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「肺水腫」とは?原因・症状・治療方法についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/04/04
「肺水腫」とは?原因・症状・治療方法についても解説!【医師監修】

「肺水腫(はいすいしゅ)」とは肺胞内に血液などの液体成分がたまって酸素と二酸化炭素のガス交換ができなくなり、低酸素状態呼吸困難が起こった状態のことです。

液体がたまる原因は大きく分けて2つあり、心臓病など循環器の病気が原因の場合と肺炎など呼吸器の病気が原因の場合に分類されます。

症状が起きてしまうと呼吸困難に陥るため、治療を行っても救命できる確率が低下してしまいます。

症状が進行しないうちに医療機関を受診し、治療することが重要です。

肺水腫を早期発見するために重要なポイント・症状・原因となる病気・治療方法などについて詳しくみていきましょう。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

肺水腫の症状と原因

ベッドルームにいる男性

肺水腫はどのような病気ですか?

  • 肺水腫とはさまざまな原因で肺胞に液体成分がたまった状態のことを指すため、「肺水腫」そのものは病名ではありません。「肺胞(はいほう)」は肺の中で酸素と二酸化炭素のガス交換を行う器官で、フィルターのような役割をしています。
  • 肺胞でのガス交換がうまくできないと酸素を取り込む効率が低下して低酸素状態となるため、重症化すると呼吸困難呼吸不全を引き起こして死に至る危険な症状です。症状を引き起こす原因により、下記の3種類に分類されます。
  • 静水圧性肺水腫:肺の毛細血管静水圧の上昇により血液成分が血管の外に漏れ出した状態で、心臓の病気(心筋梗塞・心不全など)が原因で起こる
  • 透過性亢進型肺水腫:血管の透過性が高くなり血液成分が血管の外に漏れ出した状態で、心臓の病気以外(肺炎・敗血症・膵炎・有毒ガスの吸入・多発外傷(交通事故などでの大けが))が原因で起こる
  • 混合型肺水腫:静水圧性肺水腫と透過性亢進型肺水腫の混合タイプで、頭部外傷・てんかん発作の神経系障害・褐色細胞腫・高山病などが原因で起こる

どのような症状が現れますか?

  • 主な症状は呼吸困難です。
  • 他にも下記のようにさまざまな症状があり、これらは心原性肺水腫・非心原性肺水腫どちらの場合でも起こります。
  • 喘鳴(ぜんめい):「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音がする
  • チアノーゼ:皮膚・爪・唇が紫色になる
  • 急な血圧低下:冷や汗をかくため急激に血圧が下がる
  • 意識障害:血圧が下がったことで意識状態が悪くなる
  • 泡沫痰:ピンク色の泡のような痰が出る
  • 心原性肺水腫の特徴として、ピンク色の泡沫痰(泡状の痰)が出ることが挙げられます。心原性肺水腫は肺胞内で血液が滞っている状態のため、毛細血管の圧力が上昇して肺胞内に血性の液体があふれ出ることで痰に血が混ざるためです。

原因となる病気が知りたいです。

  • 原因となる病気は大きく分けて下記の2種類です。
  • 心原性肺水腫:心疾患が原因で発症する肺水腫
  • 非心原性肺水腫:心疾患以外が原因で発症する肺水腫
  • 心原性肺水腫は心不全・虚血性心疾患(心筋梗塞)・心臓弁膜症・重症高血圧症など、心臓の病気が原因となって、左心室にうっ滞した血液が駆出できずに肺に貯留するために生じます。
  • とくに「左心不全」が悪化した場合は肺水腫が起きやすい傾向にあります。非心原性肺水腫の場合は肺胞を取り巻く毛細血管の損傷によって発症する「急性呼吸窮迫症候群」があります。
  • 手術などのストレス、または外傷などにより血管の損傷が生じた場合には、毛細血管は血液液体成分が肺胞内へもれでてるために肺水腫を発症します。血管損傷が生じる原因としては、細菌感染などの敗血症・肺炎、高齢者では誤嚥、外傷、熱傷、手術などがあります。
  • 免疫抑制剤や抗がん剤によっても薬剤による全身性のアレルギーによるむくみに伴う一症状として、肺水腫となる場合があります。

胸水との違いを教えてください。

  • 肺水腫と胸水はどちらも「臓器に水がたまった状態」というイメージがあり、似ているように思いますが違う病気です。
  • 肺水腫の場合は肺の中に液体がたまっている状態で、胸水の場合は肺の外側に液体がたまって肺を圧迫している状態です。

肺水腫の検査と治療方法

パソコンの前で手振りで話す医者

どのような検査を行い肺水腫と診断されますか?

