「脂漏性皮膚炎」を発症すると現れる症状・予防法はご存知ですか?医師が監修!
脂漏性皮膚炎は、皮膚表面に赤みや黄色い瘡蓋(かさぶた)がうろこ状にできる皮膚炎です。症状が顔の目立つ場所にできるため、心理的につらい状態になる方も多くいらっしゃいます。
幼児の場合は自然治癒しますが、成人の場合は生活環境の様々な要因が影響しています。治療が長期化することがあり、この疾患の難しい側面です。
今回は、脂漏性皮膚炎の症状や、様々な発生要因を紹介していきます。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
脂漏性皮膚炎の症状と原因
脂漏性皮膚炎とはどのような病気ですか?
カサカサした赤い炎症が発症したり、ジクジクした黄色い角質が張り付いたりする症状がみられます。鼻唇溝(びしんこう)いわゆる、ほうれい腺に症状が現れることが特徴です。
新生児にみられる「乳児型」と、思春期以降の成人にみられる「成人型」に分けられます。
発症する原因を教えてください。
一方、成人の場合は近年の研究で、真菌であるマセラチア菌が深く関わっているとわかっています。
マセラチア菌は、人の皮脂の成分である、中性脂肪を分解して栄養として生きていて、通常は害を与えることはありません。何らかの要因で皮脂分泌が活発化すると、マセラチア菌が大量に増殖し、結果として皮膚炎を引き起こすのです。
皮脂分泌が活発になる要因として、以下のことがあげられます。
- 遺伝的要因
- 私生活の乱れ
- ストレス
- マセラチア菌
皮脂分泌の多い家系の場合、脂漏性皮膚炎が発症しやすい傾向です。また、睡眠不足・動物性脂肪の多い食事など、私生活の乱れにより、皮脂分泌異常となることで皮膚の炎症を引き起こします。
更に、ストレスが多くなることも、ホルモンバランスの乱れから皮脂分泌過剰を引き起こすため、要因の一つです。この様な環境を取り巻く要因が存在する一方で、マセラチア菌による影響は最も直接的に炎症と関係があります。
マセラチア菌は皮脂の成分であるトリグリセリド(中性脂肪)を分解し、遊離脂肪酸を作り出します。マセラチア菌によって作られた遊離脂肪酸が、皮膚を刺激することにより炎症を引き起こすのです。
環境を取り巻く要因は、皮脂分泌を増加させ、マセラチア菌による皮膚への刺激も強めてしまいます。
どんな症状がおこるのでしょうか。
鱗屑は角質が皮膚表面に蓄積する症状のことをいいます。そして、鱗屑が脂っぽい状態であっても、皮膚は乾燥してカサカサした状態になるのが特徴です。
初期症状においては、痛みや痒みはあまりなく、あっても軽度です。頭皮に鱗屑ができると、皮膚と共にフケの様に剥がれ落ちていき、抜け毛も起こります。また、ひどくなるにつれて、皮脂の脂肪酸が酸化し、頭皮から油や加齢臭のような臭いがするようになることもあります。
脂漏性皮膚炎は30代や40代の方に多く発症すると聞きましたが。
男性の場合は、アンドロゲンという男性ホルモンが関与しています。皮脂の発達や合成に関わりがあるホルモンです。アンドロゲンが活発になると皮脂の分泌量も増えていくため、皮脂量は女性よりも男性の方が多い傾向となっています。
また、男性の方が女性よりもこの疾患にかかる人が2~3倍多くなっていることからも、このホルモンが影響していると伺えます。
脂漏性皮膚炎の治療方法と診断
検査方法と診断について知りたいです。
他の類似した皮膚炎との判別が難しい場合は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で菌の状態を確認します。
脂漏性皮膚炎の診断基準は?
