ジベルバラ色粃糠疹
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

ジベルバラ色粃糠疹の概要

ジベルバラ色粃糠疹は、思春期から若年成人に多く見られる皮膚の病気です。女性に多いことが知られており、皮膚にピンク色から薔薇色の発疹が一時的にあらわれます。

症状は、体の1箇所に比較的大きな楕円形の発疹(ヘラルドパッチ)があらわれ、その後、胸や背中を中心に小さな発疹が広がっていきます。多くの発疹は「クリスマスツリー」のような形で広がるのが特徴です。

ジベルバラ色粃糠疹は多くの場合、数週間から数か月で自然に症状は改善しますが、個人差も大きく、季節や体調によって症状が変動することもあります。生命に関わる深刻な病気ではありませんが、見た目が気になったり、かゆみを感じたりすることがあります。

ジベルバラ色粃糠疹の原因

ジベルバラ色粃糠疹の正確な原因は分かっていませんが、ヒトヘルペスウイルス6型や7型といったウイルスの感染が関係していると考えられています。
多くの場合、これらのウイルスは体内に潜んでいますが、何らかのきっかけで活性化する可能性があります。

また、上気道感染症の後に発症することもあり、連鎖球菌などの細菌感染も発症に関係している可能性が指摘されています。季節による変動があり、春や秋に多く発症することも特徴です。

体調の変化やストレスなども発症のきっかけになる可能性があります。さらに、BCGやインフルエンザなどのワクチン接種後や、特定の薬剤の使用後に発症することもあります。ただし、どのように発症に関係しているのかは、まだ解明されていません。

ジベルバラ色粃糠疹の前兆や初期症状について

ジベルバラ色粃糠疹の典型的な症状として、体の一箇所に比較的大きな楕円形の発疹(ヘラルドパッチ)があらわれます。ヘラルドパッチは主に胸や背中にあらわれ、薄いピンク色で皮膚の表面がかさぶたのような状態(鱗屑:りんせつ)になります。

その後、最初の発疹よりも小さな発疹が体幹を中心に多数あらわれます。発疹は胸や背中に「クリスマスツリー」のような形で広がり、皮膚の張りの方向に沿って並ぶのが特徴です。発疹は薄いピンク色から始まり、次第にバラ色、そして茶色へと変化していきます。

発疹にともなうかゆみの程度には個人差があり、重度のかゆみを感じる人もいれば、ほとんど気にならない人もいます。また、発疹が出る前に、だるさ、頭痛、のどの痛み、関節の痛み、胃腸の不調、発熱などの症状を感じることもあります。

全体の約2割の患者では、通常とは異なる「非典型的」な症状があらわれます。たとえば、体幹ではなく腋の下や顔面などに発疹があらわれるケースや出血をともなうケース、発疹が紫色を帯びるケースがあります。また、水疱が生じるタイプ、蕁麻疹のような症状が出るタイプ、体全体に小さな発疹が広がるタイプ、口の中に症状があらわれるタイプなどもあります。

ジベルバラ色粃糠疹の検査・診断

ジベルバラ色粃糠疹は症状が特徴的なため、多くの場合、問診と診察だけで診断できます。

具体的には問診にて、症状が出始めた時期や経過、発疹が出る前の症状、普段の生活習慣、使っている薬、これまでの病気や治療歴などを確認します。また、発疹の大きさや色、形、広がり方を観察し、患者の年齢なども考えて総合的に判断します。

ただし、典型的でない症状の場合や他の病気との区別が必要な場合には、追加の検査が必要です。たとえば血液検査や皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる皮膚生検を行う場合があります。

鑑別が必要な病気としては、体部白癬(水虫の一種)、脂漏性皮膚炎、滴状乾癬、扁平苔癬、多形紅斑、薬疹などがあります。それぞれ治療方法が異なるため、正確な診断が必要です。

ジベルバラ色粃糠疹の治療

多くの場合自然に治る病気ですが、症状を和らげるために薬物療法や光線療法が行われます。

薬物療法

症状を和らげる薬として、かゆみ止めの飲み薬や塗り薬を使います。かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬を飲んだり、ステロイド軟膏を塗ったりします。また、皮膚の乾燥を防ぐために保湿剤を使うこともあります。

また、ウイルスが関係している可能性がある場合や症状が強い場合には、アシクロビルなどの抗ウイルス薬を使うことがあります。とくに妊娠初期の方は、ジベルバラ色粃糠疹の発症が妊娠経過に影響する場合があるため、早めの治療開始がすすめられることがあります。

紫外線治療

症状が重い場合や通常の治療で良くならない場合には、紫外線による治療が検討されます。エリスロマイシンやアジスロマイシンといった抗生物質が効果的だったという報告もありますが、一般的な治療法としては確立していません。

ジベルバラ色粃糠疹になりやすい人・予防の方法

ジベルバラ色粃糠疹の原因は完全には分かっていないため、確実な予防法はありません。ただし、感染症に続き発症することもあるため、健康状態を整えることで、発症や症状の悪化を防げる可能性があります。

そのため、十分な睡眠やバランスの良い食事、過度なストレスの回避を心がけることが大切です。また、基本的な感染予防対策も有効だと考えられます。

発疹がある場合は、症状を悪化させないために、刺激の強い石けんの使用を避け、皮膚を清潔に保つことが大切です。また、発疹がある部分を強くこすったり掻いたりするのは避けましょう。症状が長引いたり、強い痛みやかゆみがある場合は、早めに皮膚科の受診をおすすめします。


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