  • 下記のようにさまざまな検査を行い、総合的に判断します。
  • 聴診:呼吸音の変化の確認する
  • 画像診断:胸部X線画像・胸部CTなどで肺の影を確認する
  • 心臓超音波(エコー検査):心臓の動きや働きを確認する
  • 採血検査:心不全の程度の確認・血液中の細菌の有無を確認する
  • 動脈血液ガス検査:動脈の血液中の酸素濃度・二酸化炭素のレベルを確認して、呼吸状態を評価する

治療方法を教えてください。

  • 治療方法は原因となった病気によって変わるため、まずは心原性肺水腫か非心原性肺水腫かを早急に区別する必要があります。症状が起こった原因を特定して病気の治療をし、併せて重症の場合は酸素吸入や薬物治療などさまざまな治療を行います。
  • また、肺水腫では経皮的酸素飽和濃度の低下(低酸素血症)が生じており、呼吸状態をサポートするために酸素投与・人工呼吸管理(非侵襲的陽圧換気療法など)が実施されることが多いです。肺胞内に貯留した液体成分を毛細血管へと押し戻すことを目的として、気道内に圧力(陽圧)をかける呼吸管理が必要となります。
  • 主な治療方法は下記です。
  • 利尿剤:肺胞内にたまっている水分を排出するために行う
  • 血管拡張薬:血管の容量に余裕を持たせるために使用する
  • 強心剤:心原性肺水腫の場合に心臓を働きを助けるために使用する
  • 抗生物質・抗炎症薬:非心原性肺水腫の場合に肺炎・敗血症など細菌に感染したことが原因の場合に使用する

どのくらいの期間治療が必要ですか?

  • 治療期間は原因となった病気や症状の度合いによって異なります。
  • 心臓病が原因の場合は心臓の外科手術が必要になります。目安として、心臓弁膜症や冠動脈バイパス手術を行った場合は平均で術後2〜3週間の入院が必要です。
  • 肺炎が原因の場合、ほとんどは1週間程度の治療で治ります。

肺水腫の注意点

眠れないミドル世代の女性

早期発見・早期受診のポイントを教えてください。

  • 心臓に持病がある人は肺水腫を起こしやすいため、とくに注意が必要です。定期的に受診して医師の指導を受けましょう。
  • また、日常生活で下記のような症状がある場合は早めに受診してください。
  • 仰向けで寝ると息苦しい
  • 夜中に息苦しくて目が覚める
  • 喘鳴(胸がゼーゼーする)
  • ピンク色の泡状の痰が出る
  • とくに横になると息苦しさを感じる場合は要注意です。心不全の人は心臓のポンプ機能が弱った状態のため、左心室から血液を排出する機能が低下しています。肺静脈の血流が滞った状態では肺静脈圧が上昇しやすくなり、仰向けになると息苦しさを感じる傾向にあります。
  • 座った状態でないと寝られないほど仰向けの姿勢がつらい場合は肺水腫を引き起こす危険性があるため、早めに受診してください。
  • また、高齢者は「隠れ心不全」に注意が必要です。高齢者の心不全は「拡張不全」が原因の場合が多く検査をしても分かりにくい場合があるため、診断で見落とされる可能性があります。

心原性肺水腫の予防方法を知りたいです。

  • 心臓の病気が原因となるため、まずは心臓の病気を予防することが重要です。
  • 高血圧・糖尿病・肥満・動脈硬化は心臓の病気の原因となりやすいため、下記のように食事や運動の生活習慣を改めることで予防しましょう。
  • 禁煙する
  • 飲酒は控えめにする
  • 適度な運動をする
  • 塩分をとりすぎない
  • ストレスをためない

非心原性肺水腫を防ぐ方法はありますか?

  • 肺炎・敗血症・重症外傷などが原因で起こるため、心原性肺水腫と同様にまずは原因となる病気を予防しましょう。
  • とくに肺炎は高齢者が起こしやすく、重症化しやすい傾向にあります。
  • 日々の生活で下記の点に注意して肺炎を予防しましょう。
  • 手洗い・うがいをする
  • 部屋の換気をする
  • 人混みを避ける
  • 禁煙する
  • バランスのいい食事を心がける

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 肺水腫は病名ではなく、肺胞に血液などの液体がたまって呼吸困難や呼吸不全を起こす症状をいいます。重症の場合は人工呼吸器が必要になり、命を落とす可能性もある危険な症状です。
  • 救命のためには早期発見できるかどうかが大切です。仰向けで寝ると息苦しさを感じる・息苦しさで目が覚めることがある・呼吸音がおかしいといった、呼吸に関する自覚症状がある場合は早めに受診しましょう。
  • 予防するためには原因となった病気の治療をすることが重要で、心臓に持病がある人はとくに注意してください。心臓病が原因の場合は循環器内科、肺炎が原因の場合は呼吸器内科を受診しましょう。

編集部まとめ

胸に異変を感じる女性
肺水腫は肺に液体がたまって呼吸が苦しくなり、症状が重い場合は呼吸困難や呼吸不全に陥る恐ろしい症状です。

心臓病が原因となる「心原性肺水腫」と肺炎や敗血症が原因となる「非心原性肺水腫」の2種類がありますが、どちらも症状と治療方法は同じです。

呼吸不全を引き起こすため、命を落とす可能性があります。早期発見できるかが重要になるため、自覚症状として現れる息苦しさに注意して異常を感じた場合は早めに受診してください。

バランスのいい食事や適度な運動など、健康的な生活を心がけることで肺水腫の原因となる心臓病や肺炎などの病気を予防できます。

心臓に持病がある場合はとくに注意が必要です。定期的に受診して医師の指導を受けましょう。

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