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五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。現在は「竹内内科小児科医院」の院長。日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医。

慢性喉頭炎の概要

慢性喉頭炎は、のどの奥にある声帯とその周辺(喉頭)の粘膜に、長期間炎症が続く状態を指します。発声に関わる部分に影響が出ることが多く、声がれや話しづらさといった症状が特徴的です。

音声障害(声の不調)の約10%が慢性喉頭炎によるものとされています。慢性喉頭炎は一時的な症状ではなく、症状の増強や軽減を繰り返しながら、徐々に進行していきます。

出典:National Library of Medicine「Toward an Understanding of the Pathophysiology of Chronic Laryngitis」

慢性喉頭炎では、声帯やその周辺が腫れたり、粘膜が厚くなったりすることで、声質が変化し、呼吸時の違和感を覚えるようになります。こうした症状が長期間続くことで、喉頭の粘膜に潰瘍やポリープが形成されることもあります。

慢性喉頭炎の原因

慢性喉頭炎は、喫煙や大気汚染、胃酸逆流、過剰な声の使用など複数の要因によって喉頭に炎症が引き起こされます。

刺激物質や感染症

慢性喉頭炎の主な原因は、喫煙や大気汚染などの刺激物質への継続的な暴露です。

タバコの煙には有害な化学物質(例:一酸化窒素、ニコチン、ホルムアルデヒドなど)が含まれ、喉頭の粘膜に刺激を与え続けることで炎症を慢性化させます。

胃酸の逆流

胃酸の逆流も重要な原因の一つです。胃酸がのどまで上がってくることで、直接的にのどの粘膜を傷つけるだけでなく、咳を引き起こす神経を刺激して慢性的な咳の原因となることもあります。
さらに、夜間の胃酸逆流によって、睡眠中に喉頭の粘膜がダメージを受ける可能性があります。このような症状は本人が気づきにくい点が特徴です。

過度な声の使用

教師、営業職、歌手など、職業上声を多用する方は注意が必要です。適切な発声法を身につけずに声を酷使し続けると、喉頭に慢性的な炎症が起こる可能性が高くなります。特に大きな声を出し続けたり、無理な発声を続けたりすることで、声帯に過度な負担がかかり、炎症を引き起こします。

慢性喉頭炎の前兆や初期症状について

慢性喉頭炎では、声の出にくさやのどの違和感、咳症状などの増強や軽減を繰り返します。

朝一番の声がれや、長時間話した後の声の疲れとしてあらわれます。また、のどの乾燥感や異物感といった違和感、のどの痛みもあらわれてきます。これらの症状は話をしていなくても感じられ、特に朝起きた時や夜寝る前に強くなる傾向があります。

さらに、頻繁に咳が出るのも特徴的な症状の一つで、同様に朝一番や夜間に症状が強くなりやすいです。症状が進行すると、全身的な疲労感や体調不良があらわれることもあります。

慢性喉頭炎の検査・診断

慢性喉頭炎の検査・診断では、問診や喉頭内視鏡検査、必要に応じて声帯の機能検査などを行います。

問診

医師は最初に、症状がいつから始まったか、どのような状況で悪化するか、職業や生活習慣(喫煙、飲酒など)、これまでの治療歴などを詳しく聞き取ります。特に、声の使用状況や、胸やけなどの胃酸逆流を疑う症状の有無は、診断の重要な手がかりとなります。

喉頭内視鏡検査

最も重要な検査は、喉頭ファイバースコープを使用した検査です。鼻から細い内視鏡カメラを挿入して喉頭を観察します。この検査では、声帯や喉頭の粘膜の状態、炎症の範囲を直接確認できます。また、声帯の動きを観察することで、炎症が声帯の機能にどの程度影響を与えているかも評価できます。

声帯の機能検査

必要に応じて、ストロボスコピー検査を行うことがあります。特殊な光を使って声帯の振動の様子を観察する検査で、声帯の振動パターンの異常や、粘膜の硬さの変化などを評価できます。

慢性喉頭炎の治療

慢性喉頭炎の治療は、原因の除去と薬物療法が基本となります。症状の程度や原因によって、適切な治療法が選択されます。

原因の除去

慢性喉頭炎の治療では、原因を特定したうえで、その除去を図ります。例えば、喫煙が原因の場合は禁煙指導を行い、胃酸の逆流が原因の場合は制酸薬による治療を行います。また、声の使いすぎが原因の場合は、適切な発声法の指導や、できるだけ声を出さずに休養することが重要です。

薬物療法による治療

症状や原因に応じて、さまざまな薬物を使用して治療を行います。たとえば、吸入薬は直接のどに届くため、炎症を和らげる効果が高く期待でき、のどの粘膜を保護する作用もあるため症状の改善に役立ちます。

胃酸の逆流が原因となっている場合には、胃酸の分泌を抑える薬を処方します。痰が多く出る場合には、痰を薄める薬を使用することで、のどの不快感を軽減させます。

また、炎症が強い場合や細菌感染が認められる場合には、抗生物質による治療も検討します。

慢性喉頭炎になりやすい人・予防の方法

慢性喉頭炎は、特定の生活習慣や環境要因をもつ人々で発症リスクが高まります。特に、教師や営業職など職業上声を多用する方、喫煙習慣がある方、夜遅い食事や過度な飲酒習慣がある方は注意が必要です。また、アレルギー体質の方や、慢性的な副鼻腔炎がある方も発症しやすい傾向があります。

予防のためには、日常的なのどの管理が重要です。適度な水分摂取を心がけ、のどの乾燥を防ぐことを心がけましょう。
また、マスクの着用は外気の直接的な刺激を防ぎ、のどの乾燥を防ぐ効果があります。声を多用する方は、定期的に喉頭を休ませ、大きな声を出すのを避けましょう。

胃酸逆流を防ぐために、就寝前2時間は食事を控え、枕を高めにするなどの工夫が有効です。


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