。 むし歯以外では、外部からの衝撃などによって歯髄が損傷し、これによって歯髄壊死となったような場合も、壊死した歯髄が原因となって作られた膿が根尖性歯周炎が生じる場合があります。

歯周病と根尖性歯周炎の違い

歯周病は、根尖性歯周炎と同様に、自覚症状がないまま進行しやすく、顎の骨が溶かされてしまう病気です。
歯周病と根尖性歯周炎の主な違いは炎症が生じる部位で、根尖性歯周炎は歯の内部から歯の根の先に炎症が広がるのに対し、歯周病は歯と歯茎の境目に細菌や毒素が侵入し、歯茎が腫れたり、顎の骨が溶かされていきます。
歯周病の大半は慢性症状であり、自覚症状がないままゆっくりと進行していきますが、免疫力の低下などによって急性症状が出る場合があり、その場合は歯茎の内部に膿が蓄積され、強い痛みや腫れを引き起こす場合があります。

根尖性歯周炎を放置するリスク

根尖性歯周炎は、原因である壊死した歯髄細胞や、むし歯の感染を完全に除去しないかぎり、症状がゆっくりと進行して顎の骨が溶かされていきます。
歯は顎の骨によって支えられているため、一定以上まで骨が溶かされるとしっかりと歯を支えきれなくなり、歯がグラグラしはじめ、最終的には脱落します。
また、細菌の感染は周囲の歯にも広がる可能性があり、ほかの歯でも根尖性歯周炎が生じて、連鎖的に歯が脱落していってしまうリスクもあります。
さらにいえば、細菌が血管などを通じて体内のほかの場所に移動してしまうと、歯以外での感染症状が現れます。場合によっては心臓に感染を引き起こし、健康上の重大なリスクとなる場合もありますので、放置せずにきちんと治療を受けましょう。

根尖性歯周炎の検査方法

根尖性歯周炎の検査は、歯肉の腫れや歯周ポケットの深さ、歯が動いてしまうかどうかの確認、噛み合わせのチェックなどを行うほか、X線写真で顎の骨の状態を確認するなどして症状の程度を検査します。

根尖性歯周炎のセルフチェック方法

根尖性歯周炎は急性の場合と慢性の場合で症状が異なりますが、下記のようなチェック項目に当てはまる内容が多い場合、根尖性歯周炎の疑いがあります。
  • 根管治療を終えた歯の奥が痛い
  • 歯茎が赤くはれている
  • 歯茎を押すと痛みがあったり、膿が出たりする
  • 歯茎の奥部分(歯の根元部分)に鈍痛がある
  • ものを特定の歯で噛むと痛い
  • 疲れているときなどに歯の根元に痛みが出る
  • 歯茎が下がってしまい歯が長く見える
  • 歯と歯の隙間が開いて食べ物などが挟まりやすくなった
  • 歯がグラグラする
急性の症状の場合、歯の根元部分に痛みを生じたり、膿が出てくるようになったりするため、歯のトラブルに気が付きやすいといえるでしょう。放置しておくと痛みが強くなっていく可能性があるので、早めに歯科医院を受診することをおすすめします。
一方、慢性の症状の場合は痛みなどの自覚症状が現れにくいため、歯科医院の受診が遅れやすく、気が付いたら顎の骨が溶かされ、歯がグラグラしてしまったり、場合によっては歯が抜けてしまう状態になったりします。歯がグラつくほど症状が進行していると治療が手遅れになってしまう可能性もあるため、少しでも歯肉が退縮してきた、歯が伸びてきたと感じたら、まずは歯科医院での検査を受けるようにしましょう。
セルフチェックだけで予防することは難しいので、数ヶ月に1回は歯科検診を受けて、歯の状態を歯科医院で診てもらうようにしておくと、根尖性歯周炎による重大なトラブルを防ぎやすくなります。