類似した疾患としては、接触性皮膚炎・アトピー性皮膚炎・頭部白癬(しらくも)・膠原病(こうげんびょう)などがあります。診断の中で重要なことは、症状が現れている身体の場所です。
脂漏性皮膚炎は全身の脂漏部位、特に顔の鼻唇溝(びしんこう)いわゆる、ほうれい腺に症状が出る特徴があります。そのため、類似する疾患であるアトピー性皮膚炎との鑑別については、鼻唇溝に炎症があるかどうかが見極めになります。
類似する疾患と区別するために、症状がある部位は全てみせるようにすることが大切です。診断を受ける際には医師に、皮膚炎の具体的な場所と症状を詳しく伝えることで診断が円滑に進みます。
脂漏性皮膚炎の治療方法を教えてください。
- ステロイド外用薬や抗真菌外用薬の湿布
- ビタミンB2またはB6の摂取
- 抵真菌配合シャンプー
- 生活リズムの改善
乳児の場合は、成長とともに自然治癒します。そのため、基本的には薬の処方はせずに、症状のある場所を石鹸で洗って清潔に保つようにします。洗うときはこすらずに、泡を使って丁寧に洗うことがポイントです。
成人型の場合は、炎症を抑えるためのステロイド外用薬と、マセラチア菌を抑えるための抗真菌外用薬を使用します。
基本的には抗真菌外用薬の湿布となりますが、炎症の強く出ている患部は弱めのステロイド外用薬を使用することで対処できます。尚、頭皮の場合は抵真菌剤配合シャンプーを使うと有効です。また、ビタミンB2やB6を積極的に摂取すると、マセラチア菌の栄養源となる皮脂の分泌を減らせます。
ステロイド外用薬によって炎症は治まりますが、成人の脂漏性皮膚炎は再発しやすいことが厄介です。原因因子を発生しない生活環境作りが治療のポイントとなります。
脂漏性皮膚炎の予防方法と再発の恐れ
日常生活で予防ができる病気なのですね。
- 皮脂が分泌する部分を清潔に保つ
- 皮脂分泌を増加させる食品の摂取を控える
- ビタミンB2・B6・Cを含む食品を積極的にとる
- 生活リズムを整える
皮脂の多く分泌する脂漏部位を清潔にします。手で強くこすると、皮膚のバリアである皮脂膜が傷ついて、肌の潤いを損なってかさついてしまいます。
適切な洗い方は、石鹸を泡立てて泡で優しく洗うことです。また、皮脂分泌を減らすためには食生活も大切です。
皮脂は中性脂肪からできています。中性脂肪を多く含む食品といえば、動物性脂肪の多い食品である、肉・バター・チーズなどの飽和脂肪酸を含む食品などがあります。飽和脂肪酸は血中の中性脂肪をあげ、悪玉コレステロールも増加させるため過剰摂取には注意が必要です。
一方で、皮脂の分泌をコントロールしてくれる食品は積極的に取り入れたいところです。ビタミンB2は皮脂の分泌を調整し、粘膜を保持してくれます。ビタミンB6はビタミンB2の働きを助けます。ビタミンB2・B6を多く含む食品はレバー・豚肉・魚などです。
ビタミンCは、皮脂の分泌過剰を抑制して皮膚の酸化による肌へのダメージを軽減させます。その他、ホルモンバランスと肌の調子は密接に関係があるため、睡眠をしっかりとって身体を休めることも大切です。生理前にニキビができやすいことなどにもみられるように、皮脂はホルモンの影響を大きく受けています。
睡眠をしっかりとって身体を休めることが特に効果的ですので、生活リズムを整えましょう。
完治したあと、再発の恐れはあるのでしょうか。
ストレスが強くなったり、冬の乾燥で肌荒れを起こしたり、様々な外的要因によって再発してしまうため、中には数十年も患い続けるケースもあります。慢性化した場合は、克服には年単位に渡る日々の継続的なスキンケアが必要です。
再発した場合は、長期的な目線で症状の改善と向き合うことが求められます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
その人によって、皮膚炎が発症する要因は様々です。生理の前後などホルモンバランスを崩すタイミングで発症する場合もあれば、温度の変化で発症する場合もあります。まずは、皮膚を清潔に保ち、保湿をする習慣を日々の生活に取り入れるように心がけましょう。
食事の面においては、動物性脂肪の多い偏った食事の見直しと、ビタミン豊富なバランスのとれた食事を意識し、日常生活の見直しをして生活リズムを整えましょう。
編集部まとめ
脂漏性皮膚炎はシャンプー荒れや乾燥肌との区別がつかずに、中々気がつかないこともあります。
気がついた場合は早期に対策を取ることが肝心です。
生活リズムや食生活の乱れをみつめ直して改善する、また、ストレスを軽減すること自体が、現実的には大変で難しいことかもしれません。
しかし、中長期的にみて、毎日できることから一つずつやってみることが大切です。
脂漏性皮膚炎の治療は、薬より養生という言葉にもあるように、普段からの予防の心がけこそに、最善の良薬が存在しているといえます。
毎日の予防策に費やす努力は、薬の効果よりも絶大な効果が得られるのです。