

監修医師:
山形 昂(医師)
目次 -INDEX-
気管支喘息重積発作の概要
気管支喘息重積発作は、気管支喘息発作が少なくとも24時間以上持続し、通常の治療では改善がみられない重篤な状態です。
気管支を広げる薬や炎症を抑える薬など、通常の喘息治療で使用する薬剤が効かず、生命を脅かす危険性が高く、迅速な治療の必要があります。
気道の狭窄が強く起こり、肺における酸素と二酸化炭素の交換が正常に行われなくなります。その結果、体内の酸素が不足し、二酸化炭素が蓄積することで、多くの臓器の機能が低下します。
症状としては、気道の攣縮(けいれん)、気道壁の腫れ、粘り気の強い痰の生成などによって重度の気道閉塞を引き起こします。
気管支喘息重積発作の原因
気管支喘息重積発作は、通常の喘息発作が重症化した状態で、重症化の主な原因は気道感染症です。特にウイルスや細菌による感染が気道の炎症を悪化させ、発作を重症化させます。
さらに、ダニやハウスダスト、花粉といったアレルギーの原因となる物質への大量曝露も、気管支喘息重積発作のきっかけとなります。
また、喘息の治療薬を適切に使用していなかった場合や自己判断で治療を中断してしまった場合にも発作が重症化しやすくなります。
気管支喘息重積発作の前兆や初期症状について
気管支喘息重積発作では、通常の喘息発作よりも重篤な症状が現れます。著しい呼吸困難が特徴で、座っていなければ呼吸が難しい状態(起座呼吸)が続きます。発作が進行すると会話や体を動かすことが困難になり、場合によっては意識障害があらわれることもあります。
また、通常の喘息では喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという音)が聞こえますが、重症化すると喘鳴が消失することがあります。これは気道が著しく狭くなったことが原因で、より危険な状態であることを示しています。
さらに呼吸の状態も変化します。具体的には、呼吸が浅く速くなったり、胸郭の動きが制限されたりします。加えて、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる状態)や頻脈(脈が速くなること)、発汗、不安感の増強なども認められます。
気管支喘息重積発作の検査・診断
気管支喘息重積発作は、発作の持続時間や強度などにより診断されます。重症度の評価と適切な治療方法を決めるために、バイタルサインの確認や呼吸機能の検査、および合併症の有無の確認も重要です。
身体状態・バイタルサインのチェック
呼吸数や脈拍、血圧などのバイタルサインをチェックします。また、胸部の聴診で喘鳴の程度や気道狭窄の状態を評価します。重症例では、意識レベルや全身状態の評価も重要です。
酸素飽和度(SpO₂)の測定や、可能であれば動脈血液ガス分析も行います。特に二酸化炭素の蓄積(PaCO₂の上昇)は重症化の重要な指標となります。
画像検査
胸部X線検査により、気胸(肺に穴が開く病気)や肺炎などの合併症の有無を確認します。また、心疾患による症状との鑑別も必要です。
気管支喘息重積発作の治療
重積発作の治療は、速やかな対応が必要で、多くの場合、入院による集中治療が必要となります。
酸素療法と薬物療法
酸素投与を行いながら、気管支を広げる薬を吸入や点滴で投与します。同時に強い炎症を抑えるステロイド薬も全身に投与します。改善が見られない場合は、さらに強力な治療を検討します。
人工呼吸管理
通常の治療で改善が見られない場合、人工呼吸器による呼吸の補助が必要となることがあります。意識レベルの低下や著しい呼吸困難がある場合は、気管に管を入れて人工呼吸を行います。マスクを介して人工的に呼吸させる治療(非侵襲的陽圧換気)が行われることもありますが、患者の状態に応じて慎重に判断します。
合併症の治療
重積発作に伴い、気胸などの合併症が起きることがあります。また、感染症を合併している場合は抗生物質の投与も行います。気道に粘り気の強い痰が詰まっている場合は、気管支鏡で除去することもあります。
再発予防
重積発作から回復した後は、再発予防が重要です。退院後は適切な薬剤の使用と定期的な経過観察を行います。吸入ステロイド薬を中心とした予防的治療を続けることで、発作の再発を防ぎます。また、発作の誘因となる要素を特定し、避けることも再発予防として重要です。
気管支喘息重積発作になりやすい人・予防の方法
気管支喘息重積発作は生命を脅かす可能性がある重篤な状態であるため、予防が非常に重要です。
気管支喘息重積発作の予防の基本は、日常的に喘息のコントロールをすることです。一般的な喘息治療として、吸入ステロイド薬などの予防薬を継続的に使用します。また、呼吸機能を数値で確認できる簡単な検査器具を使って、自分の状態を定期的にチェックすることも大切です。
また、気管支喘息重積発作の引き金となる要因を避けることも重要です。気道感染症を防ぐために、インフルエンザなどの予防接種や、手洗い・マスク着用による基本的な感染対策を行いましょう。ハウスダストやタバコの煙を避け、室内の清掃や換気を心がけるなど、生活環境を整えることも予防策として挙げられます。
もし、喘息発作が生じた場合は早めの対応が重要です。特に、普段の発作時に使用する気管支拡張薬の効果が弱い、あるいは持続時間が短くなっている場合は、重症化の可能性があります。このような場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
参考文献