根尖性歯周炎の治し方

根尖性歯周炎の治し方 根尖性歯周炎の治し方には、痛みなどの症状を改善するための方法と、根本的な原因を改善するための方法があります。
痛みを抑えるだけであれば、歯肉内部にたまった膿を出したり、抗炎症剤や痛み止めの薬を服用することで改善が可能な場合があります。
しかし、根本的な原因である歯の根元の感染を解消する場合には、根管治療を含む、歯の根元に対する専門性の高い治療が必要です。

感染根管治療

感染根管治療は根尖性歯周炎の代表的な治し方で、歯の根っこ(根管)内部の細菌を除去する目的で行う根管治療のなかでも、歯髄が腐敗して根管内部に感染が広がっている状態で行う治療を刺します。
根管内部の感染部位をを徹底的に除去することで、根尖部に膿が蓄積されてしまう状態を改善します。

歯根端切除術

歯根端切除術は、根管治療では治すことが難しいような症例や、根管治療の予後が良好でない場合に行われる治療です。歯根端切除術は、歯肉を切開して感染している歯の根っこ部分を露出させ、先端部分を切除します。歯の根の先端部分には側枝とよばれる毛細血管が発達していることから、先端まで感染が広がってしまったむし歯の場合、通常の根管治療では治癒が難しいため、外科的に切除することで治療を行うというものです。
また、歯の根の先に感染が広がって膿が作られ、歯根嚢胞と呼ばれる膿の袋が大きくなっているような場合も、外科的な治療でこれを除去し、症状を抑えます。

意図的再植術

意図的再植術は、歯を一度抜いてから、お口の外で治療を行い、再度元の場所に戻す(再植する)という治し方です。歯を抜いてから処置するため、根尖部まで丁寧に処置を行いやすく、通常の根管治療では解消が難しいような感染もケアすることができます。
歯を一度抜いて戻すという治療法であるため、適応となるためにはさまざまな条件があり、治療に対応している歯科医師にも高度な技術が求められます。

感染根管治療による治し方

感染根管治療による治し方 感染根管治療による根尖性歯周炎の具体的な治し方を解説します。

感染根管治療の対象となる根尖性歯周炎の状態

感染根管治療は、根尖性歯周炎の治し方としては基本ともいえる方法です。根管内部の細菌を徹底的に除去することで根尖性歯周炎の原因を解消します。根管治療のなかでも、生きている神経を取り除く抜髄が必要ない場合の治療を感染根管治療と呼ぶことが多く、神経が死んでいる状態や、抜髄が終わって神経がない歯の内部に感染が広がっている場合に行われます。
根の先に歯根嚢胞という膿がたまった袋が形成されている場合、小さければ根管治療で膿が作られるのを改善すれば、歯根嚢胞も時間経過とともになくなります。

感染根管治療の流れ

感染根管治療は、歯を削って根管の内部を露出させ、専用の器具で掃除して細菌の感染を除去する治療です。
根管を清掃した後は、薬剤を詰めて仮蓋を行い、薬剤による殺菌を行います。根管内部の徹底的な殺菌が終わったら、ゴム素材などの充填剤を内部に詰めて蓋をして、被せものによって噛みあわせを回復させたら治療完了です。

感染根管治療のリスクやデメリット

感染根管治療は、歯科治療のなかでも難易度が高く、治療を受けても治りきらなかったり、再発してしまったりするリスクがある治療として知られています。歯科医師の技術力や設備はもちろん、患者さん自身がしっかり治療に取り組めるかどうかにも影響されますので、治療を受ける際は歯科医師の指示をきちんと守るようにしましょう。
また、感染根管治療を受けると歯がもろくなりやすく、強い衝撃などで割れやすくなってしまうというリスクもあります。治療を受けた後は、歯を健康な状態に維持し続けるためにも、それまで以上の丁寧なケアや定期的な歯科検診の受診などが必要です。

歯根端切除術による治し方

歯根端切除術による治し方 歯根端切除術による根尖性歯周炎の具体的な治し方を解説します。

歯根端切除術の対象となる根尖性歯周炎の状態

歯根端切除術は、感染根管治療で治療しきれずに根尖性歯周炎が再発してしまった場合や、根管が曲がっていたり、細かったりして根管治療がそもそも難しいと判断される場合などに適応となります。
また、歯根嚢胞が大きく、歯茎の腫れや強い痛みなどが生じている場合も、膿の袋を取り除く外科治療が必要になるため、歯根端切除術が行われる可能性があります。
そのほか、根管治療を受けて被せものまで行った後で根尖性歯周炎が発症した場合に、被せものをそのままにして治療を行いたいという希望があれば、歯根端切除術が一つの選択肢となります。

歯根端切除術の流れ

歯根端切除術は歯肉を切開して歯の根の先を露出させた後、先端部分を切除します。その後、先端側から根管内部を清掃し、内部に詰め物を充填させます。
歯の先端側から治療することで、被せものを外したりする必要がなく、そのまま被せものを利用し続けることも可能です。

歯根端切除術のリスクやデメリット

歯根端切除術は、歯肉の切開を伴うため、身体への負担が大きい治療です。治療後に痛みや腫れが生じやすく、デメリットと感じる可能性があります。

歯根端切除術が難しい場合は抜歯の可能性もある

歯根端切除術が難しい場合は抜歯の可能性もある 歯根端切除術でも治療が難しいような根尖性歯周炎については、抜歯が選択される可能性もあります。抜歯をすれば歯の内部から細菌が広がる可能性がなくなるため根尖性歯周炎の症状は治ります。

根尖性歯周炎で膿が出てきた場合のセルフケアと注意点

根尖性歯周炎で膿が出てきた場合のセルフケアと注意点 根尖性歯周炎で膿が出てくるような場合、セルフケアとして下記のような点に注意しましょう。

できる限り早く歯科医院を受診する

根尖性歯周炎は、きちんとした治し方で治療をしなければ、症状の改善が難しい疾患です。症状が悪化すると抜歯するしかない状態になるばかりか、ほかの歯まで悪影響を及ぼす可能性がありますので、できる限り早く歯科医院を受診して、適切な治療を受けるようにしましょう。

自分で膿を出そうとしない

膿が出ているような状態だと、つい自分で膿を出してしまいたくなるかもしれませんが、自分で膿を出す行為はしてはいけません。膿を出そうとする行為が刺激となって症状が悪化したり、内部に細菌が入り込んで感染が悪化する可能性もあります。

口腔内を清潔に保つ

膿が出ている場所から細菌が入り込んでしまうと、根尖性歯周炎が悪化する可能性があります。また、口腔内が不衛生な状態だと、歯周病なども進行しやすくなります。
丁寧な歯磨きやマウスウォッシュなどを利用して、お口のなかを清潔に保つようにしましょう。

患部を冷やす

根尖性歯周炎で痛みや腫れが生じている場合、患部を冷却することで痛みや腫れを軽減できる可能性があります。保冷剤などを活用して、冷えすぎない程度に患部を冷却しましょう。

根尖性歯周炎を予防するために

根尖性歯周炎を予防するために 根尖性歯周炎は、病気になってから治すのではなく、病気を予防することが大切です。

お口のケアを丁寧に行う

根尖性歯周炎は、むし歯が進行して歯の内部まで感染が広がることで生じる疾患です。むし歯の進行を防ぐことが大切であり、そのためには日々の歯磨きをはじめ、お口のケアを丁寧に行うことが重要です。

定期的に歯科検診を受ける

歯科医院では、定期的な歯科検診を受けることができます。数ヶ月に一度、歯科医院を受診することで、むし歯などの病気の早期発見が可能となり、根尖性歯周炎に発展する前に治療を行いやすくなります。
また、歯の専門的なクリーニングで日々の歯磨きで除去しきれない汚れも落とすことができるので、歯周病や口臭の予防にもつながります。

まとめ

まとめ

根尖性歯周炎の治し方にはいくつかの方法があります。基本的には根管治療が選択されますが、根管治療で改善が難しい場合には歯根端切除術や、意図的再植術、場合によっては抜歯が必要となることもあります。
根尖性歯周炎はセルフケアで治すことは難しい症状ですので、気になる症状があれば、まずは早めに歯科医院を受診するようにしましょう。

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